従来のLCフィルタでは、インダクタンスおよびキャパシタンスで決まる固有の共振周波数を有するため、所望の減衰量を狭い周波数範囲でしか得ることができないという問題点があった。
また、電力輸送用の導電線に挿入されるフィルタには、電力輸送用の電流が流れている状態で所望の特性が得られることと、温度上昇に対する対策が要求される。そのため、通常、電力変換回路用のフィルタにおけるインダクタンス素子では、磁芯として、ギャップ付きのフェライト磁芯が用いられる。しかしながら、このようなインダクタンス素子では、その特性が、空芯のインダクタンス素子の特性に近づくため、所望の特性を実現するためにはインダクタンス素子が大型化するという問題点があった。
また、特許文献1に記載されたラインフィルタでは、フィルタ回路のインピーダンスが0であると共に変圧器の結合係数が1であれば、理論的には、ノイズ成分を完全に除去することができる。しかしながら、実際には、フィルタ回路のインピーダンスは、0になることはなく、さらに、周波数に応じて変化する。特に、キャパシタによってフィルタ回路を構成した場合には、このキャパシタと変圧器の1次巻線とによって直列共振回路が構成される。そのため、このキャパシタと変圧器の1次巻線とを含む信号の経路のインピーダンスは、直列共振回路の共振周波数近傍の狭い周波数範囲でのみ小さくなる。その結果、このラインフィルタでは、狭い周波数範囲でしかノイズ成分を除去することができない。これらのことから、実際に構成されたラインフィルタでは、広い周波数範囲においてノイズ成分を効果的に除去することができないという問題的がある。
また、特許文献2に記載されたローパスフィルタも、特許文献3に記載されたフィルタ回路も、ノイズ低減の原理は従来のLCフィルタと同様であるため、従来のLCフィルタと同様の問題点を有している。
ところで、各国では、電子機器から交流電源線を介して外部へ放出されるノイズ、すなわち雑音端子電圧に関して、種々の規制を設けている場合が多い。例えば、CISPR(国際無線障害特別委員会)の規格では、150kHz〜30MHzの周波数範囲で雑音端子電圧の規格が設定されている。このような広い周波数範囲においてノイズを低減する場合には、特に、1MHz以下の低い周波数の範囲におけるノイズの低減に関して、以下のような問題が発生する。すなわち、1MHz以下の低い周波数の範囲では、コイルのインピーダンスの絶対値は、コイルのインダクタンスをL、周波数をfとして、2πfLで表される。したがって、一般に、1MHz以下の低い周波数の範囲におけるノイズを低減するには、大きなインダクタンスを有するコイルを含むフィルタが必要になる。その結果、フィルタが大型化する。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、比較的簡単な構成で、広い周波数範囲においてノイズを抑制することができるノイズ抑制回路を提供することにある。
本発明の第1の観点に係るノイズ抑制回路は、第1および第2の導電線によって伝送され、これらの導電線の間で電位差を生じさせるノーマルモードノイズを抑制する回路であって、第1の導電線に直列的に挿入され、かつ電磁気的に結合された第1および第2のインダクタと、直列に接続された第3のインダクタと第1のキャパシタとからなる直列回路と、並列に接続された第4のインダクタと第2のキャパシタとを含む並列回路を、少なくとも1段有する並列回路部分とを備えているものである。そして、並列回路部分の一端が直列回路に接続され、これら直列回路と並列回路部分とからなる回路の一端が、第1のインダクタと第2のインダクタとの間に接続され、他端が第2の導電線に接続されているものである。
本発明の第1の観点に係るノイズ抑制回路において、第1および第2のインダクタは、互いに電磁気的に結合されているものである。第1および第2のインダクタは、それぞれを別々の巻線で形成してもよいし、単一の巻線で形成することも可能である。単一の巻線で形成する場合、例えば、単一の巻線の途中に接続点を設け、その巻線の一方の端部から接続点までを第1のインダクタ、巻線の他方の端部から接続点までを第2のインダクタとすればよい。この接続点に、直列回路と並列回路部分とからなる回路の一端が接続される。また、本発明の第1の観点に係るノイズ抑制回路において、第1および第2のインダクタのインダクタンスは同一の値であってもよい。第1および第2のインダクタを単一の巻線で形成する場合、例えば単一の巻線の中点に上記接続点を設けることで、各インダクタンスを等しくすることができる。
また、本発明の第1の観点に係るノイズ抑制回路において、並列回路は、第4のインダクタと第2のキャパシタとに並列に接続された抵抗素子を含んでいてもよい。
ここで、直列回路と並列回路部分とからなる回路の一端が、第1および第2のインダクタに接続される接続部分を第1の端部と呼び、第2の導電線に接続される他端の接続部分を第2の端部と呼ぶ。また、第1のインダクタにおける上記第1の端部とは逆側の端部を第1のインダクタの一方の端部と呼び、第1のインダクタにおける上記第1の端部側の端部を第1のインダクタの他方の端部と呼ぶ。また、第2のインダクタにおける上記第1の端部側の端部を第2のインダクタの一方の端部と呼び、第2のインダクタにおける上記第1の端部とは逆側の端部を第2のインダクタの他方の端部と呼ぶ。
本発明の第1の観点に係るノイズ抑制回路では、第1のインダクタの一方の端部と第2の導電線における上記第2の端部との間にノーマルモードの電圧が印加されると、この電圧が第1のインダクタと直列回路および並列回路部分からなる回路とによって分圧され、第1のインダクタの両端間と直列回路および並列回路部分からなる回路の両端間にそれぞれ所定の電圧が発生する。第1のインダクタと第2のインダクタは互いに電磁気的に結合されているので、第1のインダクタの両端間に発生した電圧に応じて、第2のインダクタの両端間に所定の電圧が発生する。その結果、第2のインダクタの他方の端部と上記第2の端部との間の電圧は、第1のインダクタの一方の端部と上記第2の端部との間に印加された電圧よりも小さくなる。
また、インダクタとキャパシタとを含む並列回路部分を設けていることにより、インダクタとキャパシタとによる共振点付近において、直列回路のみの場合と比べてノイズ成分がより効果的に抑制される。したがって、並列回路による共振点を例えば高周波領域に設定することで、特に高周波領域におけるノイズ成分を部分的に、より効果的に抑制することができる。
また、本発明の第1の観点に係るノイズ抑制回路において、第2のインダクタの他方の端部と第2の導電線における上記第2の端部との間にノーマルモードの電圧が印加された場合も、上記の説明と同様にして、第1のインダクタの一方の端部と上記第2の端部との間の電圧は、第2のインダクタの他方の端部と上記第2の端部との間に印加された電圧よりも小さくなる。
本発明の第2の観点に係るノイズ抑制回路は、第1および第2の導電線によって伝送され、これらの導電線の間で電位差を生じさせるノーマルモードノイズを抑制する回路であって、第1の導電線に直列的に挿入され、かつ電磁気的に結合された第1および第2のインダクタと、直列に接続された第3のインダクタと第1のキャパシタとからなる直列回路と、並列に接続された第4のインダクタと第2のキャパシタとを含む並列回路を、少なくとも1段有する並列回路部分と、第2の導電線に直列的に挿入され、かつ電磁気的に結合された第5および第6のインダクタとを備えているものである。そして、並列回路部分の一端が直列回路に接続され、これら直列回路と並列回路部分とからなる回路の一端が、第1のインダクタと第2のインダクタとの間に接続され、他端が第5のインダクタと第6のインダクタとの間に接続されているものである。
本発明の第2の観点に係るノイズ抑制回路において、第1および第2のインダクタは、上記第1の観点に係るノイズ抑制回路と同様、互いに電磁気的に結合されているものであり、それぞれを別々の巻線で形成してもよいし、単一の巻線で形成することも可能である。第5および第6のインダクタも、同様に構成することができる。第5および第6のインダクタを単一の巻線で形成する場合、例えば、単一の巻線の途中に接続点を設け、その巻線の一方の端部から接続点までを第5のインダクタ、巻線の他方の端部から接続点までを第6のインダクタとすればよい。この接続点に、直列回路と並列回路部分とからなる回路の他端が接続される。本発明の第2の観点に係るノイズ抑制回路において、第5および第6のインダクタのインダクタンスが同一の値であってもよい。第5および第6のインダクタを単一の巻線で形成する場合、例えば単一の巻線の中点に上記接続点を設けることで、各インダクタンスを等しくすることができる。
また、本発明の第2の観点に係るノイズ抑制回路においても、並列回路が、第4のインダクタと第2のキャパシタとに並列に接続された抵抗素子を含んでいてもよい。また、第1および第2のインダクタと第5および第6のインダクタとが、電磁気的に結合された構成であってもよい。
ここで、直列回路と並列回路部分とからなる回路の一端が、第1および第2のインダクタに接続される接続部分を第1の端部と呼び、第5および第6のインダクタに接続される他端の接続部分を第2の端部と呼ぶ。また、第1のインダクタにおける上記第1の端部とは逆側の端部を第1のインダクタの一方の端部と呼び、第1のインダクタにおける上記第1の端部側の端部を第1のインダクタの他方の端部と呼ぶ。また、第2のインダクタにおける上記第1の端部側の端部を第2のインダクタの一方の端部と呼び、第2のインダクタにおける上記第1の端部とは逆側の端部を第2のインダクタの他方の端部と呼ぶ。また、第5のインダクタにおける上記第2の端部とは逆側の端部を第5のインダクタの一方の端部と呼び、第5のインダクタにおける上記第2の端部側の端部を第5のインダクタの他方の端部と呼ぶ。また、第6のインダクタにおける上記第2の端部側の端部を第6のインダクタの一方の端部と呼び、第6のインダクタにおける上記第2の端部とは逆側の端部を第6のインダクタの他方の端部と呼ぶ。
本発明の第2の観点に係るノイズ抑制回路では、第1のインダクタの一方の端部と第5のインダクタの一方の端部との間にノーマルモードの電圧が印加されると、この電圧が第1のインダクタと直列回路および並列回路部分からなる回路と第5のインダクタとによって分圧され、第1のインダクタの両端間と直列回路および並列回路部分からなる回路の両端間と第5のインダクタの両端間とにそれぞれ所定の電圧が発生する。第1のインダクタと第2のインダクタは互いに電磁気的に結合されているので、第1のインダクタの両端間に発生した電圧に応じて、第2のインダクタの両端間に所定の電圧が発生する。同様に、第5のインダクタと第6のインダクタは互いに電磁気的に結合されているので、第5のインダクタの両端間に発生した電圧に応じて、第6のインダクタの両端間に所定の電圧が発生する。その結果、第2のインダクタの他方の端部と第6のインダクタの他方の端部との間の電圧は、第1のインダクタの一方の端部と第5のインダクタの一方の端部との間に印加された電圧よりも小さくなる。
また、インダクタとキャパシタとを含む並列回路部分を設けていることにより、インダクタとキャパシタとによる共振点付近において、直列回路のみの場合と比べてノイズ成分がより効果的に抑制される。したがって、並列回路による共振点を例えば高周波領域に設定することで、特に高周波領域におけるノイズ成分を部分的に、より効果的に抑制することができる。
また、本発明の第2の観点に係るノイズ抑制回路において、第2のインダクタの他方の端部と第6のインダクタの他方の端部との間にノーマルモードの電圧が印加された場合も、上記の説明と同様にして、第1のインダクタの一方の端部と第5のインダクタの一方の端部との間の電圧は、第2のインダクタの他方の端部と第6のインダクタの他方の端部との間に印加された電圧よりも小さくなる。
本発明の第3の観点に係るノイズ抑制回路は、第1および第2の導電線を同じ位相で伝搬するコモンモードノイズを抑制する回路であって、第1の導電線に直列的に挿入され、かつ電磁気的に結合された第1および第2のインダクタと、第2の導電線に直列的に挿入され、かつ電磁気的に結合された第3および第4のインダクタと、直列に接続された第5のインダクタと第1のキャパシタとからなる第1の直列回路と、直列に接続された第6のインダクタと第2のキャパシタとからなる第2の直列回路と、並列に接続された第7のインダクタと第3のキャパシタとを含む並列回路を、少なくとも1段有する第1の並列回路部分と並列に接続された第8のインダクタと第4のキャパシタとを含む並列回路を、少なくとも1段有する第2の並列回路部分とを備えているものである。そして、第1の並列回路部分の一端が第1の直列回路に接続され、これら第1の直列回路と第1の並列回路部分とからなる第1の回路の一端が、第1のインダクタと第2のインダクタとの間に接続され、かつ他端が接地されているものである。また、第2の並列回路部分の一端が第2の直列回路に接続され、これら第2の直列回路と第2の並列回路部分とからなる第2の回路の一端が、第3のインダクタと第4のインダクタとの間に接続され、かつ他端が接地されているものである。
本発明の第3の観点に係るノイズ抑制回路において、第1および第2のインダクタは、互いに電磁気的に結合されているものである。第1および第2のインダクタは、それぞれを別々の巻線で形成してもよいし、単一の巻線で形成することも可能である。単一の巻線で形成する場合、例えば、単一の巻線の途中に接続点を設け、その巻線の一方の端部から接続点までを第1のインダクタ、巻線の他方の端部から接続点までを第2のインダクタとすればよい。この接続点に、第1の直列回路と第1の並列回路部分とからなる回路の一端が接続される。また、本発明の第3の観点に係るノイズ抑制回路において、第1および第2のインダクタのインダクタンスは同一の値であってもよい。第1および第2のインダクタを単一の巻線で形成する場合、例えば単一の巻線の中点に上記接続点を設けることで、各インダクタンスを等しくすることができる。第3および第4のインダクタについても、第1および第2のインダクタと同様に構成することができる。
本発明の第3の観点に係るノイズ抑制回路において、第1の並列回路部分における並列回路は、第7のインダクタと第3のキャパシタとに並列に接続された抵抗素子をさらに含んでいてもよい。第2の並列回路部分における並列回路は、第8のインダクタと第4のキャパシタとに並列に接続された抵抗素子をさらに含んでいてもよい。
ここで、第1の直列回路と第1の並列回路部分とからなる回路の一端が、第1および第2のインダクタに接続される接続部分を第1の端部と呼び、接地される他端の接続部分を第2の端部と呼ぶ。また、第2の直列回路と第2の並列回路部分とからなる回路の一端が、第3および第4のインダクタに接続される接続部分を第3の端部と呼び、接地される他端の接続部分を第4の端部と呼ぶ。また、第1のインダクタにおける第1の端部とは逆側の端部を第1のインダクタの一方の端部と呼び、第1のインダクタにおける第1の端部側の端部を第1のインダクタの他方の端部と呼ぶ。また、第2のインダクタにおける第1の端部側の端部を第2のインダクタの一方の端部と呼び、第2のインダクタにおける第1の端部とは逆側の端部を第2のインダクタの他方の端部と呼ぶ。また、第3のインダクタにおける第3の端部とは逆側の端部を第3のインダクタの一方の端部と呼び、第3のインダクタにおける第3の端部側の端部を第3のインダクタの他方の端部と呼ぶ。また、第4のインダクタにおける第3の端部側の端部を第4のインダクタの一方の端部と呼び、第4のインダクタにおける第3の端部P3とは逆側の端部を第4のインダクタの他方の端部と呼ぶ。
本発明の第3の観点に係るノイズ抑制回路では、第1のインダクタの一方の端部と第3のインダクタの一方の端部とにコモンモードの電圧が印加されると、第1のインダクタの一方の端部とアース間および第3のインダクタの一方の端部とアース間に等しい電圧が発生する。第1のインダクタの一方の端部とアース間に発生した電圧は、第1のインダクタと第1の回路とによって分圧され、第1のインダクタの両端間と第1の回路の両端間にそれぞれ所定の電圧が発生する。同様に、第3のインダクタの一方の端部とアース間に発生した電圧は、第3のインダクタと第2の回路とによって分圧され、第3のインダクタの両端間と第2の回路の両端間にそれぞれ所定の電圧が発生する。
第1のインダクタと第2のインダクタは互いに電磁気的に結合されているので、第1のインダクタの両端間に発生した電圧に応じて、第2のインダクタの両端間に所定の電圧が発生する。同様に、第3のインダクタと第4のインダクタは互いに電磁気的に結合されているので、第3のインダクタの両端間に発生した電圧に応じて、第4のインダクタの両端間に所定の電圧が発生する。その結果、第2のインダクタの他方の端部とアース間に発生するコモンモードの電圧は、第1のインダクタの一方の端部とアース間に発生したコモンモードの電圧よりも小さくなる。
また、インダクタとキャパシタとを含む第1および第2の並列回路部分を設けていることにより、インダクタとキャパシタとによる共振点付近において、直列回路のみの場合と比べてコモンモードのノイズ成分がより効果的に抑制される。したがって、並列回路による共振点を例えば高周波領域に設定することで、特に高周波領域におけるノイズ成分を部分的に、より効果的に抑制することができる。
また、本発明の第3の観点に係るノイズ抑制回路において、第2のインダクタの他方の端部と第4のインダクタの他方の端部とにコモンモードの電圧が印加された場合も、上記の説明と同様にして、第1のインダクタの一方の端部と第3のインダクタの一方の端部とに発生するコモンモードの電圧は、第2のインダクタの他方の端部と第4のインダクタの他方の端部とに印加されたコモンモードの電圧よりも小さくなる。
なお、各観点に係るノイズ抑制回路において、第1の導電線、第2の導電線の例としては、単相2線式電力線における各導電線がある他、現在、電力供給のために多く用いられている単相3線式電力線における3線のうちの2線がある。
本発明の各観点に係るノイズ抑制回路によれば、比較的簡単な構成で、広い周波数範囲においてノイズを抑制することが可能になる。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
まず、本発明の第1の実施の形態に係るノイズ抑制回路について説明する。本実施の形態に係るノイズ抑制回路は、2本の導電線によって伝送され、これらの導電線の間で電位差を生じさせるノーマルモードノイズを抑制する回路である。
図1(A),(B)は、本実施の形態に係るノイズ抑制回路の第1および第2の構成例を示している。このノイズ抑制回路は、一対の端子1a,1bと、他の一対の端子2a,2bと、端子1a,2a間を接続する第1の導電線3と、端子1b、2b間を接続する第2の導電線4とを備えている。ノイズ抑制回路はさらに、第1の導電線3に直列的に挿入された第1および第2のインダクタL1,L2を備えている。ノイズ抑制回路はまた、直列に接続された第3のインダクタL3と第1のキャパシタC1とからなる直列回路15を備えている。ノイズ抑制回路はまた、並列に接続された第4のインダクタL4と第2のキャパシタC2とを含む並列回路16を備えている。
なお、並列回路16は、1段に限らず、図3に示した構成例のように複数段接続されていてもよい。図3は、図1(A)の構成例に対して並列回路16として、第1の並列回路(インダクタL4−1,キャパシタC2−1)と第2の並列回路(インダクタL4−2,キャパシタC2−2)とを2段直列的に接続した並列回路部分16Bを備えている。このように、本実施の形態に係るノイズ抑制回路は、並列回路を少なくとも1段有する並列回路部分を備えている。そして並列回路部分の一端が直列回路15に接続され、これら直列回路15と並列回路部分とからなる回路の一端が、第1のインダクタL1と第2のインダクタL2との間に接続され、他端が第2の導電線4に接続されている。
ここで、直列回路15と並列回路部分とからなる回路の一端が、第1および第2のインダクタL1,L2に接続される接続部分を第1の端部P1と呼び、第2の導電線4に接続される他端の接続部分を第2の端部P2と呼ぶ。また、第1のインダクタL1における第1の端部P1とは逆側の端部を第1のインダクタL1の一方の端部と呼び、第1のインダクタL1における第1の端部P1側を第1のインダクタL1の他方の端部と呼ぶ。また、第2のインダクタL2における第1の端部P1側を第2のインダクタL2の一方の端部と呼び、第2のインダクタL2における第1の端部P1とは逆側の端部を第2のインダクタL2の他方の端部と呼ぶ。
図1(A)は、直列回路15と並列回路16のうち、直列回路15の方が第1の端部P1に接続され、並列回路16の方が第2の端部P2に接続されている構成例である。図1(B)は、逆に、直列回路15と並列回路16のうち、並列回路16の方が第1の端部P1に接続され、直列回路15の方が第2の端部P2に接続されている構成例である。
直列回路15において、第3のインダクタL3は、磁芯13bに巻かれた巻線13aを有している。直列回路15において、第1のキャパシタC1は、周波数が所定値以上のノーマルモード信号を通過させるハイパスフィルタとして機能する。なお、直列回路15内における第3のインダクタL3と第1のキャパシタC1の位置関係は、図示したものとは逆であってもよい。例えば図1(A)では、第3のインダクタL3の方が第1の端部P1に近い位置に配置されていが、第1のキャパシタC1の方を第1の端部P1に近い位置に配置してもよい。
並列回路16において、第4のインダクタL4は、磁芯17bに巻かれた巻線17aを有している。並列回路16は、図2(A),(B)に示した他の構成例のように、第4のインダクタL4と第2のキャパシタC2に加えて、それらに並列に接続された抵抗素子R1をさらに含んでいてもよい。図2(A)は、図1(A)のノイズ抑制回路において抵抗素子R1が追加された並列回路16Aを備えた構成例である。図2(B)は、図1(B)のノイズ抑制回路において抵抗素子R1が追加された並列回路16Aを備えた構成例である。
第1および第2のインダクタL1,L2は、互いに電磁気的に結合されている。第1のインダクタL1は、磁芯12の第1の部分12aに巻かれた巻線11aを有している。第2のインダクタL2は、磁芯12の第2の部分12bに巻かれた巻線11bを有している。第1および第2のインダクタL1,L2は、このようにそれぞれ別々の巻線11a,11bで形成してもよいが、図4に示したように単一の巻線11で形成することも可能である。巻線11は、磁芯12に巻かれている。なお、図4では、第1および第2のインダクタL1,L2以外の回路は図示を省略している。
第1および第2のインダクタL1,L2を単一の巻線で形成する場合、図4に示したように例えば、単一の巻線11の途中に接続点(第1の端部P1)を設け、その巻線11の一方の端部から接続点までを巻線11aとして第1のインダクタL1とすればよい。同様に、巻線11の他方の端部から接続点までを巻線11bとして第2のインダクタL2とすればよい。この接続点に、直列回路15と並列回路部分とからなる回路の一端を接続する。
第1および第2のインダクタL1,L2のインダクタンスは同一の値であることが好ましい。第1および第2のインダクタL1,L2を単一の巻線11で形成する場合、例えば単一の巻線11の中点に上記接続点を設けることで、各インダクタンスを等しくすることができる。
次に、本実施の形態に係るノイズ抑制回路の作用について説明する。ここでは、図1(A)の構成例を基本にして説明する。始めに、図1(A)に示したように、端子1a,1b間にノーマルモードの電圧Viが印加された場合について説明する。この場合には、第1のインダクタL1の一方の端部と第2の端部P2との間に電圧Viが印加される。この電圧Viは、第1のインダクタL1と直列回路15および並列回路16からなる回路とによって分圧され、第1のインダクタL1の両端間と直列回路15および並列回路16からなる回路の両端間にそれぞれ所定の電圧が発生する。なお、図中の矢印は、その先の方が高い電位であることを表している。第1のインダクタL1と第2のインダクタL2は互いに電磁気的に結合されているので、第1のインダクタL1の両端間に発生した電圧に応じて、第2のインダクタL2の両端間に所定の電圧が発生する。その結果、第2のインダクタL2の他方の端部と第2の端部P2との間の電圧、すなわち端子2a,2b間の電圧Voは、第1のインダクタL1の一方の端部と第2の端部P2との間に印加された電圧Viよりも小さくなる。
また、本実施の形態において、端子2a,2b間にノーマルモードの電圧が印加された場合も、上記の説明と同様にして、端子1a,1b間の電圧は、端子2a,2b間に印加された電圧よりも小さくなる。このように、本実施の形態に係るノイズ抑制回路によれば、端子1a,1bにノーマルモードノイズが印加された場合と、端子2a,2bにノーマルモードノイズが印加された場合のいずれの場合にも、ノーマルモードノイズを抑制することができる。
特に、本実施の形態に係るノイズ抑制回路では、第4のインダクタL4と第2のキャパシタC2とを含む並列回路16を設けていることにより、第4のインダクタL4と第2のキャパシタC2とによる共振点付近において、直列回路15のみの場合と比べてノイズ成分がより効果的に抑制される。したがって、並列回路16による共振点を例えば高周波領域に設定することで、特に高周波領域におけるノイズ成分を部分的に、より効果的に抑制することができる。
次に、本実施の形態に係るノイズ抑制回路の効果を、以下のシミュレーションの結果によって具体的に示す。
図5(A)〜(C)は、第1のシミュレーションに用いたノイズ抑制回路の等価回路を示している。図5(A)は、本実施の形態に係るノイズ抑制回路の比較例となる回路である。この比較例の回路は、本実施の形態に係るノイズ抑制回路に対して、並列回路部分を省いた回路構成となっている。図5(B)は、図1(A)のノイズ抑制回路に対応するものであり、並列回路部分として並列回路16を1段のみ設けた構成となっている。図5(C)は、図3のノイズ抑制回路に対応するものであり、並列回路部分として2段接続の並列回路を有した構成となっている。なお、図5(A)〜(C)の各回路において、Ra,Rbは、入出力インピーダンスとして設定したものである。例えば、Raが電源系統側の入出力インピーダンス、Rbが機器側の入出力インピーダンスに相当する。このシミュレーションでは、Rb側を測定機器側として設定している。また図5(C)の回路において、Rcは寄生抵抗である。
図5(A)〜(C)において、各回路記号の近傍にはシミュレーションに用いた各回路素子の素子値を記す。図示したように、第1および第2のインダクタL1,L2のインダクタンスは共に、同じ値(560μH)に設定した。また、第1および第2のインダクタL1,L2の結合係数k1は、0.998に設定した。
図6は、図5(A)〜(C)の各回路によるシミュレーション結果を示している。これは、ノイズ抑制回路におけるノーマルモードノイズの減衰量の周波数特性をグラフ化して示したものである。なお、図6において、横軸は周波数(Hz)を表し、縦軸は減衰量(ゲイン)(dB)を表している。ゲインが小さいほど、すなわち、マイナス方向のゲインの絶対値が大きいほど、ノイズの減衰量は大きい。図6において、符号61で示した線が、図5(A)の回路によるシミュレーション結果を示し、符号62で示した線が、図5(B)の回路によるシミュレーション結果を示し、符号63で示した線が、図5(C)の回路によるシミュレーション結果を示している。
図6から、並列回路部分を有する図5(B),(C)の回路では、高周波側に減衰極64,65が生じているが、並列回路部分を省いた図5(A)の回路では、減衰極が生じていないことが分かる。ここで、図5(B)の回路では、並列回路を1段のみ有することにより、その共振点で1つの減衰極64のみが生じている。図5(C)の回路では、並列回路を2段有することにより、各並列回路の共振点による2つの減衰極64,65が生じている。このように、並列回路部分を有することで、ノイズ成分を部分的に、より効果的に抑制することができる。
図7(A),(B)は、第2のシミュレーションとして用いたノイズ抑制回路の等価回路を示している。図7(A)は、図1(A)のノイズ抑制回路に対応するものであり、並列回路部分として並列回路16を1段のみ設けた構成となっている。図7(B)は、図2(A)のノイズ抑制回路に対応するものであり、並列回路部分として、抵抗素子R1を含む並列回路16Aを1段のみ設けた構成となっている。図7(A),(B)の回路の違いは、抵抗素子R1の有無のみである。なお、図7(A),(B)の各回路において、図5(A)〜(C)の各回路と同一の部分には同一記号を付している。
図8は、図7(A),(B)の各回路によるシミュレーション結果を示している。これは、図6と同様、ノイズ抑制回路におけるノーマルモードノイズの減衰量の周波数特性をグラフ化して示したものである。図8において、符号71で示した線が、図7(A)の回路によるシミュレーション結果を示し、符号72で示した線が、図7(B)の回路によるシミュレーション結果を示している。
図8から、図7(A),(B)の各回路共に、高周波側に並列回路による減衰極が生じていることが分かる。また、並列回路が抵抗素子R1を含まない図7(A)の回路の方が、鋭い減衰極73が生じていることが分かる。
以上説明したように、本実施の形態に係るノイズ抑制回路によれば、比較的簡単な構成で、しかも大きなインダクタンスを有するコイルを用いることなく、広い周波数範囲において効果的にノーマルモードノイズを抑制することが可能になる。
[第2の実施の形態]
図9(A),(B)は、本発明の第2の実施の形態に係るノイズ抑制回路の第1および第2の構成例を示している。図9(A),(B)のノイズ抑制回路は、図1(A),(B)のノイズ抑制回路の構成に対して、第5および第6のインダクタL5,L6が追加されたものであり、その他の構成は図1(A),(B)のノイズ抑制回路と同様である。第5および第6のインダクタL5,L6は、第2の導電線4に直列的に挿入されている。
ここで、本実施の形態に係るノイズ抑制回路において、直列回路15と並列回路部分とからなる回路の一端が、第1および第2のインダクタL1,L2に接続される接続部分を第1の端部P1と呼び、第5および第6のインダクタL5,L6に接続される他端の接続部分を第2の端部P2と呼ぶ。また、第1のインダクタL1における第1の端部P1とは逆側の端部を第1のインダクタL1の一方の端部と呼び、第1のインダクタL1における第1の端部P1側の端部を第1のインダクタL1の他方の端部と呼ぶ。また、第2のインダクタL2における第1の端部P1側を第2のインダクタL2の一方の端部と呼び、第2のインダクタL2における第1の端部P1とは逆側の端部を第2のインダクタL2の他方の端部と呼ぶ。また、第5のインダクタL5における第2の端部P2とは逆側の端部を第5のインダクタL5の一方の端部と呼び、第5のインダクタL5における第2の端部P2側の端部を第5のインダクタL5の他方の端部と呼ぶ。また、第6のインダクタL6における第2の端部P2側の端部を第6のインダクタL6の一方の端部と呼び、第6のインダクタL6における第2の端部P2とは逆側の端部を第6のインダクタL6の他方の端部と呼ぶ。
図9(A)は、直列回路15と並列回路16のうち、直列回路15の方が第1の端部P1に接続され、並列回路16の方が第2の端部P2に接続されている構成例である。図9(B)は、逆に、直列回路15と並列回路16のうち、並列回路16の方が第1の端部P1に接続され、直列回路15の方が第2の端部P2に接続されている構成例である。
なお、本実施の形態に係るノイズ抑制回路においても、並列回路16は、1段に限らず、複数段接続されていてもよい。また、並列回路16は、図10(A),(B)に示した他の構成例のように、第4のインダクタL4と第2のキャパシタC2に加えて、それらに並列に接続された抵抗素子R1をさらに含んでいてもよい。図10(A)は、図9(A)のノイズ抑制回路において抵抗素子R1が追加された並列回路16Aを備えた構成例である。図10(B)は、図9(B)のノイズ抑制回路において抵抗素子R1が追加された並列回路16Aを備えた構成例である。
第5および第6のインダクタL5,L6は、第1および第2のインダクタL1,L2と同様、互いに電磁気的に結合されている。第5のインダクタL5は、磁芯22の第1の部分22aに巻かれた巻線21aを有している。第6のインダクタL6は、磁芯22の第2の部分22bに巻かれた巻線21bを有している。第5および第6のインダクタL5,L6は、第1および第2のインダクタL1,L2と同様、別々の巻線21a,21bで形成してもよいが、図11に示したように単一の巻線21で形成することも可能である。巻線21は、磁芯22に巻かれている。なお、図11では、第1および第2のインダクタL1,L2、ならびに第5および第6のインダクタL5,L6以外の回路は図示を省略している。
第5および第6のインダクタL5,L6を単一の巻線で形成する場合、図11に示したように例えば、単一の巻線21の途中に接続点(第2の端部P2)を設け、その巻線21の一方の端部から接続点までを巻線21aとして第5のインダクタL5とすればよい。同様に、巻線21の他方の端部から接続点までを巻線21bとして第6のインダクタL6とすればよい。この接続点に、直列回路15と並列回路部分とからなる回路の他端を接続する。
第5および第6のインダクタL5,L6のインダクタンスは、第1および第2のインダクタL1,L2のインダクタンスと同様、同一の値であることが好ましい。より好ましくは、第1および第2のインダクタL1,L2、ならびに第5および第6のインダクタL5,L6のすべてのインダクタンスを同一の値にするとよい。第5および第6のインダクタL5,L6を単一の巻線21で形成する場合、例えば単一の巻線21の中点に上記接続点を設けることで、第5および第6のインダクタL5,L6の各インダクタンスを等しくすることができる。
また、第1および第2のインダクタL1,L2と第5および第6のインダクタL5,L6とが電磁気的に結合された構成であってもよい。この場合、ノーマルモードの信号を流した場合に第1および第2のインダクタL1,L2に発生する磁界を高めるように結合される構成とする。この場合、ノーマルモードノイズのインピーダンスを上げることができ、より効果的にノイズ抑制ができる。さらに、第1および第2のインダクタL1,L2の磁芯12と第5および第6のインダクタL5,L6の磁芯22とを共通化することができ、小型化に寄与すると共に、第1および第2のインダクタL1,L2、第5および第6のインダクタL5,L6、ならびに第3のインダクタL3としてインダクタンスの小さなコイルを用いることができる。
次に、本実施の形態に係るノイズ抑制回路の作用について説明する。ここでは、図9(A)の構成例を基本にして説明する。始めに、図1(A)に示したように、端子1a,1b間にノーマルモードの電圧Viが印加された場合について説明する。この場合には、第1のインダクタL1の一方の端部と第5のインダクタL5の一方の端部との間に電圧Viが印加される。この電圧Viは、第1のインダクタL1と直列回路15および並列回路16からなる回路と第5のインダクタL5とによって分圧され、第1のインダクタL1の両端間と直列回路15および並列回路16からなる回路の両端間と第5のインダクタL5の両端間とにそれぞれ所定の電圧が発生する。なお、図中の矢印は、その先の方が高い電位であることを表している。
第1のインダクタL1と第2のインダクタL2は互いに電磁気的に結合されているので、第1のインダクタL1の両端間に発生した電圧に応じて、第2のインダクタL2の両端間に所定の電圧が発生する。同様に、第5のインダクタL5と第6のインダクタL6は互いに電磁気的に結合されているので、第5のインダクタL5の両端間に発生した電圧に応じて、第6のインダクタL6の両端間に所定の電圧が発生する。その結果、第2のインダクタL2の他方の端部と第6のインダクタL6の他方の端部との間の電圧、すなわち端子2a,2b間の電圧Voは、第1のインダクタL1の一方の端部と第5のインダクタL5の一方の端部との間に印加された電圧Viよりも小さくなる。
また、本実施の形態において、端子2a,2b間にノーマルモードの電圧が印加された場合も、上記の説明と同様にして、端子1a,1b間の電圧は、端子2a,2b間に印加された電圧よりも小さくなる。このように、本実施の形態に係るノイズ抑制回路によれば、端子1a,1bにノーマルモードノイズが印加された場合と、端子2a,2bにノーマルモードノイズが印加された場合のいずれの場合にも、ノーマルモードノイズを抑制することができる。
次に、本実施の形態に係るノイズ抑制回路の効果を、以下のシミュレーションの結果によって具体的に示す。
図12(A)〜(C)は、シミュレーションに用いたノイズ抑制回路の等価回路を示している。図12(A)は、本実施の形態に係るノイズ抑制回路の比較例となる回路である。この比較例の回路は、図1(A)のノイズ抑制回路に対応するものであり、本実施の形態に係るノイズ抑制回路に対して、第5および第6のインダクタL5,L6を省いた回路構成となっている。図12(B)は、図9(A)のノイズ抑制回路に対応するものであり、図12(A)の比較例の回路に対して、第5および第6のインダクタL5,L6が追加された回路構成となっている。図12(C)は、図10(A)のノイズ抑制回路に対応するものであり、図12(B)の回路に対して、抵抗素子R1が追加された並列回路16Aを備えた構成となっている。なお、図12(A)〜(C)の各回路において、Ra,Rbは、入出力インピーダンスとして設定したものである。例えば、Raが電源系統側の入出力インピーダンス、Rbが機器側の入出力インピーダンスに相当する。このシミュレーションでは、Rb側を測定機器側として設定している。
図12(A)〜(C)において、各回路記号の近傍にはシミュレーションに用いた各回路素子の素子値を記す。図示したように、図12(A)の比較例の回路では、第1および第2のインダクタL1,L2のインダクタンスは共に、同じ値(560μH)に設定した。また、第1および第2のインダクタL1,L2の結合係数k1は、0.998に設定した。第3のインダクタL3のインダクタンスは、672μHに設定した。図12(B),(C)の回路では、第1および第2のインダクタL1,L2、ならびに第5および第6のインダクタL5,L6のすべてのインダクタンスを、共に同じ値(280μH)に設定した。図12(B),(C)の回路では、第3のインダクタL3のインダクタンスは、600μHに設定した。また、第1および第2のインダクタL1,L2の結合係数k1は、図12(A)の比較例の回路と同様、0.998に設定した。第5および第6のインダクタL5,L6の結合係数k2も同様に、0.998に設定した。
図13は、図12(A)〜(C)の各回路によるシミュレーション結果を示している。これは、図6と同様、ノイズ抑制回路におけるノーマルモードノイズの減衰量の周波数特性をグラフ化して示したものである。図13において、符号81で示した線が、図12(A)の回路によるシミュレーション結果を示し、符号82で示した線が、図12(B)の回路によるシミュレーション結果を示し、符号83で示した線が、図12(C)の回路によるシミュレーション結果を示している。
図13から、並列回路部分を有していることにより、図12(A)〜(C)のすべての回路において高周波側に、それぞれ減衰極81A,82A,83Aが生じていることが分かる。すなわち、第1の実施の形態に係るノイズ抑制回路と同様、本実施の形態に係るノイズ抑制回路においても並列回路部分を有することで、ノイズ成分を部分的に、より効果的に抑制することができていることが分かる。また、並列回路が抵抗素子R1を含まない図12(B)の回路の方が、鋭い減衰極82Aが生じていることが分かる。
以上説明したように、本実施の形態に係るノイズ抑制回路によれば、第1および第2の導電線3,4のそれぞれにインダクタを挿入し、第1および第2の導電線3,4のインピーダンス特性が平衡になるように構成されているので、第1および第2の導電線3,4からの放射電界強度の増加を抑制して、放射ノイズの発生を抑制することができる。本実施の形態におけるその他の構成、作用および効果は、第1の実施の形態と同様である。
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施に係るノイズ抑制回路について説明する。本実施の形態に係るノイズ抑制回路は、2本の導電線を同じ位相で伝搬するコモンモードノイズを抑制する回路である。
図14は、本実施の形態に係るノイズ抑制回路の一構成例を示している。このノイズ抑制回路は、一対の端子1a,1bと、他の一対の端子2a,2bと、端子1a,2a間を接続する第1の導電線3と、端子1b、2b間を接続する第2の導電線4と、グランド端子5と、グランド端子5に接続されたグランド線6とを備えている。
このノイズ抑制回路はさらに、第1の導電線3に直列的に挿入された第1および第2のインダクタL11,L12と、第2の導電線4に直列的に挿入され、第1および第2のインダクタL11,L12と協働してコモンモードノイズを抑制する第3および第4のインダクタL13,L14とを備えている。このノイズ抑制回路はさらに、直列に接続された第5のインダクタL15と第1のキャパシタC11とからなる第1の直列回路と、直列に接続された第6のインダクタL16と第2のキャパシタC12とからなる第2の直列回路とを備えている。第5および第6のインダクタL15,L16は、磁芯37bに巻かれた巻線37aを有している。
ここで、図14の構成例では、第1の直列回路の第1のキャパシタC11の一端が第1のインダクタL11と第2のインダクタL12との間に接続され、第2の直列回路の第2のキャパシタC12の一端が第3のインダクタL13と第4のインダクタL14との間に接続されることにより、第1の直列回路における第5のインダクタL15と第2の直列回路における第6のインダクタL16とが共通化されている。第5のインダクタL15と第6のインダクタL16とを共通化しない場合、第1の直列回路と第2の直列回路とのそれぞれにおいて、第5のインダクタL15と第1のキャパシタC11との位置関係、ならびに第6のインダクタL16と第2のキャパシタC12との位置関係は図示したものとは逆であってもよい。例えば、第1の直列回路において、第1のキャパシタC11ではなく、第5のインダクタL15の方を第1のインダクタL11と第2のインダクタL12との間に接続するようにしてもよい。
このノイズ抑制回路はさらに、並列に接続された第7のインダクタL17と第3のキャパシタC13とを含む並列回路41を備えている。第7のインダクタL17は、磁芯38bに巻かれた巻線38aを有している。並列回路41はさらに、抵抗素子を含んでいてもよい。すなわち、図15に示した他の構成例のように、第7のインダクタL17と第3のキャパシタC13とに加えて、それらに並列に接続された抵抗素子R11をさらに含む並列回路16Aを備えた構成であってもよい。
また、並列回路41は、1段に限らず、図16に示した構成例のように複数段接続されていてもよい。図16は、図14の構成例に対して並列回路41として、第1の並列回路(インダクタL17−1,キャパシタC13−1)と第2の並列回路(インダクタL17−2,キャパシタC13−2)とを2段直列的に接続した並列回路部分41Bを備えている。
このように、本実施の形態に係るノイズ抑制回路は、並列回路を少なくとも1段有する並列回路部分を備えている。そして並列回路部分の一端が第1および第2の直列回路に接続されている。なお、第1および第2の直列回路において、第5のインダクタL15と第6のインダクタL16とを共通化しない場合、並列回路部分を2つ設け、第1および第2の直列回路のそれぞれに、別々の並列回路部分を接続した構成にすることも可能である。すなわち、第7のインダクタL17と第3のキャパシタC13とを含む並列回路41を第1の並列回路部分として第1の直列回路に接続し、図示しない第8のインダクタと第4のキャパシタとを含む並列回路を第2の並列回路部分として第2の直列回路に接続した構成にすることも可能である。この場合、第1の並列回路部分の一端が第1の直列回路に接続され、これら第1の直列回路と第1の並列回路部分とからなる第1の回路の一端が、第1のインダクタL11と第2のインダクタL12との間に接続され、かつ他端が接地される。また、第2の並列回路部分の一端が第2の直列回路に接続され、これら第2の直列回路と第2の並列回路部分とからなる第2の回路の一端が、第3のインダクタL13と第4のインダクタL14との間に接続され、かつ他端が接地される。
図14の構成例では、第1の並列回路部分と第2の並列回路部分とが共通化され、その共通化された並列回路部分の一端が、第1および第2の直列回路の共通のインダクタL15(L16)に接続され、他端が接地されている。
なお、第1および第2の直列回路の方ではなく、第1の並列回路部分と第2の並列回路部分の方をそれぞれ、第1および第2のインダクタL11,L12の間、ならびに第3および第4のインダクタL13,L14の間に接続することも可能である。図17は、その構成例を示している。この構成例では、第1および第2の直列回路の共通のインダクタL15(L16)の一端が、第1および第2の直列回路の各キャパシタC11,C12に接続されると共に、他端が接地されている。また、第1の並列回路41−1の一端が第1の直列回路の第1のキャパシタC11の一端に接続され、かつ他端が第1および第2のインダクタL11,L12の間に接続されている。また、第2の並列回路41−2の一端が第2の直列回路の第2のキャパシタC12の一端に接続され、かつ他端が第3および第4のインダクタL13,L14の間に接続されている。第1の並列回路41−1は、互いに並列接続された第7のインダクタL17と第3のキャパシタC13とで構成され、第2の並列回路41−2は、互いに並列接続された第8のインダクタL18と第4のキャパシタC14とで構成されている。
ここで、本実施の形態に係るノイズ抑制回路において、第1の直列回路と第1の並列回路部分とからなる回路の一端が、第1および第2のインダクタL11,L12に接続される接続部分を第1の端部P1と呼び、接地される他端の接続部分を第2の端部P2と呼ぶ。また、第2の直列回路と第2の並列回路部分とからなる回路の一端が、第3および第4のインダクタL13,L14に接続される接続部分を第3の端部P3と呼び、接地される他端の接続部分を第4の端部P4と呼ぶ。図14では、第1の並列回路部分と第2の並列回路部分とが共通化されているので、第2の端部P2と第4の端部P4とが共通化されている。
また、第1のインダクタL11における第1の端部P1とは逆側の端部を第1のインダクタL11の一方の端部と呼び、第1のインダクタL11における第1の端部P1側の端部を第1のインダクタL11の他方の端部と呼ぶ。また、第2のインダクタL12における第1の端部P1側の端部を第2のインダクタL12の一方の端部と呼び、第2のインダクタL12における第1の端部P1とは逆側の端部を第2のインダクタL12の他方の端部と呼ぶ。また、第3のインダクタL13における第3の端部P3とは逆側の端部を第3のインダクタL13の一方の端部と呼び、第3のインダクタL13における第3の端部P3側の端部を第3のインダクタL13の他方の端部と呼ぶ。また、第4のインダクタL14における第3の端部P3側の端部を第4のインダクタL14の一方の端部と呼び、第4のインダクタL14における第3の端部P3とは逆側の端部を第4のインダクタL14の他方の端部と呼ぶ。
第1および第2のインダクタL11,L12は、互いに電磁気的に結合されている。第3および第4のインダクタL13,L14も同様に、互いに電磁気的に結合されている。第1および第2のインダクタL11,L12は、それぞれ別々の巻線で形成してもよいし、単一の巻線で形成してもよい。第3および第4のインダクタL13,L14も同様である。図14は、第1および第2のインダクタL11,L12を単一の巻線31で形成し、第3および第4のインダクタL13,L14を単一の巻線32で形成した構成例である。このように第1および第2のインダクタL11,L12を単一の巻線31で形成する場合、単一の巻線31の途中に接続点(第1の端部P1)を設け、その巻線31の一方の端部から接続点までを巻線31aとして第1のインダクタL11とし、同様に、巻線31の他方の端部から接続点までを巻線31bとして第2のインダクタL12とすることができる。この接続点に、第1の直列回路と第1の並列回路部分とからなる回路の一端を接続する。第3および第4のインダクタL13,L14についても同様に、単一の巻線32の途中に接続点(第3の端部P3)を設け、その巻線32の一方の端部から接続点までを巻線32aとして第3のインダクタL13とし、巻線32の他方の端部から接続点までを巻線32bとして第4のインダクタL14とすることができる。この接続点に、第2の直列回路と第2の並列回路部分とからなる回路の一端を接続する。
第1および第2のインダクタL11,L12のインダクタンスは同一の値であることが好ましい。第1および第2のインダクタL11,L12を単一の巻線31で形成する場合、例えば単一の巻線31の中点に上記接続点を設けることで、各インダクタンスを等しくすることができる。第3および第4のインダクタL13,L14のインダクタンスも、同様にして同一の値にすることが好ましい。より好ましくは、第1および第2のインダクタL11,L12、ならびに第3および第4のインダクタL13,14のすべてのインダクタンスを同一の値にするとよい。
巻線31と巻線32は、共通の磁芯33に巻かれ、協働してコモンモードノイズを抑制するように互いに結合している。すなわち、巻線31,32は、これらにノーマルモードの電流が流れたときに各巻線31,32を流れる電流によって磁芯33に誘起される磁束が互いに相殺されるような向きに磁芯33に巻かれている。このように、巻線31,32および磁芯33は、コモンモードノイズを抑制し、ノーマルモード信号を通過させるコモンモードチョークコイルを構成している。
ただし、巻線31と巻線32とを結合させることなく、別々の磁芯に巻かれた構成にすることも可能である。この場合、巻線31と巻線32とを結合させた場合に比べて、ノーマルモードノイズの抑制を図ることができる。
次に、本実施の形態に係るノイズ抑制回路の作用について説明する。ここでは、図14の構成例を基本に説明する。始めに、端子1a,1bにコモンモードの電圧Viが印加された場合について説明する。この場合、第1のインダクタL11の一方の端部とアース間、および第3のインダクタL13の一方の端部とアース間に等しい電圧Viが発生する。第1のインダクタL11の一方の端部とアース間に発生した電圧Viは、第1のインダクタL11と第1の回路(第1の直列回路と並列回路41)とによって分圧され、第1のインダクタL11の両端間と第1の回路の両端間とに、それぞれ所定の電圧が発生する。なお、図中の矢印は、その先の方が高い電位であることを表している。同様に、第3のインダクタL13の一方の端部とアース間に発生した電圧Viは、第3のインダクタL13と第2の回路(第2の直列回路と並列回路41)とによって分圧され、第3のインダクタL13の両端間と第2の回路の両端間とに、それぞれ所定の電圧が発生する。第1のインダクタL11と第2のインダクタL12は互いに電磁気的に結合されているので、第1のインダクタL11の両端間に発生した電圧に応じて、第2のインダクタL12の両端間に所定の電圧が発生する。その結果、第2のインダクタL12の他方の端部とアース間の電圧、すなわち端子2aとアース間の電圧Voは、第1のインダクタL11の一方の端部とアース間に発生した電圧、すなわち端子1aとアース間に発生した電圧Viよりも小さくなる。
同様に、第3のインダクタL13と第4のインダクタL14は互いに電磁気的に結合されているので、第3のインダクタL13の両端間に発生した電圧に応じて、第4のインダクタL14の両端間に所定の電圧が発生する。その結果、第4のインダクタL14の他方の端部とアース間の電圧、すなわち端子2bとアース間の電圧Voは、第3のインダクタL13の一方の端部とアース間に発生した電圧、すなわち端子1bとアース間に発生した電圧Viよりも小さくなる。このようにして、端子1a,1bにコモンモードの電圧が印加された場合には、端子2a,2bに発生するコモンモードの電圧は、端子1a,1bに印加されたコモンモードの電圧よりも小さくなる。
また、本実施の形態において、端子2a,2bにコモンモードの電圧が印加された場合も、上記の説明と同様にして、端子1a,1bに発生するコモンモードの電圧は、端子2a,2bに印加されたコモンモードの電圧よりも小さくなる。このように、本実施の形態に係るノイズ抑制回路によれば、端子1a,1bにコモンモードノイズが印加された場合と、端子2a,2bにコモンモードノイズが印加された場合のいずれの場合にも、コモンモードノイズを抑制することができる。
特に、本実施の形態に係るノイズ抑制回路では、第7のインダクタL17と第3のキャパシタC13とを含む並列回路41を設けていることにより、第4のインダクタL17と第3のキャパシタC13とによる共振点付近において、直列回路のみの場合と比べてコモンモードのノイズ成分がより効果的に抑制される。したがって、並列回路41による共振点を例えば高周波領域に設定することで、特に高周波領域におけるノイズ成分を部分的に、より効果的に抑制することができる。
次に、本実施の形態に係るノイズ抑制回路の効果を、実際の実験による以下の測定結果によって具体的に示す。
図18は、測定に用いたノイズ抑制回路の等価回路を示している。この回路は、図15に示したノイズ抑制回路に対応するものであり、第7のインダクタL17、第3のキャパシタC13、および抵抗素子R11からなる並列回路41Aを備えた構成となっている。なお、図18の等価回路において、Ca,Cbはノーマルモードノイズ抑制用のキャパシタであり、Rdは第1および第2の直列回路におけるインピーダンス調整用の抵抗である。
図18において、各回路記号の近傍には測定に用いた各回路素子の素子値を記す。この測定では、第1および第2のインダクタL11,L12、ならびに第3および第4のインダクタL13,L14のすべてのインダクタンスを、共に同じ値(580μH)にした。並列回路部分の素子については、第7のインダクタL17=22μH、第3のキャパシタC13=1pF、抵抗素子R11=1.1kΩにした。
図19は、その測定結果を示す。ノイズ抑制回路におけるコモンモードノイズの減衰量の周波数特性をグラフ化して示したものである。横軸は周波数(Hz)を表し、縦軸は減衰量(ゲイン)(dB)を表している。図19において、符号93で示した線が、図18の回路を用いた実際の測定結果を示している。符号91で示した線は、減衰量の目標値として設定したものである。符号92で示した線は、今回、比較例として用意した回路の実際の測定結果を示している。この比較例の回路は、図18の回路に対して、並列回路部分である第7のインダクタL17、第3のキャパシタC13、および抵抗素子R11を省いたものである。
図19の測定結果から、本実施の形態に係るノイズ抑制回路では、並列回路部分を有していることにより、高周波側に減衰極93Aが生じていることが分かる。これにより、並列回路部分を有しない比較例の回路に比べて、特に高周波側において、ノイズ成分をより効果的に抑制できている。
本実施の形態に係るノイズ抑制回路の特性は、ノーマルモードとコモンモードの違いを除けば、第1の実施の形態に係るノイズ抑制回路と同様である。したがって、本実施の形態に係るノイズ抑制回路によれば、コモンモードチョークコイルに、インダクタとキャパシタからなる2つの直列回路を付加し、さらに並列回路を追加しただけの比較的簡単な構成で、しかも大きなインダクタンスを有するコイルを用いることなく、広い周波数範囲において効果的にコモンモードノイズを抑制することができる。
なお、各実施の形態に係るノイズ抑制回路は、電力変換回路が発生するリップル電圧やノイズを低減する手段や、電力線通信において電力線上のノイズを低減したり、室内電力線上の通信信号が屋外電力線に漏洩することを防止する手段として利用することができる。
なお、本発明は上記各実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、本発明のノイズ抑制回路は、第1または第2の実施の形態に係るノーマルモードノイズ抑制用の回路と第3の実施の形態に係るコモンモードノイズ抑制用の回路とを備えていてもよい。
C1,C11…第1のキャパシタ、C2,C12…第2のキャパシタ、C3,C13…第3のキャパシタ、Ca,Cb…寄生容量、L1,L11…第1のインダクタ、L2,L12…第2のインダクタ、L3,L13…第3のインダクタ、L4,L14…第4のインダクタ、L5,L15…第5のインダクタ、L6,L16…第6のインダクタ、L17…第7のインダクタ、R1,R11…抵抗素子、Rd…寄生抵抗、3…第1の導電線、4…第2の導電線、11,11a,11b,21,21a,21b…巻線、12,22…磁芯、15…直列回路、16,16A,16B,41,41A,41B…並列回路。