JP4239848B2 - マイクロ波用アンテナおよびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、カーボンナノチューブを輻射器の材料として用いたマイクロ波用アンテナ、および、その製造方法に関する。さらに詳しくは、UWB(Ultra Wide Band)等の大容量無線通信等に利用可能なマイクロ波用アンテナ、および、その製造方法に関する。
電波利用範囲の拡大に伴い通信アンテナの分野においては、アンテナの設計において、高効率化と広帯域化および小型化が鋭意検討されている。その中でペンシルベニア大学のワーナ(Douglas Werner)らが、アンテナをフラクタル状に配置すると効率が高まることを理論的に説明し、アンテナ数を1/4に減らせる事を示している。また、ボストン大学のコーエン(Nathan Cohen)は、シェルピンスキー三角形の利用により、そのギザギザ形状から静電容量とインダクタンスとが生じ広帯域化が可能なこと、および面積が1/6にできることを示している(以上、非特許文献1参照)。
これらフラクタルアンテナの具体的な形状と構成については、特許文献2、特許文献3および特許文献4に示されている。特に特許文献4において、反射係数の評価で−10dB以下の領域として1〜9.5GHzの広帯域化が具体的に示されている。
しかしながら、フラクタルアンテナにおいても、特定周波数に対応する多角形と、その相似形の有限な繰り返しから成るため、その小型化には限界がある。この大きさの制限から厳密なフラクタル形状とはならないため、低周波数領域で理想状態からのズレが生じる。この問題を解決するために、複数の多角形を組み合わせたマルチレベルアンテナが提案されているが(特許文献5参照)、さらなる小型化、広帯域化への要求にはまだ不十分である。
ところで、カーボンナノチューブ(CNT)は、その特異な形状や特性ゆえに、様々な応用が考えられている。カーボンナノチューブの形状は炭素原子の六員環で構成されるグラフェンシートを巻いた一次元性を有する筒状であり、グラフェンシートが1枚の構造のカーボンナノチューブを単層ナノチューブ(SWNT)、多層構造のカーボンナノチューブを多層ナノチューブ(MWNT)と称している。SWNTは直径約1nm、MWNTは数十nm程度であり、従来のカーボンファイバーと称される物よりも極めて細い。
また、カーボンナノチューブは、マイクロメートルオーダーの長さを有し、直径に対する長さのアスペクト比が非常に大きいことが特徴的である。さらに、カーボンナノチューブは炭素原子の六員環の配列が螺旋構造をとることから、金属性と半導体性との両方の性質を有するという、極めて希有な特性を有する物質である。加えて、カーボンナノチューブの電気伝導性は極めて高く、電流密度に換算すると100MA/cm2以上の電流を流すことができる。
カーボンナノチューブは、電気的特性だけではなく、機械的性質についても優れた点を有する。すなわち、炭素原子のみで構成されているため、非常に軽量であるにもかかわらず、1TPaを越えるヤング率を有し、極めて強靱である。また、ケージ物質であるために弾力性・復元性にも富んでいる。このように、カーボンナノチューブは様々な優れた性質を有するため、工業材料として、極めて魅力的な物質である。
これまでに、カーボンナノチューブの優れた特性を利用するためにカーボンナノチューブを膜状にして、配線やパターニングを行う方法が開発されている。例えば、これまでに、スクリーン印刷法やフォトリソグラフィー技術を用いて、カーボンナノチューブのパターン形成が為されている。これらの技術は、一度に広い面積にパターン形成し得る点で優れており、電界放出型ディスプレイ(FED)の電子源のパターニングとして用いられている。しかし、これらの方法は、カーボンナノチューブを溶媒に単に分散させて塗布したり、バインダーを混ぜて塗布したりしているため、機械的強度や電気的な導電性といった性能面で不十分であり、そのまま、電極や電気回路として使用することは困難であった。
かかる技術をアンテナに適用した例が、特許文献6に開示されている。しかし、当該文献に記載された構成のアンテナは、単なる電磁誘導型のものであるためコイル形状にアンテナを形成しているが、帯域幅は設計した周波数の−20%から+20%程度であり、マイクロ波領域の帯域特性に関しては検討がなされていなかった。
一方、特許文献1には、官能化されたカーボンナノチューブを用いて三次元構造のカーボンナノチューブを形成することが可能である旨開示されている。当該文献には、単にクロマトグラフィのフローセル電極として用いるべく、多孔性で通過物質の分離吸着のための官能基を結合させたカーボンナノチューブを金属メッシュ上に堆積させて多孔質化して利用するものや、アルミニウムやシリカのアルコキシド(当該アルコキシド自体は、絶縁物となる。)を架橋剤として用いてカーボンナノチューブ同士を結合させるものが開示されている。しかしながら、当該文献では、アンテナへの応用に関しては検討がなされていない。
特表2002−503204号公報 WO第97/06578号公報 WO第99/25044号公報 WO第02/01668A2号公報 特表2003−510871号公報 特開2002−7992号公報 日経サイエンス1999年9月号第10項
したがって、本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを課題とする。詳しくは、本発明の目的は、カーボンナノチューブの特性を効果的に活用することにより、小型化や広帯域化等の要求に応えることが可能なマイクロ波用アンテナおよびその製造方法を提供することにある。
上記目的は、以下の本発明により達成される。
すなわち、本発明のマイクロ波用アンテナは、基体と、複数のカーボンナノチューブが相互に電気的に接続された網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体を含み、前記基体表面に支持された輻射器と、該輻射器に接続された給電電極と、を備えることを特徴とする。
即ち、本発明のマイクロ波用アンテナにおいて、輻射器は、複数のカーボンナノチューブが相互に電気的に接続された網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体を含んでいる。このため、前記輻射器には、微細なカーボンナノチューブにより形成された網目構造に起因する、複数種類の多角形形状と様々な大きさとを持つ電流経路が形成されており、かつこれらの電流経路が様々な静電容量とインダクタンスとを有するため、多様な周波数に対応した電流経路長を有する輻射器が複合されたアンテナが自発的に形成された状態となっている。したがって、前記輻射器により、これを含む本発明のマイクロ波用アンテナは、極めて高効率ないし広帯域なものとなる。
本発明のマイクロ波用アンテナは、使用周波数がマイクロ波である。本発明により形成される前記輻射器内に形成される電流経路が、波長の短いマイクロ波に対して高い感度を有するためである。特に極めて高周波のマイクロ波に関しては、高感度のアンテナを作製することが従来困難であったが、本発明は、それを容易かつ低コストで作製することができる。
ここで、一般的に「マイクロ波」とは、300MHz〜3GHz程度のデシメータ波(UHF)、3GHz〜30GHz程度のセンチ波(SHF)、30GHz〜300GHz程度のミリ波(EHF)、300GHz以上のサブミリ波までを含む。本発明において、対象となるマイクロ波は、これら全てを含む帯域であり、具体的には、300MHz以上の周波数を指すものとする。本発明のマイクロ波用アンテナが、特に好適に良好な感度を示す周波数帯域は、その構成により大きく変化するため一概には言えないが、300MHz〜300GHzの範囲であれば十分に高感度のマイクロ波用アンテナを得ることができ、さらに高感度な帯域としては、800MHz〜60GHzの範囲である。
本発明のマイクロ波用アンテナにおいて、基体の形状は、板状(平板状)であっても三次元形状であってもよい。ただし、板状とすることが、完成したマイクロ波用アンテナの小型化、取り扱い性等の観点から好ましい。また、前記カーボンナノチューブ構造体を支持する表面(支持面)全面を絶縁性とし、輻射器となるカーボンナノチューブ構造体の一部に対して給電電極を接続する構成が、カーボンナノチューブ構造体全体を導電性のある表面で支持する場合に比べて、カーボンナノチューブ構造体中における電流経路長の分布が多様になる点で望ましい。
なお、給電電極は、上述のように別途形成する以外に、前記基体の支持面の一部の領域を導電性としておき、これとカーボンナノチューブ構造体との間を電気的に接続する構造とし、この導電性の領域を給電電極としても構わない。また、少なくとも前記基体の支持面全面を絶縁性としておき、カーボンナノチューブ構造体で形成された輻射器を配置した上側から、給電電極を設けてもよく、この場合には網目構造をしたカーボンナノチューブ構造体からなる輻射器と給電電極とを確実に電気接続させることが可能となる点で好ましい。
本発明のマイクロ波用アンテナには、接地電極を設けることが望ましい。該接地電極は、前記基体の前記輻射器を支持する表面と異なる表面に設けることができる。このとき、前記基体が板状である場合には、当該基板の支持面と反対側の面に接地電極を設けると、電磁波の輻射方向をカーボンナノチューブ構造体を支持する面側に規制することが可能となる。このとき、前記基体の材料として、高誘電率、低誘電損失のものを用いることが、マイクロ波用アンテナの小型化が実現できる点で好ましい。
また、前記接地電極は、前記基体の前記輻射器を支持する表面における、前記輻射器が支持される領域と異なる領域に設けることもできる。これにより、前記輻射器の増幅回路等への集積化が容易となる他、電磁波の輻射方向を前記輻射器を支持する表面の反対側へも広げる事が可能となる。
さらに、前記接地電極は、前記基体の内部に設けることもできる。このとき、前記基体が板状である場合には、接地電極を前記基体の内部に積層することができる。また、前記基体が円筒や角錐、球体等の三次元形状とする場合には、当該基体の内部に導電性の接地電極を設けることで効率的に電磁波を周囲に輻射させることができる。
また、本発明のマイクロ波用アンテナにおける輻射器は、輻射波の波長に応じた輻射器長(等倍、整数倍、整数分の1)とするためのパターニングを施す必要がない。パターニングを行わず、カーボンナノチューブ構造体を、例えば膜状等一様に形成するだけで、マクロ的には均質でもミクロ的には大小種々の形状の輻射器を含んだものとなり、アンテナの小型化が容易に実現できる。すなわち、前述のようにカーボンナノチューブ構造体の内部で、多様な長さ・形状の電流経路(ミクロ的な輻射器)が形成され、結果として広帯域の輻射波の波長に対応した多様な電流経路を有する輻射器が形成されているため、広帯域化とアンテナ自体の小型化とが実現できる。
ただし、こうした一様な膜中において、確実に所望の周波数帯域のアンテナを形成させるには、利用周波数帯域中の最も長い輻射波長に対応した電流経路が構造体の内部に形成されていることが望ましい。このため、輻射器を構成するカーボンナノチューブ構造体における、少なくとも前記最も長い輻射波長を直径とする領域内で(マクロ的に)一様な状態であること(つまりは、何らかのパターニング等がされず、ベタ塗り状態であること)が望ましい(以下「一様な」との表現は、マクロ的な意味とする。)。このようにすれば、利用帯域の輻射波長に応じたパターニング等による電流経路の形成を敢えてしなくとも、広帯域に適応し得る輻射器を確実に形成することができる。
より具体的には、携帯電話や無線LANへの応用を考えた場合には、その通信帯域が1.0GHz〜2.5GHzであるから、少なくとも面積1.2cm3以上9cm3以下の領域を一様なカーボンナノチューブ構造体とすることが好ましい。また、さらに高周波(5.8GHz〜10GHz)を通信帯域とするETC(Electronic Toll Collection)用アンテナ等への利用を考えた場合には、少なくとも面積0.10cm3以上0.50cm3以下の領域を一様なカーボンナノチューブ構造体とすることが好ましい。
本発明のマイクロ波用アンテナには、給電電極とは別に、前記輻射器となる前記カーボンナノチューブ構造体に電気的に接続された第2の導電体を備えることが好ましい。前記カーボンナノチューブ構造体に電気的に接続された第2の導電体を備えることで、当該第2の導電体は付加的な輻射器として機能し、カーボンナノチューブ構造体は、それ自体輻射器として機能するほか、前記第2の導電体により構成される付加的な輻射器のインピーダンス調整器として機能する。そのため、所望の周波数の電磁波の輻射を効率的に行うことができるようになる。
なお、本発明の、給電電極、接地電極および第2の導電体としては、金属電極や、誘電体あるいは半導体の全体あるいは一部を不純物イオンのドーピング等で導電化したものや、有機導電材料等任意に用いることができる。ただし、カーボンナノチューブ構造体から構成される輻射器に対して、オーミックに接続されることが輻射効率の点から望ましいことから、導電性に優れたものが好ましく、これらの中でも金属電極が最も適している。金属電極の具体的な材質としては、アルミニウム、金、銀、銅、プラチナ、アルミニウム合金、チタン、クロム等が挙げられ、カーボンナノチューブとの接続性の点から、特にアルミニウム、金、銅およびチタンが好ましい。
本発明のマイクロ波用アンテナにおけるカーボンナノチューブ構造体は、複数のカーボンナノチューブが相互に電気的に接続された網目構造を構成するが、このような網目構造の例としては、複数のカーボンナノチューブが相互に絡み合うことで電気的接続された状態で網目構造となった、所謂カーボンナノチューブ分散膜と、複数のカーボンナノチューブ同士を化学結合による架橋部位により網目構造とした架橋膜とがある。
前者の所謂カーボンナノチューブ分散膜においては、その空隙に樹脂が充填されたタイプと充填されていないタイプとがあり、いずれも本発明のマイクロ波用アンテナにおけるカーボンナノチューブ構造体を構成することができる。かかるカーボンナノチューブ分散膜では、相互接続を確実に生じさせるためには高濃度にカーボンナノチューブを充填しなければならない。しかしながら、独立したカーボンナノチューブ同士は相互に寄り集まって束化(バンドリング)してしまうため、細かい網目構造を形成しにくくなり、また、電気的な接続も物理的な接触に依存しているため、軽く接触している程度では高抵抗となり実質的に絶縁された状態となることもあり、多様な長さ・形状のミクロの輻射器(電流経路)が構造体内部に形成されにくい。また、カーボンナノチューブ同士の接触状態並びに配置状態が不安定になることで、電気抵抗の増加や変動により、放射効率を十分に高めることが困難となったり、放射効率の変動を来たしたりしてしまうこともある。
このため、輻射器に用いるカーボンナノチューブ構造体としては、複数のカーボンナノチューブと、少なくともその一端がそれぞれ異なる前記カーボンナノチューブに結合された複数の官能基同士の化学結合により形成された架橋部位と、からなる、後者の架橋膜であることが好ましい。このように化学的結合による架橋部位により網目構造を形成しているため、物理的な接触による電気的接続に加え、化学結合による結合部位が確実に形成されるため、より多くの結合部分が形成されるようになり、多様な長さ・形状のミクロの輻射器(電流経路)を内部に有するカーボンナノチューブ構造体となる。その結果、前者の所謂カーボンナノチューブ分散膜を輻射器に用いたときのような電気抵抗の増加や変動が防止され、カーボンナノチューブに特有の性質である高い電気伝導性を有効に活用することができる。
また、このようなカーボンナノチューブ構造体は、複数のカーボンナノチューブが複数の架橋部位を介して網目構造状態となっているので、単なるカーボンナノチューブの分散膜のような、カーボンナノチューブ同士が偶発的に接触しているだけで、実質的に孤立した状態の材料とは異なり、カーボンナノチューブの優れた特性を安定的に活用することができる。
このような架橋膜を構成する前記カーボンナノチューブ構造体としては、好ましい第1の構造として、官能基を有するカーボンナノチューブと、前記官能基と架橋反応を起こす架橋剤と、の硬化により、前記カーボンナノチューブが有する前記官能基と前記架橋剤とを架橋反応させて前記架橋部位が形成されてなるものが挙げられる。
前記カーボンナノチューブ構造体層を上記第1の構造とすることで、前記複数のカーボンナノチューブ同士が架橋する架橋部位は、前記官能基の架橋反応後に残存する残基同士を、前記架橋剤の架橋反応後に残存する残基である連結基で連結した架橋構造となり、前記輻射器を高効率、広帯域とすることができる。
またこの場合、前記架橋部位としては、−COO(CH22OCO−、−COOCH2CHOHCH2OCO−、−COOCH2CH(OCO−)CH2OHおよび−COOCH2CH(OCO−)CH2OCO−からなる群より選ばれるいずれかの化学構造であることが好ましい。
また、架橋膜を構成する前記カーボンナノチューブ構造体としては、好ましい第2の構造として、前記架橋部位が、複数の前記官能基同士の化学結合により形成された構造からなるものが挙げられる。
前記カーボンナノチューブ構造体層を上記第2の構造とすることで、カーボンナノチューブに結合された官能基同士を化学結合させることにより架橋部位を形成して、前記複数のカーボンナノチューブ同士を結合し、網目状の構造体を形成しているため、結合させる官能基によってカーボンナノチューブ間を結合させる架橋部位のサイズが一定となる。カーボンナノチューブは極めて安定な化学構造であるため、修飾させようとした官能基以外の官能基等が結合する可能性は低く、この官能基同士を化学結合させた場合は、架橋部位を設計した構造とすることができ、得られるカーボンナノチューブ構造体を均質なものとすることができる。
さらに、官能基同士の化学結合であることから、官能基間を架橋剤を用いて架橋した場合に比べて、カーボンナノチューブ相互間の架橋部位の長さを短くできるので、カーボンナノチューブ構造体が密となり、カーボンナノチューブ特有の効果を奏しやすくなる。
この場合の架橋部位としては、−COOCO−、−O−、−NHCO−、−COO−、−NCH−、−NH−、−S−、−O−、−NHCOO−および−S−S−からなる群より選ばれる少なくともいずれか1つの化学構造であることが好ましい。
一方、本発明のマイクロ波用アンテナの製造方法は、基体と、複数のカーボンナノチューブが架橋部位で相互に電気的に接続された網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体を含み、前記基体表面に支持された輻射器と、該輻射器に接続された給電電極と、を備えるマイクロ波用アンテナを製造するための方法であって、前記輻射器を前記基体表面に形成する方法として、
少なくとも、官能基を有する複数のカーボンナノチューブを前記基体表面に供給する供給工程と、
前記官能基間を化学結合させることにより架橋部位を形成し、前記カーボンナノチューブ構造体を形成する架橋工程と、
を含むことを特徴とする。
従来、カーボンナノチューブを寄せ集めて相互に接触させることで、カーボンナノチューブ間の相互作用の効果を狙った構造体は、樹脂などで封止するなどしなければカーボンナノチューブの集積物が飛散してしまいパターニングすることができなかった(特許文献6参照)。また、樹脂で封止する際には樹脂の供給により、パターニングをする以前にカーボンナノチューブが流動してしまうとともに、カーボンナノチューブ相互の接触部位の間に樹脂が流入した場合に接続が失われてしまい、その場合にはアンテナの輻射器として利用することができなかった。また、予め樹脂溶液中にカーボンナノチューブを分散させた分散液を塗布した場合には、カーボンナノチューブの濃度をかなり高くしない限り、カーボンナノチューブ相互の接触による接続を達成することができず、これもパターニングする以前の問題であった。
本発明のマイクロ波用アンテナの製造方法により得られるマイクロ波用アンテナにおいて、輻射器を構成するカーボンナノチューブ構造体は、複数の前記官能基間を化学結合させて架橋部位を形成するため、電気的な接続部位間に樹脂が流入することによる高抵抗化や、位置変動による抵抗変動といった不具合が起こることがないため、高性能で均質なマイクロ波用アンテナを容易に製造することができる。また、化学結合により架橋部位を形成するため、安定的に架橋構造を形成することができる。
本発明のマイクロ波用アンテナの製造方法においては、前記架橋工程に引き続いてさらに、形成されたカーボンナノチューブ構造体を、所望の形状にパターニングするパターニング工程を含むことが望ましい。当該パターニング工程を備えることで、前記カーボンナノチューブ構造体を所望の形状にパターニングすることができる。
この段階では、既に架橋工程でカーボンナノチューブ同士が架橋されカーボンナノチューブ構造体の構造自体が安定化しており、この状態でパターニングをするため、パターニング工程においてカーボンナノチューブが飛散してしまうといった不具合が生じる懸念が無く、輻射器に応じた所望の形状にパターニングすることが可能となる。また、カーボンナノチューブ構造体の膜自体が構造化しているので、確実にカーボンナノチューブ相互間の接続が確保され、カーボンナノチューブの特性を利用した、アンテナを形成することができるようになる。なお、従来のマイクロ波用アンテナであれば、その輻射周波数に応じたパターンを形成する必要があったが、本発明のマイクロ波用アンテナにおける輻射器については、特にその形状には制約がなく、所望の形状とすることができる。
ただし、利用する周波数によって所望の面積を有するように設定することが好ましい。例えば、携帯電話や無線LANへの応用を考えた場合、面積1.2cm3以上9cm3以下の方形あるいは楕円形が好ましく、さらに高周波数のETC(Electronic Toll Collection)用アンテナ等への利用を考えた場合、面積0.10cm3以上0.50cm3以下の方形あるいは楕円形であれば充分である。ただし、本発明における輻射器は、高周波域で広帯域であることが特徴であり、携帯電話や無線LAN用に作製した輻射器でも、ETC等のより高周波数の輻射器としても利用可能である。
前記パターニング工程としては、前記基体表面における所望の形状に応じたパターン以外の領域のカーボンナノチューブ構造体に、ドライエッチングを行うことで、当該領域のカーボンナノチューブ構造体を除去し、前記カーボンナノチューブ構造体を前記輻射器の形状に応じたパターンにパターニングする工程である態様を挙げることができる。
この態様としては、さらに具体的には、前記基体表面における所望の形状に応じたパターンの領域のカーボンナノチューブ構造体の上に、レジスト層(好ましくは、樹脂層)を設けるレジスト層形成工程と、
前記基体の前記カーボンナノチューブ構造体およびレジスト層が積層された面に、ドライエッチングを行う(好ましくは、酸素分子のラジカルを照射。当該酸素分子のラジカルは、酸素分子に紫外線を照射することにより、酸素ラジカルを発生させ、これを利用することができる。)ことで、前記領域以外の領域で表出しているカーボンナノチューブ構造体を除去する除去工程と、
の2つの工程に分かれている態様が挙げられる。
この場合、除去工程に引き続いてさらに、レジスト層形成工程で設けられた前記レジスト層を剥離するレジスト層剥離工程を含むことで、パターニングされたカーボンナノチューブ構造体層を表出させることができる。
また、この態様において、その他、所望の形状にパターニングする操作としては、前記基体表面における前記所望の形状に応じたパターン以外の領域のカーボンナノチューブ構造体に、ガス分子のイオンをイオンビームにより選択的に照射することで、当該領域のカーボンナノチューブ構造体を除去し、前記カーボンナノチューブ構造体を前記輻射器に応じたパターンにパターニングする態様が挙げられる。
なお、カーボンナノチューブ構造体を所望の形状にする方法としては、カーボンナノチューブ構造体を直接所望の形状に設ける手法として、前記供給工程において、前記基体表面における所望の形状に応じたパターンの領域に、スクリーン印刷法を用いて前記官能基を有するカーボンナノチューブ、および、前記官能基と架橋反応を起こす架橋剤を供給し、その後架橋工程の操作を施す手法が挙げられる。
当該手法は製造コストを下げることができる点で好ましい。
本発明のマイクロ波用アンテナの製造方法において、前記供給工程における官能基間の架橋部位を化学結合して形成するのに好ましい第1の方法は、架橋剤により複数の前記官能基間を架橋する方法である。すなわち、前記供給工程において、前記基体表面にさらに、前記官能基間を架橋する架橋剤を供給する態様が第1の方法である。
まず、基体の表面に、官能基を有するカーボンナノチューブ、および、前記官能基と架橋反応を起こす架橋剤を供給する供給工程で、基体の全面あるいはその表面の一部に、これらを供給する。そして、続く架橋工程でこれらを硬化して、前記複数のカーボンナノチューブが相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体を形成する。このようにして得られたカーボンナノチューブ構造体を輻射器として用いる。
当該第1の方法により、前記基体表面において、カーボンナノチューブ構造体の構造自体を安定化させることができる。なお、前記供給工程において、前記カーボンナノチューブ、前記架橋剤および溶剤を含む溶液(架橋溶液)を前記基体表面に供給すること、特に塗布液として塗布して架橋体膜を形成することは、本発明のマイクロ波用アンテナを薄く形成する場合に好ましい。
前記架橋剤としては、非自己重合性の架橋剤であることが好ましい。前記架橋剤の特性として、それら同士が重合反応をするような性質(自己重合性)を有すると、当該架橋剤自身が2つ以上連結した重合体を前記連結基が含む状態となってしまう可能性があり、カーボンナノチューブ構造体中に占める実質的なカーボンナノチューブの密度が低くなるため、輻射器としては、電気伝導性が十分に発揮できない場合があり、低効率となってしまう。
また、前記架橋剤として自己重合性の架橋剤を用い、架橋工程における架橋反応中あるいはそれ以前に、架橋剤同士が相互に重合反応を起こしてしまうと、架橋剤同士の結合が巨大化・長大化し、必然的にこれらに結合するカーボンナノチューブ相互の間隙自体が大きく離間してしまう。
このとき、架橋剤同士の自己重合性による反応の程度を制御することは事実上困難であるため、カーボンナノチューブ相互間の架橋構造が、架橋剤同士の重合状態のばらつきに応じて、ばらついてしまう。
しかし、非自己重合性の架橋剤を用いれば、少なくとも架橋工程ないしそれ以前に架橋剤同士が相互に重合することがなく、カーボンナノチューブ相互の間の架橋部位には、前記官能基の架橋反応後に残存する残基同士の間に、架橋剤の1つの架橋反応による残基だけが連結基として介在することとなる。この結果、得られるカーボンナノチューブ構造体は、全体として特性が均一化され、この層をパターニング工程でパターニングした場合にも、パターニング後のカーボンナノチューブ構造体の特性ばらつきを大きく低減することができる。
また、前記架橋剤同士が架橋しなければ、複数種類の非自己重合性の架橋剤を混合して、カーボンナノチューブ間を複数種類の架橋剤で架橋させても、カーボンナノチューブ間の間隔を制御することができるので、同様のばらつき低減の効果を得ることができる。一方、段階的に異なる架橋剤を用いて架橋させる場合には、最初の架橋段階で非自己重合性の架橋剤を用いて架橋すればカーボンナノチューブの網目構造の骨格はカーボンナノチューブ間の距離が制御された状態で出来上がっているため、後の架橋工程で自己重合性の架橋剤もしくは最初の架橋剤(もしくはその残基)に架橋する架橋剤を用いてもよい。
さらに、前記架橋剤が非自己重合性であれば、カーボンナノチューブ相互の間隔を、使用した架橋剤の架橋反応後の化学構造(残基と呼ぶ)の一単位のサイズに制御することができるため、所望のカーボンナノチューブのネットワーク構造を高い再現性で得られるようになる。さらに架橋剤の残基のサイズを小さくすれば、電気的にも物理的にも極めて近接した状態に、カーボンナノチューブ相互の間隔を構成することができ、また、構造体中のカーボンナノチューブを密に構造化できる。
したがって、前記架橋剤が非自己重合性であれば、本発明における前記カーボンナノチューブ構造体が、より多様な電流経路を有する網目構造となり、かつこれらの電流経路が様々な静電容量とインダクタンスとを有するため、より高効率、広帯域のアンテナとすることができる。なお、本発明において「自己重合性」とは、架橋剤同士が、水分等他の成分の存在の下、あるいは他の成分の存在なしに、相互に重合反応を生じ得る性質をいい、「非自己重合性」とは、そのような性質を有しないことを言う。
なお、前記架橋剤として非自己重合性のものを選択すれば、前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブ同士が架橋する架橋部位が、主として同一の架橋構造となる。また、前記連結基としては、炭化水素を骨格とするものが好ましく、その炭素数としては2〜10個とすることが好ましい。この炭素数を少なくすることで、架橋部位の長さが短くなり、カーボンナノチューブ相互の間隙をカーボンナノチューブ自体の長さと比較して十分に近接させることができ、実質的にカーボンナノチューブのみから構成される網目構造のカーボンナノチューブ構造体を得ることができる。このため、得られる本発明のマイクロ波用アンテナの輻射器を、放射効率に優れたものとすることができる。
前記官能基としては、−OH、−COOH、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)、−COX(Xはハロゲン原子)、−NH2および−NCOを挙げることができ、これらからなる群より選ばれる少なくともいずれか1つの基を選択することが好ましく、その場合、前記架橋剤として、選択された前記官能基と架橋反応を起こし得るものを選択する。
また、好ましい前記架橋剤としては、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸ハライド、ポリカルボジイミドおよびポリイソシアネートを挙げることができ、これらからなる群より選ばれる少なくともいずれか1つの架橋剤を選択することが好ましく、その場合、前記官能基として、選択された前記架橋剤と架橋反応を起こし得るものを選択する。
上記好ましい前記官能基として例示された群、および、上記好ましい前記架橋剤として例示された群より、それぞれ少なくともいずれか1つの官能基および架橋剤を、相互に架橋反応を起こし得る組み合わせとなるように選択することが好ましい。
前記官能基としては、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)を特に好適なものとして挙げることができる。カーボンナノチューブにカルボキシル基を導入することは、比較的容易であり、しかも得られる物質(カーボンナノチューブカルボン酸)は、反応性に富むため、その後エステル化して官能基を−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)とすることは比較的容易である。この官能基は架橋反応しやすく、架橋体形成に適している。
また、当該官能基に対応する前記架橋剤として、ポリオールを挙げることができる。ポリオールは、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)との反応により硬化し、容易に強固な架橋体を形成する。ポリオールの中でも、グリセリン、エチレングリコール、ブテンジオール、ヘキシンジオール、ヒドロキノンおよびナフタレンジオールは、上記官能基との反応性が良好であることは勿論、それ自体生分解性が高く、環境に対する負荷が小さいため、これらからなる群より選ばれる少なくともいずれか1つのポリオールを選択することが好ましい。
前記複数のカーボンナノチューブが相互に架橋する架橋部位は、前記官能基が−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)であり、前記架橋剤としてエチレングリコールを用いた場合、−COO(CH22OCO−となり、前記架橋剤としてグリセリンを用いた場合、OH基2つが架橋に寄与すれば−COOCH2CHOHCH2OCO−あるいは−COOCH2CH(OCO−)CH2OHとなり、OH基3つが架橋に寄与すれば−COOCH2CH(OCO−)CH2OCO−となる。架橋部位の化学構造は上記4つからなる群より選ばれるいずれかの化学構造であっても構わない。
本発明のマイクロ波用アンテナの製造方法において、前記第1の方法の場合には、前記供給工程で使用する前記官能基を有する複数のカーボンナノチューブおよび架橋剤を溶剤に含ませて架橋溶液とし、これを前記基体表面に供給することができ、前記架橋剤の種類によっては、当該架橋剤が、その溶剤を兼ねることも可能である。
一方、本発明のマイクロ波用アンテナの製造方法において、前記供給工程における官能基間の架橋部位を化学結合して形成するのに好ましい第2の方法は、複数の前記官能基同士を化学結合させる方法である。
この方法によれば、結合させる官能基によってカーボンナノチューブ相互間を結合させる架橋部位のサイズが一定となる。カーボンナノチューブは極めて安定な化学構造であるため、修飾させようとした官能基以外の官能基等が結合する可能性は低く、この官能基同士を化学結合させた場合は、設計した架橋部位の構造とすることができ、カーボンナノチューブ構造体を均質なものとすることができる。
さらに、官能基同士の化学結合であることから、官能基相互間を架橋剤により架橋させた場合に比べて、カーボンナノチューブ相互間の架橋部位の長さを短くできるので、カーボンナノチューブ構造体が密となり、カーボンナノチューブ特有の効果を奏しやすくなる。
官能基同士を化学結合させる反応としては、脱水縮合、置換反応、付加反応、酸化反応が特に好ましい。
なお、特に本発明のマイクロ波用アンテナの製造方法においては、上記官能基を含む分子をカーボンナノチューブに結合させて、上に列挙した官能基部分で化学結合して架橋部位を構成してもよい。
前記供給工程においては、前記官能基同士の化学結合を生じさせる添加剤をさらに前記基体表面に供給することができる。
前記官能基同士を化学結合させる反応が脱水縮合である場合には、前記添加剤として縮合剤を添加することが好ましい。このとき好適に使用可能な前記縮合剤としては、硫酸、N−エチル−N'−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドおよびジシクロヘキシルカルボジイミドからなる群より選ばれる少なくともいずれか1つを挙げることができる。
また、脱水縮合で用いる前記官能基としては、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)、−COOH、−COX(Xはハロゲン原子)、−OH、−CHO、−NH2からなる群より選ばれる少なくともいずれか1つであることが好ましい。
脱水縮合で用いる前記官能基としては、−COOHを特に好適なものとして挙げることができる。カーボンナノチューブにカルボキシル基を導入することは、比較的容易であり、しかも得られる物質(カーボンナノチューブカルボン酸)は、反応性に富む。このため網目構造を形成するための官能基を、一本のカーボンナノチューブの複数箇所に導入しやすく、さらにこの官能基は脱水縮合しやすいことから、カーボンナノチューブ構造体の形成に適している。
前記官能基同士を化学結合させる反応が置換反応である場合には、前記添加剤として塩基を添加することが好ましい。このとき好適に使用可能な塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ピリジンおよびナトリウムエトキシドからなる群より選ばれる少なくともいずれか1つを挙げることができる。また、このとき前記官能基としては、−NH2、−X(Xはハロゲン原子)、−SH、−OH、−OSO2CH3および−OSO2(C64)CH3からなる群より選ばれる少なくともいずれか1つであることが好ましい。
前記官能基同士を化学結合させる反応が付加反応である場合、前記官能基としては、−OHおよび/または−NCOであることが好ましい。
前記官能基同士を化学結合させる反応が酸化反応である場合、前記官能基としては、−SHであることが好ましい。また、この場合、必ずしも前記添加剤が要求されるわけではないが、前記添加剤として酸化反応促進剤を添加することも好ましい態様である。好適に添加することができる酸化反応促進剤としては、ヨウ素を挙げることができる。
本発明のマイクロ波用アンテナの製造方法において、前記第2の方法の場合には、前記供給工程で使用する前記官能基を有する複数のカーボンナノチューブ、および必要に応じて前記添加剤を溶剤に含ませて架橋溶液とし、これを前記基体表面に供給することができる。
本発明によれば、以上のように、カーボンナノチューブの特性を効果的に活用することにより、小型化や広帯域化等の要求に応えることができる高効率なマイクロ波用アンテナと、その製造方法とを提供することができる。
以下、本発明をマイクロ波用アンテナとその製造方法とに分けて詳細に説明する。
[マイクロ波用アンテナ]
本発明のマイクロ波用アンテナの特徴的な点は、アンテナの構成部材のうち、輻射器を、主として複数のカーボンナノチューブが相互に電気的に接続された網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体で構成することである。本発明のマイクロ波用アンテナについて、2つの実施形態を挙げて説明する。
<<第1の実施形態>>
図1に、本発明の好ましい一例である第1の実施形態のマイクロ波用アンテナ(以下、単に「アンテナ」という場合がある。)の模式断面図を示す。また図2は、図1における上方向から見た平面図である。
板状の誘電体基板(基体)10は、表面に輻射器の層(輻射器層20)が形成され、その裏面側に接地面となる金属電極(接地電極)12が配置されている。矩形状に形成された輻射器層20の一辺には、その上に被さるように給電用の金属配線(給電電極)14が設けられている。本発明の一例である本実施形態のアンテナにおいては、輻射器層20が、後で詳細に説明するカーボンナノチューブ構造体により構成されている。
このアンテナは、外部と接続可能に構成されている。図1に示されように、本実施形態においては、誘電体基板10の裏面側(接地面側)から同軸配線16を用いて外部と接続される構成となっている。誘電体基板10の接地面側から金属電極12表面まで形成されたビア24を介して、金属配線14に同軸芯線16cが接続され、はんだ22により固定されている。また、接地電極である金属電極12には、同軸シールド線16aが接続され、はんだ18により固定されている。
なお、同軸配線16において、同軸芯線16cと同軸シールド線16aとは、絶縁層16bにより絶縁されている。このように構成することで、誘電体基板10における輻射器層20が形成された側に、給電線となる同軸配線16が配置されないようにすることができ、電磁波の輻射の障害を防止することができる。ただし、マイクロストリップラインを金属電極12あるいは金属配線14に直接形成することも、勿論可能である。
本実施形態のアンテナは、輻射器として機能する輻射器層20が、複数のカーボンナノチューブが相互に電気的に接続された網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体で構成されている。したがって、網目構造に起因する複数の多角形形状と様々な大きさを持つ電流経路が生じており、かつ、これらの電流経路が様々な静電容量とインダクタンスを有する。そのため、応答可能な周波数範囲が極めて広く、輻射効率の極めて良好なアンテナとなる。
各部材についての詳細は、後述する。
<<第2の実施形態>>
図3に、本発明の好ましい他の一例である第2の実施形態のマイクロ波用アンテナの模式断面図を示す。また図4は、図3における上方向から見た平面図である。本実施形態のアンテナは、第1の実施形態のアンテナとは、輻射器層およびその周辺の構成が異なっている。その他の構成は、第1の実施形態のアンテナと同様であるため、図3および図4において、第1の実施形態と同様の機能を示す部材には、図1および図2と同一の符号を付して、その説明を割愛することとする。
本実施形態において、第1の実施形態と異なるのは、輻射器が輻射器層30および金属パターン(第2の導電体)26により構成されている点である。まず、第1の実施形態における輻射器層20が矩形なのに対して、本実施形態の輻射器層30は円形をしている。このようにアンテナの形状は、本発明において特に限定されるものではなく、既述の如く利用周波数帯域を考慮した上で、適宜設計することができる。
また、輻射器層30における金属配線(給電電極)14が設けられた部位と対向する位置に、第2の導電体としての金属パターン26が電気的に接続されている。この構造により、カーボンナノチューブ構造体から構成される輻射器層30による輻射特性と合わせて、金属パターン26による輻射特性も利用できるため、素子設計の自由度が増し、素子全体としての輻射特性の改善を図ることができる。この場合、カーボンナノチューブ構造体からなる輻射器層30としては、本来の輻射器としての機能のほか、金属パターン26と給電ライン(金属配線14等)とのインピーダンス調整器としても機能しているものと推測される。したがって、金属パターン26は、第2の輻射器として機能しているものと推測される。
各部材についての詳細は、以下にまとめて説明する。
<<各部材の構成>>
各部材の構成について、詳細に説明する。
誘電体基板(基体)10の材質としては、特に限定されるものではないが、輻射器層20を担持するには、ガラスエポキシ樹脂、ガラス、シリコン、アルミナ、サファイア、ポリカーボネート、ポリフルオレン等を利用することができる。
なお、本発明において、輻射器の層を形成するに際して、カーボンナノチューブ構造体に対してパターニングを要するときのパターニングの方法としては、基体の形状に応じて、直接基体表面でカーボンナノチューブ構造体層をパターニングすることができる場合と、パターニングされたカーボンナノチューブ構造体層を担持する基体ごと第2の基体に貼付けて利用する場合、あるいは、パターニングされたカーボンナノチューブ構造体層のみを基体に転写する場合等がある。
特に、本発明のマイクロ波用アンテナは、可撓性ないし柔軟性を有する基板を基体とした場合にも、後述する通り容易に製造することができ、しかも表面に形成された輻射器としてのカーボンナノチューブ構造体が架橋構造を有しているため、当該基体を曲げ変形しても、表面のカーボンナノチューブ構造体が破断する危険性が少なく、変形によるアンテナの特性変動が低減される。これら可撓性ないし柔軟性を有する基板の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、ポリフルオレン等の各種樹脂を挙げることができる。
接地面を構成する金属電極12および給電用の金属配線14に使用可能な材料としては、特に限定されるものではないが、導電性に優れたものが好ましく、金、銅、アルミニウム合金、クロム等を利用することができる。また、第2の実施形態において、第2の導電体として形成されている金属パターン26についても、同様の材料を使用することができる。金属電極12および金属配線14、第2の実施形態においてはさらに金属パターン26を、同じ金属を用いて形成してもよいが、それぞれ異なる金属を用いてもよい。
これら各電極等(金属電極12および金属配線14および金属パターン26)については、その形成方法に特に制限はなく、従来公知の方法を問題なく採用することができる。
次に、本発明のポイントである輻射器層20,30について説明する。
本実施形態において、輻射器層20,30は、複数のカーボンナノチューブが相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体からなる層である。ただし、本発明において、輻射器を構成するカーボンナノチューブ構造体は、必ずしも架橋構造を有していなくてもよく、複数のカーボンナノチューブが相互に電気的に接続された網目構造を構成していればよい。勿論、本実施形態のように相互に架橋した網目構造を構成するようにカーボンナノチューブ構造体であれば、カーボンナノチューブ同士が架橋した架橋部位が、物理的な接触による電気的接続に加え、化学結合による結合部位が確実に形成されるため、多くの結合部分が形成されるようになり、多様な長さ・形状のミクロの輻射器(電流経路)を内部に有するカーボンナノチューブ構造体となる。その結果、所謂カーボンナノチューブ分散膜を輻射器に用いたときのような電気抵抗の増加や変動が防止され、カーボンナノチューブに特有の性質である高い電気伝導性を有効に活用することができる。
相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体からなる層を形成する方法としては、そのような構成の層を形成することができれば、如何なる方法で形成されたものであっても構わないが、後述する本発明のマイクロ波用アンテナの製造方法により製造されたものであることが、容易に製造可能であるとともに、低コストでしかも高性能な輻射器を得ることができ、さらに、特性の均一化や制御が容易であるといった各種利点を有するため、特に好ましい。本実施形態では、かかる製造方法により形成したカーボンナノチューブ構造体により輻射器層20,30が構成されている。
以下、かかる構成のカーボンナノチューブ構造体を中心に説明する。
官能基を有する複数のカーボンナノチューブ同士を架橋させる(後に詳述する本発明のマイクロ波用アンテナの製造方法において、前記供給工程における官能基間の架橋部位を化学結合して形成する)のに好ましい第1の方法は、架橋剤により複数の前記官能基間を架橋する方法である。また、同様に第2の方法は、架橋剤によらず、複数の前記官能基同士を直接化学結合させる方法である。
<カーボンナノチューブ>
本発明において、主要な構成要素であるカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブでも、二層以上の多層カーボンナノチューブでも構わない。いずれのカーボンナノチューブを用いるか、あるいは双方を混合するかは、アンテナの用途により、あるいはコストを考慮して、適宜、選択すればよい。
また、単層カーボンナノチューブの変種であるカーボンナノホーン(一方の端部から他方の端部まで連続的に拡径しているホーン型のもの)、カーボンナノコイル(全体としてスパイラル状をしているコイル型のもの)、カーボンナノビーズ(中心にチューブを有し、これがアモルファスカーボン等からなる球状のビーズを貫通した形状のもの)、カップスタック型ナノチューブ、カーボンナノホーンやアモルファスカーボンで外周を覆われたカーボンナノチューブ等、厳密にチューブ形状をしていないものも、本発明においてカーボンナノチューブとして用いることができる。
さらに、カーボンナノチューブ中に金属等が内包されている金属内包ナノチューブ、フラーレンまたは金属内包フラーレンがカーボンナノチューブ中に内包されるピーポッドナノチューブ等、何らかの物質をカーボンナノチューブ中に内包したカーボンナノチューブも、本発明においてカーボンナノチューブとして用いることができる。
以上のように、本発明においては、一般的なカーボンナノチューブのほか、その変種や、種々の修飾が為されたカーボンナノチューブ等、いずれの形態のカーボンナノチューブでも、その反応性から見て問題なく使用することができる。したがって、本発明における「カーボンナノチューブ」には、これらのものが全て、その概念に含まれる。
これらカーボンナノチューブの合成は、従来から公知のアーク放電法、レーザーアブレーション法、CVD法のいずれの方法によっても行うことができ、本発明においては制限されない。これらのうち、高純度なカーボンナノチューブが合成できるとの観点からは、磁場中でのアーク放電法が好ましい。
用いられるカーボンナノチューブの直径としては、0.3nm以上100nm以下であることが好ましい。カーボンナノチューブの直径が、当該範囲を超えると、合成が困難であり、コストの点で好ましくない。カーボンナノチューブの直径のより好ましい上限としては、30nm以下である。
一方、一般的にカーボンナノチューブの直径の下限としては、その構造から見て、0.3nm程度であるが、あまりに細すぎると合成時の収率が低くなる点で好ましくない場合もあるため、1nm以上とすることがより好ましく、10nm以上とすることがさらに好ましい。
用いられるカーボンナノチューブの長さとしては、0.1μm以上100μm以下であることが好ましい。カーボンナノチューブの長さが、当該範囲を超えると、合成が困難、もしくは、合成に特殊な方法が必要となりコストの点で好ましくなく、当該範囲未満であると、一本のカーボンナノチューブにおける架橋結合点数が少なくなる点で好ましくない。カーボンナノチューブの長さの上限としては、10μm以下であることがより好ましく、下限としては、1μm以上であることがより好ましい。
使用しようとするカーボンナノチューブの純度が高く無い場合には、架橋溶液の調製前に、予め精製して、純度を高めておくことが望ましい。本発明においてこの純度は、高ければ高いほど好ましいが、具体的には90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。純度が低いと、不純物であるアモルファスカーボンやタール等の炭素生成物に架橋剤が架橋して、カーボンナノチューブ間の架橋距離が変動してしまい、所望の特性を得られない場合があるためである。カーボンナノチューブの精製方法に特に制限はなく、従来公知の方法をいずれも採用することができる。
かかるカーボンナノチューブには、所定の官能基が付加された状態で、カーボンナノチューブ構造体の形成に供される。このとき付加される官能基としては、カーボンナノチューブ構造体を形成するのに、既述の第1の方法によるか、第2の方法によるかにより、好ましいものが異なってくる(前者の場合を「官能基1」、後者の場合を「官能基2」とする)。
なお、カーボンナノチューブへの官能基の導入方法については、後述の(架橋溶液の調製方法)の項において説明する。
以下、第1の方法と第2の方法に分けて、カーボンナノチューブ構造体の形成に供し得る構成成分について説明する。
(第1の方法の場合)
架橋剤を用いて架橋部位を形成する前記第1の方法では、カーボンナノチューブが有する官能基としては、カーボンナノチューブに化学的に付加させることができ、かつ、何らかの架橋剤により架橋反応を起こし得るものであれば、特に制限されず、如何なる官能基であっても選択することができる。具体的な官能基としては、−COOR、−COX、−MgX、−X(以上、Xはハロゲン)、−OR、−NR12、−NCO、−NCS、−COOH、−OH、−NH2、−SH、−SO3H、−R'CHOH、−CHO、−CN、−COSH、−SR、−SiR'3(以上、R、R1、R2およびR'は、それぞれ独立に、置換または未置換の炭化水素基)等の基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらの中でも、−OH、−COOH、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)、−COX(Xはハロゲン原子)、−NH2および−NCOからなる群より選ばれる少なくとも1つの基を選択することが好ましく、その場合、前記架橋剤として、選択された前記官能基と架橋反応を起こし得るものを選択する。
特に、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)は、カルボキシル基がカーボンナノチューブへの導入が比較的容易で、それにより得られる物質(カーボンナノチューブカルボン酸)をエステル化させることで容易に官能基として導入することができ、しかも、架橋剤による反応性も良好であることから、特に好ましい。
官能基−COORにおけるRは、置換または未置換の炭化水素基であり特に制限は無いが、反応性、溶解度、粘度、塗料の溶剤としての使いやすさの観点から、炭素数が1〜10の範囲のアルキル基であることが好ましく、1〜5の範囲のアルキル基であることがより好ましく、特にメチル基またはエチル基が好ましい。
官能基の導入量としては、カーボンナノチューブの長さ・太さ、単層か多層か、官能基の種類、アンテナの用途等により異なり、一概には言えないが、1本のカーボンナノチューブに2以上の官能基が付加する程度の量とすることが、得られる架橋体の強度、すなわち架橋体膜の強度の観点から好ましい。
(架橋剤)
前記第1の方法では、架橋剤が必須成分となる。カーボンナノチューブの有する前記官能基と架橋反応を起こすものであればいずれも用いることができる。換言すれば、前記官能基の種類によって、選択し得る架橋剤の種類は、ある程度限定されてくる。また、これらの組み合わせにより、その架橋反応による硬化条件(加熱、紫外線照射、可視光照射、自然硬化等)も、自ずと定まってくる。
具体的に好ましい前記架橋剤としては、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸ハライド、ポリカルボジイミドおよびポリイソシアネートを挙げることができ、これらからなる群より選ばれる少なくとも1つの架橋剤を選択することが好ましく、その場合、前記官能基として、選択された前記架橋剤と架橋反応を起こし得るものを選択する。
特に、既述の好ましい前記官能基として例示された群、および、上記好ましい前記架橋剤として例示された群より、それぞれ少なくとも1つの官能基および架橋剤を、相互に架橋反応を起こし得る組み合わせとなるように選択することが好ましい。下記表1に、カーボンナノチューブの有する官能基と、それに対応する架橋反応可能な架橋剤との組み合わせを、その硬化条件とともに列挙する。
Figure 0004239848
これらの組み合わせの中でも、官能基側の反応性が良好な−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)と、容易に強固な架橋体を形成するポリオール、ポリアミン、アンモニウム錯体、コンゴーレッドおよびcis−プラチンとの組み合わせが好適なものとして挙げられる。なお、本発明で言う「ポリオール」、「ポリアミン」および「アンモニウム錯体」とは、OH基、NH2基およびアンモニウム基を2以上有する有機化合物の総称であり、これらの中でも炭素数2〜10(より好ましくは2〜5)、OH基数2〜22(より好ましくは2〜5)のものが、架橋性や過剰分投入した時の溶剤適性、生分解性による反応後の廃液の処理性(環境適性)、ポリオール合成の収率等の観点から好ましい。特に上記炭素数は、得られる架橋体膜におけるカーボンナノチューブ相互間を狭めて実質的な接触状態にする(近づける)ことができる点で、上記範囲内で少ない方が好ましい。具体的には、特にグリセリンやエチレングリコールが好ましく、これらの内の一方もしくは双方を架橋剤として用いることが好ましい。
別の視点から見ると、前記架橋剤としては、非自己重合性の架橋剤であることが好ましい。上記ポリオールの例として挙げたグリセリンやエチレングリコールは勿論、ブテンジオール、ヘキシンジオール、ヒドロキノンおよびナフタレンジオールも、非自己重合性の架橋剤であり、より一般的に示せば、自身の中に相互に重合反応を生じ得るような官能基の組を有していないことが、非自己重合性の架橋剤の条件となる。逆に言えば、自己重合性の架橋剤とは、自身の中に相互に重合反応を生じ得るような官能基の組を有しているもの(例えば、アルコキシド)が挙げられる。
カーボンナノチューブ構造体を形成するには、前記官能基を有する複数のカーボンナノチューブと、前記架橋剤とを既述の基体表面に供給し(本発明のマイクロ波用アンテナの製造方法における供給工程)、前記官能基間を化学結合させることにより架橋部位を形成(本発明のマイクロ波用アンテナの製造方法における架橋工程)すればよい。前記官能基を有する複数のカーボンナノチューブと、前記架橋剤とを既述の基体表面に供給する際に、これらと溶剤とを含む溶液(架橋溶液)を前記基体表面に供給すること、特に塗布液として塗布して架橋体膜を形成することは、本発明のアンテナを薄く形成する場合に好ましい。
前記架橋溶液における前記カーボンナノチューブの含有量としては、カーボンナノチューブの長さ・太さ、単層か多層か、有する官能基の種類・量、架橋剤の種類・量、溶剤やその他添加剤の有無・種類・量、等により一概には言えず、硬化後良好な架橋体膜が形成される程度に高濃度であることが望まれるが、塗布適性が低下するので、あまり高くし過ぎないことが望ましい。
また、具体的なカーボンナノチューブの割合としては、既述の如く一概には言えないが、官能基の質量は含めないで、架橋溶液全量に対し0.01〜10g/l程度の範囲から選択され、0.1〜5g/l程度の範囲が好ましく、0.5〜1.5g/l程度の範囲がより好ましい。
前記架橋溶液における前記架橋剤の含有量としては、架橋剤の種類(自己重合性か非自己重合性かの別を含む)は勿論、カーボンナノチューブの長さ・太さ、単層か多層か、有する官能基の種類・量、溶剤やその他添加剤の有無・種類・量、等により一概には言えない。特に、グリセリンやエチレングリコールなどは、それ自身粘度があまり高くなく、溶剤の特性を兼ねさせることが可能であるため、過剰に添加することも可能である。
前記架橋溶液において、溶剤は、前記架橋剤のみでは塗布適性が十分で無い場合に添加する。使用可能な溶剤としては、特に制限は無く、用いる架橋剤の種類に応じて選択すればよい。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、トルエン、ベンゼン、アセトン、クロロホルム、塩化メチレン、アセトニトリル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等の有機溶剤や水、酸水溶液、アルカリ水溶液等が挙げられる。かかる溶剤の添加量としては、塗布適性を考慮して適宜設定すればよいが、特に制限は無い。
(第2の方法の場合)
架橋剤によらず、複数の前記官能基同士を直接化学結合させて架橋部位を形成する前記第2の方法では、カーボンナノチューブが有する官能基としては、カーボンナノチューブに化学的に付加させることができ、かつ、何らかの添加剤により官能基同士を反応させ得るものであれば、特に制限されず、如何なる官能基であっても選択することができる。具体的な官能基としては、−COOR、−COX、−MgX、−X(以上、Xはハロゲン)、−OR、−NR12、−NCO、−NCS、−COOH、−OH、−NH2、−SH、−SO3H、−R'CHOH、−CHO、−CN、−COSH、−SR、−SiR'3(以上、R、R1、R2およびR'は、それぞれ独立に、置換または未置換の炭化水素基)等の基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
官能基同士を化学結合させる反応としては、脱水縮合、置換反応、付加反応、酸化反応が特に好ましい。これら各反応別に上記官能基から好ましいものを挙げると以下のようになる。縮合反応では−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)、−COOH、−COX(Xはハロゲン原子)、−OH、−CHO、−NH2から選ばれる少なくとも一つ、置換反応では−NH2、−X(Xはハロゲン原子)、−SH、−OH、−OSO2CH3および−OSO2(C64)CH3から選ばれる少なくとも一つ、付加反応では−OH、および−NCOから選ばれる少なくとも一つ、酸化反応では−SHが好ましい。
また、これらの官能基を一部に含む分子をカーボンナノチューブに結合させ、先に列挙した好ましい官能基部分で化学結合させることも可能である。この場合においても、カーボンナノチューブに結合させる分子量の大きい官能基は意図したように結合されているので、架橋部位の長さは制御可能となる。
官能基同士を化学結合させるに際しては、前記官能基同士の化学結合を生じさせる添加剤を用いることができる。かかる添加剤としてはカーボンナノチューブの有する前記官能基同士を反応させるものであればいずれも用いることができる。換言すれば、前記官能基の種類および反応の種類によって、選択し得る添加剤の種類は、ある程度限定されてくる。また、これらの組み合わせにより、その反応による硬化条件(加熱、紫外線照射、可視光照射、自然硬化等)も、自ずと定まってくる。
前記官能基同士を化学結合させる反応が脱水縮合である場合には、前記添加剤として縮合剤を添加することが好ましい。具体的に好ましい縮合剤としては、硫酸、N−エチル−N'−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドおよびジシクロヘキシルカルボジイミドを挙げることができ、これらからなる群より選ばれる少なくともいずれか1つの縮合剤を選択することが好ましい。その場合、前記官能基として、選択された縮合剤により官能基同士が反応を起こし得るものを選択する。
また、脱水縮合で用いる前記官能基としては、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)、−COOH、−COX(Xはハロゲン原子)、−OH、−CHO、−NH2からなる群より選ばれる少なくともいずれか1つであることが好ましい。
脱水縮合で用いる前記官能基としては、−COOHを特に好適なものとして挙げることができる。カーボンナノチューブにカルボキシル基を導入することは、比較的容易であり、しかも得られる物質(カーボンナノチューブカルボン酸)は、反応性に富む。このため網目構造を形成するための官能基を、一本のカーボンナノチューブの複数箇所に導入しやすく、さらにこの官能基は脱水縮合しやすいことから、カーボンナノチューブ構造体の形成に適している。脱水縮合で用いる前記官能基が−COOHである場合、特に好適な縮合剤としては、既述の硫酸、N−エチル−N'−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドおよびジシクロヘキシルカルボジイミドである。
前記官能基同士を化学結合させる反応が置換反応である場合には、前記添加剤として塩基を添加することが好ましい。添加可能な塩基としては、特に制限は無く、ヒドロキシル基の酸性度に応じて任意の塩基を選択すればよい。具体的に好ましい前記塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ピリジンおよびナトリウムエトキシド等を挙げることができ、これらからなる群より選ばれる少なくとも1つの塩基を選択することが好ましく、その場合、前記官能基として、選択された塩基により官能基同士が置換反応を起こし得るものを選択する。また、このとき前記官能基としては、−NH2、−X(Xはハロゲン原子)、−SH、−OH、−OSO2CH3および−OSO2(C64)CH3からなる群より選ばれる少なくともいずれか1つであることが好ましい。
前記官能基同士を化学結合させる反応が付加反応である場合、必ずしも添加剤は必要としない。このとき前記官能基としては、−OHおよび/または−NCOであることが好ましい。
前記官能基同士を化学結合させる反応が酸化反応である場合も、必ずしも添加剤は必要としないが、前記添加剤として酸化反応促進剤を添加することが好ましい。添加するのに好適な酸化反応促進剤としては、ヨウ素を挙げることができる。また、このとき前記官能基としては、−SHであることが好ましい。
既述の好ましい前記官能基として例示された群より、それぞれ少なくとも2つの官能基が相互に反応を起こし得る組み合わせとなるように選択して、カーボンナノチューブに付加させることが好ましい。下記表2に、相互に架橋反応をするカーボンナノチューブの有する官能基(A)および(B)と、それに対応した反応名を列挙する。
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カーボンナノチューブ構造体層を形成するには、前記官能基を有する複数のカーボンナノチューブ、および必要に応じて前記添加剤を既述の基体表面に供給し(本発明のマイクロ波用アンテナの製造方法における供給工程)、前記官能基間を化学結合させることにより架橋部位を形成(本発明のマイクロ波用アンテナの製造方法における架橋工程)すればよい。前記官能基を有する複数のカーボンナノチューブを既述の基体表面に供給する際に、これらと溶剤とを含む溶液(架橋溶液)を前記基体表面に供給すること、特に塗布液として塗布して架橋体膜を形成することは、本発明のアンテナを薄く形成する場合に好ましい。
前記架橋溶液における前記カーボンナノチューブの含有量の考え方としては、第1の方法の場合と基本的に同様である。
前記架橋塗布液における前記添加剤の含有量としては、前記添加剤の種類は勿論、カーボンナノチューブの長さ・太さ、単層か多層か、有する官能基の種類・量、溶剤やその他添加剤の有無・種類・量、等により一概には言えない。
前記架橋溶液において、溶剤は、前記架橋剤もしくは官能基結合用の添加剤のみでは塗布適性が十分で無い場合に添加する。使用可能な溶剤としては、特に制限は無く、用いる添加剤の種類に応じて選択すればよい。具体的な溶剤の種類おより添加量としては、第1の方法で述べた溶剤の場合と同様である。
(その他の添加剤)
前記架橋溶液(第1の方法と第2の方法の双方を含む)においては、粘度調整剤、分散剤、架橋促進剤等の各種その他の添加剤が含まれていてもよい。
粘度調整剤は、前記架橋剤もしくは官能基結合用の添加剤のみでは塗布適性が十分で無い場合に添加する。使用可能な粘度調整剤としては、特に制限は無く、用いる架橋剤の種類に応じて選択すればよい。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタノール、メチルエチルケトン、トルエン、ベンゼン、アセトン、クロロホルム、塩化メチレン、アセトニトリル、ジエチルエーテル、THF等が挙げられる。
これら粘度調整剤の中には、その添加量によっては溶剤としての機能を有するものがあるが、両者を明確に区別することに意義は無い。かかる粘度調整剤の添加量としては、塗布適性を考慮して適宜設定すればよいが、特に制限は無い。
分散剤は、前記架橋溶液中でのカーボンナノチューブないし架橋剤もしくは官能基結合用の前記添加剤の分散安定性を保持するために添加するものであり、従来公知の各種界面活性剤、水溶性有機溶剤、水、酸水溶液やアルカリ水溶液等が使用できる。ただし、前記架橋溶液の成分は、それ自体分散安定性が高いため、分散剤は必ずしも必要ではない。また、形成後の架橋体膜の用途によっては、架橋体膜に分散剤等の不純物が含まれないことが望まれる場合もあり、その場合には勿論、分散剤は、添加しないか、極力少ない量のみしか添加しない。
(架橋溶液の調製方法)
次に、架橋溶液の調製方法について説明する。
前記架橋溶液は、官能基を有するカーボンナノチューブに、前記官能基と架橋反応を起こす架橋剤、あるいは、官能基同士を化学結合させる添加剤を必要に応じて混合することで調製される(混合工程)。当該混合工程に先立ち、カーボンナノチューブに官能基を導入する付加工程を含んでもよい。
官能基を有するカーボンナノチューブを出発原料とすれば、混合工程の操作のみを行えばよいし、通常のカーボンナノチューブそのものを出発原料とすれば、付加工程から操作を行えばよい。
前記付加工程は、カーボンナノチューブに所望の官能基を導入する工程である。官能基の種類によって導入方法が異なり、一概には言えない。直接的に所望の官能基を付加させてもよいが、一旦、付加が容易な官能基を導入した上で、その官能基ないしその一部を置換したり、その官能基に他の官能基を付加させたり等の操作を行い、目的の官能基としても構わない。
また、カーボンナノチューブにメカノケミカルな力を与えて、カーボンナノチューブ表面のグラフェンシートをごく一部破壊ないし変性させて、そこに各種官能基を導入する方法もある。
また、製造時点から表面に欠陥を多く有する、カップスタック型のカーボンナノチューブや気相成長法により生成されるカーボンナノチューブを用いると、官能基を比較的容易に導入できる。しかし、グラフェンシート構造が完全である方が、カーボンナノチューブの特性を有効に得られるとともに、特性もコントロールしやすいため、マルチウォールカーボンナノチューブを用いて、最外層に輻射器として適度な欠陥を形成して官能基を結合し架橋させる一方で、構造欠陥の少ない内層をカーボンナノチューブの特性を発揮させる層として利用することが特に好ましい。
付加工程の操作としては、特に制限は無く、公知のあらゆる方法を用いて構わない。その他、特許文献1に各種方法が記載されており、目的に応じて、本発明においても利用することができる。
前記官能基の中でも、特に好適な−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)を導入する方法について説明する。カーボンナノチューブに−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)を導入するには、一旦、カーボンナノチューブにカルボキシル基を付加し(i)、さらにこれをエステル化(ii)すればよい。
(i)カルボキシル基の付加
カーボンナノチューブにカルボキシル基を導入するには、酸化作用を有する酸とともに還流すればよい。この操作は比較的容易であり、しかも反応性に富むカルボキシル基を付加することができるため、好ましい。当該操作について、簡単に説明する。
酸化作用を有する酸としては、濃硝酸、過酸化水素水、硫酸と硝酸の混合液、王水等が挙げられる。特に濃硝酸を用いる場合には、その濃度としては、5質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましい。
還流は、常法にて行えばよいが、その温度としては、使用する酸の沸点付近が好ましい。例えば、濃硝酸では120〜130℃の範囲が好ましい。また、還流の時間としては、30分〜20時間の範囲が好ましく、1時間〜8時間の範囲がより好ましい。
還流の後の反応液には、カルボキシル基が付加したカーボンナノチューブ(カーボンナノチューブカルボン酸)が生成しており、室温まで冷却し、必要に応じて分離操作ないし洗浄を行うことで、目的のカーボンナノチューブカルボン酸が得られる。
(ii)エステル化
得られたカーボンナノチューブカルボン酸に、アルコールを添加し脱水してエステル化することで、目的の官能基−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)を導入することができる。
前記エステル化に用いるアルコールは、上記官能基の式中におけるRに応じて決まる。すなわち、RがCH3であればメタノールであるし、RがC25であればエタノールである。
一般にエステル化には触媒が用いられるが、本発明においても従来公知の触媒、例えば、硫酸、塩酸、トルエンスルホン酸等を用いることができる。本発明では、副反応を起こさないという観点から触媒として硫酸を用いることが好ましい。
前記エステル化は、カーボンナノチューブカルボン酸に、アルコールと触媒とを添加し、適当な温度で適当な時間還流すればよい。このときの温度条件および時間条件は、触媒の種類、アルコールの種類等により異なり一概には言えないが、還流温度としては、使用するアルコールの沸点付近が好ましい。例えば、メタノールでは60〜70℃の範囲が好ましい。また、還流の時間としては、1〜20時間の範囲が好ましく、4〜6時間の範囲がより好ましい。
エステル化の後の反応液から反応物を分離し、必要に応じて洗浄することで、官能基−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)が付加したカーボンナノチューブを得ることができる。
前記混合工程は、官能基を有するカーボンナノチューブに、前記官能基と架橋反応を起こす架橋剤あるいは官能基結合用の前記添加剤、さらには溶剤を必要に応じて混合し、架橋溶液を調製する工程である。混合工程においては、これらの成分のほか、(その他の添加剤)の項で説明したその他の添加剤も、必要に応じて混合する。そして、好ましくは、塗布適性を考慮して溶剤や粘度調整剤の添加量を調整することで、供給(塗布)直前の架橋溶液を調製する。
混合に際しては、単にスパチュラで攪拌したり、攪拌羽式の攪拌機、マグネチックスターラーあるいは攪拌ポンプで攪拌するのみでも構わないが、より均一にカーボンナノチューブを分散させて、保存安定性を高めたり、カーボンナノチューブの架橋による網目構造を全体にくまなく張り巡らせるには、超音波分散機やホモジナイザーなどで強力に分散させても構わない。ただし、ホモジナイザーなどのように、攪拌のせん断力の強い攪拌装置を用いる場合、含まれるカーボンナノチューブを切断してしまったり、傷付けてしまったりする虞があるので、極短い時間行えばよい。
以上説明した架橋溶液を、前記基体の表面に対して塗布し、硬化することにより、カーボンナノチューブ構造体の層が形成される。塗布方法や硬化方法は、後述の[マイクロ波用アンテナの製造方法]の項で詳述する。
本発明において好ましい複数のカーボンナノチューブが相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体は、カーボンナノチューブがネットワーク化された状態となっている。詳しくは、該カーボンナノチューブ構造体は、マトリックス状に硬化したものとなり、カーボンナノチューブ同士が架橋部分を介して接続しており、電子やホールの高い伝送特性といったカーボンナノチューブ自身が有する特徴を存分に発揮することができる。すなわち、当該カーボンナノチューブ構造体は、カーボンナノチューブ相互が緊密に接続しており、しかも他の結着剤等を含まないことから、実質的にカーボンナノチューブのみからなるため、カーボンナノチューブが有する本来の特性が最大限に生かされる。
本発明において、カーボンナノチューブ構造体を層状に設ける場合、かかる層の厚みとしては、用途に応じて、極薄いものから厚めのものまで、幅広く選択することができる。使用する前記架橋溶液中のカーボンナノチューブの含有量を下げ(単純には、薄めることにより粘度を下げ)、これを薄膜状に塗布すれば極薄い架橋体膜となり、同様にカーボンナノチューブの含有量を上げれば厚めの架橋体膜となる。さらに、塗布を繰返せば、より一層厚膜の架橋体膜を得ることもできる。極薄い架橋体膜としては、10nm程度の厚みから十分に可能であり、重ね塗りにより上限無く厚い架橋体膜を形成することが可能である。一回の塗布で可能な厚膜としては、5μm程度である。また、含有量などを調整した架橋溶液を型に注入し、架橋させることで所望の形状にすることも可能である。
前記第1の方法により前記カーボンナノチューブ構造体を形成しようとする場合には、前記カーボンナノチューブ同士が架橋する部位、すなわち、前記カーボンナノチューブが有する前記官能基と前記架橋剤との架橋反応による架橋部位は、前記官能基の架橋反応後に残存する残基同士を、前記架橋剤の架橋反応後に残存する残基である連結基で連結した架橋構造となっている。
既述の如く、この場合の前記架橋溶液においては、その構成要素である架橋剤が非自己重合性であることが好ましい。前記架橋剤が非自己重合性であれば、最終的に形成されるカーボンナノチューブ構造体における前記連結基については、前記架橋剤1つのみの残基により構成されることになり、架橋されるカーボンナノチューブ相互の間隔を、使用した架橋剤の残基のサイズに制御することができるため、所望のカーボンナノチューブのネットワーク構造を高い再現性で得られるようになる。また、カーボンナノチューブ間に架橋剤が多重に介在しないので、カーボンナノチューブ構造体中のカーボンナノチューブの実質的な密度を高めることができる。さらに架橋剤の残基のサイズを小さくすれば、電気的にも物理的にも極めて近接した状態(カーボンナノチューブ相互が、実質的に直接接触した状態)に、カーボンナノチューブ相互の間隔を構成することができる。
なお、カーボンナノチューブにおける官能基に単一のものを、架橋剤に単一の非自己重合性のものを、それぞれ選択した架橋溶液により、カーボンナノチューブ構造体を形成した場合、当該層における前記架橋部位は、同一の架橋構造となる(例示1)。また、カーボンナノチューブにおける官能基に複数種のものを、および/または、架橋剤に複数種の非自己重合性の架橋剤を、それぞれ選択した架橋溶液により、カーボンナノチューブ構造体層を形成した場合であっても、当該層における前記架橋部位は、主として用いた前記官能基および非自己重合性の架橋剤の組み合わせによる架橋構造が、主体的となる(例示2)。
これに対して、カーボンナノチューブにおける官能基や架橋剤が単一であるか複数種であるかを問わず、架橋剤に自己重合性のものを選択した架橋溶液により、カーボンナノチューブ構造体を形成した場合、当該カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブ同士が架橋する架橋部位は、架橋剤同士の連結(重合)個数が異なる数多くの連結基が混在した状態となり、特定の架橋構造が主体的とはなり得ない。
つまり、前記架橋剤として非自己重合性のものを選択すれば、カーボンナノチューブ構造体層におけるカーボンナノチューブ同士が架橋する架橋部位が、架橋剤1つのみの残基で官能基と結合するため、主として同一の架橋構造となる。なお、ここで言う「主として同一」とは、上記(例示1)の如く、架橋部位の全てが同一の架橋構造となる場合は勿論のこと、上記(例示2)の如く、架橋部位全体に対して、主として用いた前記官能基および非自己重合性の架橋剤の組み合わせによる架橋構造が、主体的となる場合も含む概念とする。
「主として同一」と言った場合に、全架橋部位における「同一である架橋部位の割合」としては、例えば架橋部位において、カーボンナノチューブのネットワーク形成とは目的を異にする機能性の官能基や架橋構造を付与する場合も想定されることから、一律に下限値を規定し得るわけではない。ただし、強固なネットワークでカーボンナノチューブ特有の高い電気的ないし物理的特性を実現するためには、全架橋部位における「同一である架橋部位の割合」としては、個数基準で50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、全て同一であることが最も好ましい。これらの個数割合は、赤外線スペクトルで架橋構造に対応した吸収スペクトルの強度比を計測する方法等により求めることができる。
このように、カーボンナノチューブ同士が架橋する架橋部位が、主として同一の架橋構造のカーボンナノチューブ構造体であれば、カーボンナノチューブの均一なネットワークを所望の状態に形成することができ、電気的ないし物理的特性を、均質で良好、さらには期待した特性もしくは高い再現性をもって構成することができる。
また、前記連結基としては、炭化水素を骨格とするものが好ましい。ここで言う「炭化水素を骨格」とは、架橋されるカーボンナノチューブの官能基の架橋反応後に残存する残基同士を連結するのに資する、連結基の主鎖の部分が、炭化水素からなるものであることを言い、この部分の水素が他の置換基に置換された場合の側鎖の部分は考慮されない。勿論、連結基全体が炭化水素からなることが、より好ましい。
前記炭化水素の炭素数としては2〜10個とすることが好ましく、2〜5個とすることがより好ましく、2〜3個とすることがさらに好ましい。なお、前記連結基としては、2価以上であれば特に制限は無い。
カーボンナノチューブの有する官能基と架橋剤との好ましい組み合わせとして既に例示した、前記官能基−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)とエチレングリコールとの架橋反応では、前記複数のカーボンナノチューブが相互に架橋する架橋部位が−COO(CH22OCO−となる。
また、前記官能基−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)とグリセリンとの架橋反応では、前記複数のカーボンナノチューブが相互に架橋する架橋部位が、OH基2つが架橋に寄与すれば−COOCH2CHOHCH2OCO−あるいは−COOCH2CH(OCO−)CH2OHとなり、OH基3つが架橋に寄与すれば−COOCH2CH(OCO−)CH2OCO−となる。
以上説明したように、第1の方法によりカーボンナノチューブ構造体を形成する場合の本発明のマイクロ波用アンテナは、カーボンナノチューブ構造体が、複数のカーボンナノチューブが複数の架橋部位を介して網目構造の状態となった状態で形成されているので、単なるカーボンナノチューブの分散膜のように、カーボンナノチューブ同士の接触状態並びに配置状態が不安定になることがなく、電子やホールの高い伝送特性といった電気的特性や、熱伝導、強靭性といった物理的特性、その他光吸収特性等カーボンナノチューブに特有の性質を安定して発揮することができる。
一方、前記第2の方法により前記カーボンナノチューブ構造体を形成しようとする場合には、前記複数のカーボンナノチューブ同士が架橋する部位、すなわち、前記複数のカーボンナノチューブが有するそれぞれの前記官能基同士の架橋反応による架橋部位は、前記官能基の架橋反応後に残存する残基同士が連結した架橋構造となっている。この場合も、カーボンナノチューブ構造体は、マトリックス状にカーボンナノチューブ同士が架橋部分を介して接続しており、電子やホールの高い伝送特性といったカーボンナノチューブ自身が有する特徴を発揮しやすくできる。すなわち、当該カーボンナノチューブ構造体は、カーボンナノチューブ相互が緊密に接続しており、しかも他の結着剤等を含まないことから、実質的にカーボンナノチューブのみから構成されたものであると言うことができる。
また官能基同士を直接反応させて架橋部位を形成しているため、カーボンナノチューブ構造体中のカーボンナノチューブの実質的な密度を高めることができ、さらに官能基のサイズを小さくすれば、電気的にも物理的にも極めて近接した状態に、カーボンナノチューブ相互の間隔を構成することができ、カーボンナノチューブ単体の特性をより引き出しやすくなる。
また、架橋部位が官能基同士の化学結合であるため、構造体が主として同一の架橋構造となるので、カーボンナノチューブの均一なネットワークを所望の状態に形成することができ、電気的ないし物理的特性を、均質で良好、さらには期待した特性もしくは高い再現性をもって構成することができる。
さらに、輻射器(輻射器層20,30)全体のパターン自体は補完的なものとなるため、第1の方法や第2の方法等その形成方法によらず、形成されるカーボンナノチューブ構造体のパターンの自由度が高く、輻射器として多様な形状とすることができる。
本発明のマイクロ波用アンテナは、輻射器として用いられる前記カーボンナノチューブ構造体の層以外の他の層が形成されていてもよい。例えば、前記基体表面と前記カーボンナノチューブ構造体からなる輻射器層との間に、両者の接着性を向上させるための接着層を設けることは、パターニングされたカーボンナノチューブ構造体からなる輻射器層の接着強度を高めることができ、好ましい。接着層の形成方法やその他詳細は、[マイクロ波用アンテナの製造方法]の項にて説明することとする。
また、パターニングされたカーボンナノチューブ構造体からなる輻射器層の上層として、保護層やその他の各種機能層を設けることもできる。前記カーボンナノチューブ構造体からなる輻射器層の上層として、保護層を設けることにより、架橋したカーボンナノチューブのネットワークであるカーボンナノチューブ構造体をより強固に基体表面に保持し、外力から保護することができる。この保護層には、[マイクロ波用アンテナの製造方法]の項にて説明するレジスト層を、そのまま除去せずに残して、利用することもできる。勿論、前記輻射器に応じたパターン以外の領域も含めて全面をカバーする保護層を新たに設けることも有効である。かかる保護層を構成する材料としては、従来公知の各種樹脂材料や無機材料を問題なく、目的に応じて用いることができる。
また、既述の通り、前記基体を可撓性ないし柔軟性を有する基板とすることもできる。前記基体を可撓性ないし柔軟性を有する基板とすることで、輻射器全体としてのフレキシビリティーが向上し、設置場所等の使用環境の自由度が格段に広がる。さらに、このような可撓性ないし柔軟性を有する基板を用いたアンテナを用いて装置を構成する場合には、装置における多様な配置や形状に適応しつつ、アンテナの輻射器として、省スペース化の点で高い性能を発揮させることが可能となる。
以上説明した本発明のマイクロ波用アンテナについて、その具体的な形状等は、次の[マイクロ波用アンテナの製造方法]の項や実施例の項で例示をもって明らかにする。勿論、後述する構成はあくまでも例示であり、本発明のマイクロ波用アンテナの具体的な態様は、これらに限定されるものではない。
[マイクロ波用アンテナの製造方法]
本発明のマイクロ波用アンテナの製造方法(以下、単に「本発明の製造方法」という場合がある。)は、上記本発明のマイクロ波用アンテナを製造するのに適した方法である。具体的には、基体と、複数のカーボンナノチューブが架橋部位で相互に電気的に接続された網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体を含み、前記基体表面に支持された輻射器と、該輻射器に接続された給電電極と、を備えるマイクロ波用アンテナを製造するための方法であって、前記輻射器を前記基体表面に形成する方法として、(A)少なくとも、官能基を有する複数のカーボンナノチューブを前記基体表面に供給する供給工程と、(B)前記官能基間を化学結合させることにより架橋部位を形成し、前記カーボンナノチューブ構造体を形成する架橋工程と、を含む。
前記架橋工程に引き続いてさらに、(C)形成されたカーボンナノチューブ構造体を、所望の形状にパターニングするパターニング工程等、他の工程を含めてもよい。
以下、これら各工程に分けて、本発明の製造方法における、前記輻射器を前記基体表面に形成する方法の詳細について図5を用いて説明する。
ここで図5は、本発明の製造方法における、前記輻射器を前記基体表面に形成する方法の一例(後述する(C−A−2))を説明するための、製造工程中の基体の模式断面図である。図中、112は平板状の基体、114はカーボンナノチューブ構造体層、116はレジスト層である。
(A)供給工程
本発明において、「供給工程」とは、前記基体の表面に、少なくとも、官能基を有する複数のカーボンナノチューブを前記基体表面に供給する工程である。既述の架橋溶液を用いて行えばよく、薄膜状の輻射器を形成したい場合には、それを前記基体表面に塗布すればよい。
なお、供給工程で前記架橋溶液を供給すべき領域は、前記輻射器を形成すべき領域を全て含んでさえいればよく、前記基体の表面の全面に供給しなければならないわけではない。
また、供給は、前記架橋溶液を前記基体の表面における所望の領域に、配置ないし接液できる方法であれば、各種方法を採用する事ができるが、塗布する事が最も容易で、かつ精密であり、しかも薄膜のカーボンナノチューブ構造体を形成できるので、最も好ましい。
当該塗布方法に制限はなく、単に液滴を垂らしたり、それをスキージで塗り広げたりする方法から、一般的な塗布方法まで、幅広くいずれの方法も採用することができる。一般的な塗布方法としては、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、キャストコート法、ロールコート法、刷毛塗り法、浸漬塗布法、スプレー塗布法、カーテンコート法等が挙げられる。
なお、基体、官能基を有するカーボンナノチューブ、架橋剤、添加剤並びに架橋溶液の内容については、[マイクロ波用アンテナ]の項で説明した通りである。
(B)架橋工程
本発明において、「架橋工程」とは、供給後の前記カーボンナノチューブにおける前記官能基間を化学結合させることにより架橋部位を形成し、前記カーボンナノチューブ構造体を形成する工程である。供給工程が架橋溶液を塗布する構成の場合には、塗布後の前記架橋溶液を硬化して、前記複数のカーボンナノチューブが相互に架橋した網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体を形成する工程である。なお、架橋工程で、カーボンナノチューブ構造体を形成すべき領域は、前記所望の領域(アンテナの輻射体を形成すべき領域)を全て含んでさえいればよく、前記基体の表面に塗布された前記架橋溶液を全て硬化しなければならないわけではない。図5(a)に、当該(B)架橋工程を経た後の基体表面の状態を表す模式断面図を示す。図5(a)においては、基体112の表面にカーボンナノチューブ構造体114が形成された状態が示されている。
架橋工程における操作は、前記官能基と前記架橋剤との組み合わせに応じて、自ずと決まってくる。例えば、前掲の表1に示す通りである。熱硬化性の組み合わせであれば、各種ヒータ等により加熱すればよいし、紫外線硬化性の組み合わせであれば、紫外線ランプで照射したり、日光下に放置しておけばよい。勿論、自然硬化性の組み合わせであれば、そのまま放置しておけば十分であり、この「放置」も本発明における架橋工程で行われ得るひとつの操作と解される。
官能基−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)が付加したカーボンナノチューブと、ポリオール(中でもグリセリンおよび/またはエチレングリコール)との組み合わせの場合には、加熱による硬化(エステル交換反応によるポリエステル化)が行われる。加熱により、エステル化したカーボンナノチューブカルボン酸の−COORと、ポリオールのR'−OH(R'は、置換または未置換の炭化水素基)とがエステル交換反応する。そして、かかる反応が複数多元的に進行し、カーボンナノチューブが架橋していき、最終的にカーボンナノチューブが相互に接続してネットワーク状となったカーボンナノチューブ構造体114が形成される。
上記の組み合わせの場合に好ましい条件について例示すると、加熱温度としては、具体的には50〜500℃の範囲が好ましく、120〜200℃の範囲がより好ましい。また、この組み合わせにおける加熱時間としては、具体的には1分〜10時間の範囲が好ましく、1〜2時間の範囲がより好ましい。
(C)パターニング工程
本発明において、「パターニング工程」とは、前記カーボンナノチューブ構造体を所望の形状にパターニングする工程である。ただし、ここでは、従来の輻射器における輻射波長や偏向に応じた形状へのパターニングは不要である。従って、必須な工程ではない。図1(e)に、当該(C)パターニング工程を経た後の基体表面の状態を表す模式断面図を示す。
パターニング工程の操作に特に制限はないが、好適なものとして、以下(C−A)および(C−B)の2つの態様を挙げることができる。
(C−A)
前記基体表面における前記輻射器に応じたパターン以外の領域のカーボンナノチューブ構造体に、ドライエッチングを行うことで、当該領域のカーボンナノチューブ構造体層を除去し、前記カーボンナノチューブ構造体を前記輻射器に応じたパターンにパターニングする工程である態様。
ドライエッチングを行うことで、前記輻射器に応じたパターンにパターニングするということは、結局は、前記基体表面における前記パターン以外の領域の前記カーボンナノチューブ構造体に、ラジカル等を照射することを意味する。そして、その手法としては、直接前記パターン以外の領域の前記カーボンナノチューブ構造体にラジカル等を照射する方式(C−A−1)と、前記パターン以外の領域をレジスト層で被覆した上で、前記基体表面(勿論、前記カーボンナノチューブ構造体およびレジスト層が形成された側)の全面にラジカル等を照射する方式(C−A−2)が挙げられる。
(C−A−1)
直接前記パターン以外の領域の前記カーボンナノチューブ構造体にラジカル等を照射する方式とは、詳しくは、本パターニング工程が、前記基体表面における前記輻射器に応じたパターン以外の領域のカーボンナノチューブ構造体に、ガス分子のイオンをイオンビームにより選択的に照射することで、当該領域のカーボンナノチューブ構造体を除去し、前記カーボンナノチューブ構造体を前記輻射器に応じたパターンにパターニングする態様である。
イオンビームによれば、数nmオーダー程度の緻密さで、選択的にガス分子のイオンを照射することができ、輻射器に応じたパターンのパターニングが一度の操作で容易にできる点で好ましい。
選択可能なガス種としては、酸素、アルゴン、窒素、二酸化炭素、六フッ化硫黄等が挙げられるが、本発明においては特に酸素が好ましい。
イオンビームとは、真空中ガス分子に電圧をかけることで加速させイオン化し、ビームとして照射する方式であり、エッチングの対象とする物質および照射精度は、使用するガスの種類により変更することができる。
(C−A−2)
前記パターン以外の領域をレジスト層で被覆した上で、前記基体表面の全面にラジカル等を照射する方式とは、詳しくは、本パターニング工程が、
前記基体表面における前記輻射器に応じたパターンの領域のカーボンナノチューブ構造体の上に、レジスト層を設けるレジスト層形成工程(C−A−2−1)と、
前記基体の前記カーボンナノチューブ構造体およびレジスト層が積層された面に、ドライエッチングを行うことで、前記領域以外の領域で表出しているカーボンナノチューブ構造体を除去する除去工程(C−A−2−2)と、を含む態様であり、除去工程に引き続いてさらに、
レジスト層形成工程で設けられた前記レジスト層を剥離するレジスト層剥離工程(C−A−2−3)を含む場合もある。
(C−A−2−1)レジスト層形成工程
レジスト層形成工程では、前記基体表面における前記輻射器に応じたパターンの領域のカーボンナノチューブ構造体の上に、レジスト層を設ける。当該工程は、一般にフォトリソグラフィープロセスと称されるプロセスに従って為されるものであり、前記輻射器に応じたパターンの領域のカーボンナノチューブ構造体の上に直接レジスト層を設けるのではなく、図5(b)に示されるように一旦基体112のカーボンナノチューブ構造体114が形成された表面全面にレジスト層116を形成し、前記輻射器に応じたパターンの領域を露光して、その後、現像することで露光部以外の部位が除去され、最終的に前記輻射器に応じたパターンの領域のカーボンナノチューブ構造体の上にレジスト層が設けられた状態となる。
図5(c)に、当該(C−A−2−1)レジスト層形成工程を経た後の基体表面の状態を表す模式断面図を示す。なお、レジストの種類によっては、露光部以外が現像により除去され、非露光部が残存する構成の場合もある。
レジスト層の形成方法は、従来公知の方法で行えばよい。具体的には、レジスト剤を基板上にスピンコーター等を使用して塗布し、加熱することでレジスト層を形成させる。
レジスト層116の形成に用いる材料(レジスト剤)としては、特に制限されず、従来よりレジストの材料として用いられている各種材料をそのまま用いることができる。中でも樹脂により形成する(樹脂層とする)ことが好ましい。カーボンナノチューブ構造体114は、網目状にネットワークが形成されており、多孔性の構造体であるため、例えば金属蒸着膜のようにごく表面にのみ膜が形成され孔内部まで十分に浸透しない材料によりレジスト層116を形成すると、プラズマ等を照射した際にカーボンナノチューブが十分に封止された状態(プラズマ等に晒されない状態)にできない。そのため、プラズマ等が孔部を通過してレジスト層116の下層のカーボンナノチューブ構造体114まで侵食し、プラズマ等の回り込みにより残留するカーボンナノチューブ構造体114の外形が小さくなってしまう場合がある。この小形化を加味して、レジスト層116の外形(面積)を、前記輻射器に応じたパターンに比して十分に大きくする手法も考えられるが、この場合はパターン同士の間隔を広くとらざるをえず、密にパターンを形成できなくなる。
これに対して、レジスト層116の材料として樹脂を用いることで、当該樹脂を孔内部まで浸透させることができ、プラズマ等に晒されるカーボンナノチューブを減少させることができ、結果としてカーボンナノチューブ構造体114の高密度なパターニングが可能となる。
当該樹脂層を主として構成する樹脂材料としては、ノボラック樹脂、ポリメチルメタクリレート、およびこれらの樹脂の混合物等を挙げることができるが、勿論これらに限定されるものではない。
レジスト層を形成するためのレジスト材料は、上記樹脂材料あるいはその前駆体と感光材料等の混合物であり、本発明では従来公知のあらゆるレジスト材料を使用しても差し支えない。例えば、東京応化工業製OFPR800、長瀬産業製NPR9710等を例示することができる。
レジスト層116への露光(レジスト材料が熱硬化性の場合には加熱。その他レジスト材料の種類により適宜選択。)および現像の操作ないし条件(例えば、光源波長、露光強度、露光時間、露光量、露光時の環境条件、現像方法、現像液の種類・濃度、現像時間、現像温度、前処理や後処理の内容等)は、使用するレジスト材料に応じて、適宜選択する。市販されているレジスト材料を用いたのであれば、当該レジスト材料の取扱説明書の方法に従えばよい。一般的には、取り扱いの便宜から、紫外光を用いて前記輻射器に応じたパターン様に露光し、アルカリ現像液により現像する。そして水洗で現像液を洗い流し、乾燥してフォトリソグラフィープロセスが完了する。
(C−A−2−2)除去工程
除去工程では、前記基体の前記カーボンナノチューブ構造体層およびレジスト層が積層された面に、ドライエッチングを行うことで、前記領域以外の領域で表出している(図5(c)を参照。カーボンナノチューブ構造体114は、レジスト層116が除去された部分から表出している。)カーボンナノチューブ構造体を除去する。図5(d)に、当該(C−A−2−2)除去工程を経た後の基体表面の状態を表す模式断面図を示す。
除去工程の操作は、一般にドライエッチングと称される方法全般を含み、方式としては、リアクティブイオン方式などがある。既述の(C−A−1)のイオンビームを用いる方式もドライエッチングに含まれる。
選択可能なガス種やその他装置および操作環境等は(C−A−1)の項で述べた通りである。
ドライエッチングで一般的に選択可能なガス種としては、酸素、アルゴン、フッ素系ガス(フロン、SF6、CF4等)等が挙げられるが、本発明においては特に酸素が好ましい。酸素ラジカルを用いると、除去するカーボンナノチューブ構造体114のカーボンナノチューブを酸化させ(燃焼させ)、二酸化炭素化することができ、残存物の発生による影響がなく、また正確なパターニングをすることが可能となる。
ガス種として酸素を選択する場合には、酸素分子に紫外線を照射することにより、酸素ラジカルを発生させ、これを利用することができる。この方式で酸素ラジカルを生ずる装置が、UVアッシャーとの商品名で市販されており、容易に入手することができる。
(C−A−2−3)レジスト層剥離工程
本発明のマイクロ波用アンテナの製造方法は、以上の(C−A−2−2)除去工程までの操作が完了した段階で終了とすることもでき、それでも本発明のマイクロ波用アンテナの一態様(図1(d)に示される態様)のものを得ることができる。しかし、レジスト層116を除去したい場合には、上記除去工程に引き続いてさらに、レジスト層形成工程で設けられたレジスト層116を剥離するレジスト層剥離工程の操作を施すことが必要となる。図5(e)に、当該(C−A−2−3)レジスト層剥離工程を経た後の基体表面の状態を表す模式断面図を示す。
レジスト層剥離工程の操作は、レジスト層116の形成に用いた材料に応じて選択すればよい。市販されているレジスト材料を用いたのであれば、当該レジスト材料の取扱説明書の方法に従えばよい。レジスト層116が樹脂層である場合には、一般的には、当該樹脂層を溶解し得る有機溶剤に接液することにより除去する。
(C−B)
前記基体表面における前記輻射器に応じたパターンの領域のカーボンナノチューブ構造体層の上に、レジスト層を設けるレジスト層形成工程と、
前記基体の前記カーボンナノチューブ構造体層およびレジスト層が積層された面に、エッチング液を接液させることで、前記領域以外の領域で表出しているカーボンナノチューブ構造体層を除去する除去工程と、を含む工程である態様。
この態様は、一般的にウェットエッチング(薬液=エッチング液を使用して任意の部分を取り除く方法)と称される方法である。
レジスト層形成工程の詳細については、エッチング液に耐性を有するレジスト材料を用いることが望まれること以外は、既述の(C−A−2−1)レジスト層形成工程と同様である。除去工程に引き続いてレジスト層剥離工程の操作を施しても構わないこと、およびその詳細については、(C−A−2−3)レジスト層剥離工程に記載された内容と同様である。そのため、これらについては、その詳細な説明は割愛する。
図5(c)を参照して説明すれば、除去工程においては、基体112のカーボンナノチューブ構造体114およびレジスト層116が積層された面に、エッチング液を接液させることで、前記領域以外の領域で表出しているカーボンナノチューブ構造体114を除去する。
ここで、本発明において「接液」とは、対象物を液体に接触させる行為全てを含む概念であり、浸漬、スプレー、流し掛け等、いずれの方法で液体に対象物を接触させても構わない。
エッチング液は、一般に酸あるいはアルカリであり、どのような種類のエッチング液を選択すればよいかは、レジスト層116を構成するレジスト材料やカーボンナノチューブ構造体114におけるカーボンナノチューブ相互間の架橋構造等により決まってくる。できる限りレジスト層116を侵しにくく、カーボンナノチューブ構造体114を除去しやすい材料を選択することが望ましい。
ただし、エッチング液の温度や濃度、および接液時間を適切に制御することで、レジスト層116が完全に消滅してしまう前に、元々表出しているカーボンナノチューブ構造体114を除去することが可能であれば、レジスト層116を侵してしまうような種類のエッチング液を選択しても構わない。
(D)その他の工程
以上の各工程を経ることで、本発明のマイクロ波用アンテナを製造することができるが、本発明のマイクロ波用アンテナの製造方法においては、その他の工程を含めることもできる。
例えば、前記供給工程(特に、塗布による場合)に先立ち、前記基体の表面を予め処理する表面処理工程を設けるのも好適である。表面処理工程は、例えば、供給(塗布)される架橋溶液の吸着性を高めるため、上層として形成されるカーボンナノチューブ構造体と基体表面との接着性を高めるため、基体表面を清浄化するため、基体表面の電気伝導度を調整するため、等の目的で行われる。
架橋溶液の吸着性を高める目的で行われる表面処理工程としては、例えば、シランカップリング剤(例えば、アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン等)による処理が挙げられる。中でもアミノプロピルトリエトキシシランによる表面処理は、広く行われており、本発明における表面処理工程でも好適である。アミノプロピルトリエトキシシランによる表面処理は、例えば、Y.L.Lyubchenko et al.,Nucleic Acids Research,1993,vol.21,p.1117−1123等の文献に見られるように、従来よりDNAのAFM観察において基板に使うマイカの表面処理に用いられている。
カーボンナノチューブ構造体の層自体を2層以上積層する場合には、上記本発明のマイクロ波用アンテナの製造方法による操作を、2回以上繰り返せばよい。
また、保護層や電極層等その他の層を別途積層する場合には、これらの層を形成するための工程が必要となる。これら各層は、その目的に応じた材料・方法を従来公知の方法から選択して、あるいは、本発明のために新たに開発した物ないし方法により、適宜形成すればよい。
<本発明のマイクロ波用アンテナの製造方法の応用例>
本発明のマイクロ波用アンテナの製造方法の有用な応用例として、輻射器を基体表面に形成するに際して、仮基板の表面に一旦カーボンナノチューブ構造体をパターニングした後、所望とする基体に転写(転写工程)する方法がある。また、当該転写工程において、当該仮基板から中間転写体表面にパターニングされたカーボンナノチューブ構造体を一旦転写し、さらに所望とする基体(第2の基体)に転写する構成としても構わない。
当該応用例において使用可能な仮基板としては、[マイクロ波用アンテナ]の項で説明した基体と同様の材質のものが使用可能であり、好ましいものである。ただし、転写工程における転写適性を考慮すると、少なくとも1つの平面を有することが望まれ、平板状であることがより好ましい。
当該応用例において使用可能な基体あるいは中間転写体としては、粘着剤を保持した粘着面、あるいは保持し得る面を有することが必要であり、セロファンテープ、紙テープ、布テープ、イミドテープのような一般的なテープは勿論使用可能である。また、これらテープのような可撓性ないし柔軟性を有する材料以外の硬質の材料からなるものであっても構わない。粘着剤を保持していない材料の場合には、保持し得る面に粘着剤を塗りつけた上で、これを粘着面として、通常のテープと同様に使用することができる。
当該応用例によれば、本発明のマイクロ波用アンテナを容易に製造することができる。
なお、基体の表面にカーボンナノチューブ構造体が担持された状態のものを用意し、デバイスを構成する所望の第2の基体(例えば筐体)の表面に基体ごと貼付けて、アンテナを製造することもできる。
あるいは、仮基板(もしくは中間転写体)の表面にカーボンナノチューブ構造体が担持されたカーボンナノチューブ転写体を用いて、アンテナを構成する基体の表面に前記カーボンナノチューブ構造体だけを転写し、仮基板(もしくは中間転写体)を除去するようにすれば、利用者は架橋工程を省略しても、アンテナの輻射器を作製できるようになる。なお、ここではプロセス上中間転写体がカーボンナノチューブ転写体の仮基板となる場合があるが、カーボンナノチューブ転写体自体としては区別する必要はないので、この場合も含むものとする。
カーボンナノチューブ転写体を用いると、仮基板の表面に架橋された状態でカーボンナノチューブ構造体が担持されているため、その後の取り扱いが極めて簡便になり、アンテナの製造は極めて容易に行うことができるようになる。仮基板の除去方法は、単純な剥離、化学的に分解、焼失、溶融、昇華、溶解させる等適宜選択できる。
当該応用例のマイクロ波用アンテナの製造方法における、前記輻射器を前記基体表面に形成する方法では、供給工程、架橋工程およびパターニング工程の操作は、塗布や硬化、パターニング等の対象が基体から仮基板に代わることを除き、既述のマイクロ波用アンテナの製造方法と同様の操作である。異なるのは、パターニング工程に引き続き、転写工程の操作が行われる点である。以下、転写工程について、図6を用いて説明する。
ここで図6は、本応用例のマイクロ波用アンテナの製造方法における、前記輻射器を前記基体表面に形成する方法の一例を説明するための、製造工程中の仮基板および基体の模式断面図である。図中、122は仮基板、124はカーボンナノチューブ構造体、128は基体である。なお、カーボンナノチューブ構造体124は、図5におけるカーボンナノチューブ構造体114と同様の構成である。
まず、既述の供給工程、架橋工程およびパターニング工程の操作を経ることで、図6(a)に示すように、仮基板122表面にカーボンナノチューブ構造体124が形成されたものを作製する。
次に、図6(b)に示されように、例えば粘着テープの如き基体128を用意し、その粘着面をカーボンナノチューブ構造体124が形成された仮基板122側に向けて、基体128を矢印X方向に移動させて、図6(c)に示すように、両者を貼り合わせる。
そして、図6(d)に示されように、基体128を矢印Y方向に移動させて、カーボンナノチューブ構造体124が形成された仮基板122から剥離すると、仮基板122表面に形成されていたカーボンナノチューブ構造体124が、基体128の粘着面に転写する。
以上のようにして、仮基板122を介して、基体128にカーボンナノチューブ構造体124がパターニングされ、本発明のカーボンナノチューブデバイスが製造される。
かかる応用例のアンテナの製造方法は、デバイスの基体として、そのまま本発明のマイクロ波用アンテナの製造方法を適用し難い材質および/または形状のものを用いる場合に、特に有効である。
例えば、前記架橋工程で、供給後の前記溶液を硬化するために加熱する温度が、アンテナの基体にしようとしている材料の融点ないしガラス転移点以上となってしまう場合に、上記応用例は有効である。このとき、前記加熱温度を前記仮基板の融点よりも低く設定することで、硬化のために必要な加熱温度を確保することができ、適切に本発明のマイクロ波用アンテナを製造することができる。
また、例えば、前記パターニング工程が、前記仮基板表面における前記輻射器に応じたパターン以外の領域のカーボンナノチューブ構造体に、ドライエッチングを行うことで、当該領域のカーボンナノチューブ構造体を除去し、前記カーボンナノチューブ構造体を前記輻射器に応じたパターンにパターニングする工程であるとき、アンテナの基体にしようとしている材料が、前記パターニング工程で行うドライエッチングに対して耐性を有しない場合に、上記本発明の応用例は有効である。このとき、前記仮基板としてドライエッチングに対して耐性を有する材料を用いることで、前記仮基板にパターニングする工程の操作に対する耐性を確保することができ、適切に本発明のマイクロ波用アンテナを製造することができる。
具体的な耐性、材料等は、ドライエッチングのガス種、強度、時間、温度、圧力等の条件により異なるため一概には言えないが、樹脂材料は比較的耐性が低いため、これを前記基体とした場合に、本応用例を適用することで、耐性が低いことによる制約から解放される。したがって、樹脂材料を前記基体に適用することは、本応用例によるメリットを生かし得る点で好適である。一方、無機材料は比較的耐性が高いため、前記仮基板に適している。また、可撓性ないし柔軟性を有する材料は一般に当該耐性が低いため、これを前記基体に適用することは、本応用例によるメリットを生かし得る点で好適である。
さらに別の態様として、カーボンナノチューブ構造体124を担持する基体を、よりハンドリングしやすいアンテナとするために、第2の基体に貼り付けて、本発明のマイクロ波用アンテナおよびこれを用いた装置を構成してもよい。第2の基体としては、物性的に剛体であっても、可撓性ないし柔軟性であってもよいし、形状的にも球体、凹凸形状等多様な形状のものを選択することができる。
以上、本発明を好ましい実施形態を挙げて詳細に説明したが、本発明はこれら実施形態の構成に限定されるものではなく、本発明の構成を具備する限り、従来公知の知見により各構成を変更、付加等各種修正を加えることができる。勿論、これら各種修正が加えられていても、本発明の構成を具備する限り、本発明の範疇に含まれることは言うまでもない。
例えば、上記実施形態においては、誘電体基板(基体)10における輻射器層20または30が形成された側の裏面側に、接地面となる金属電極(接地電極)12が配置されているが、必ずしも当該箇所に接地すべきものではない。
接地電極を設ける場合、上記実施形態のように、基体の輻射器を支持する表面と異なる表面(基体が板状である場合には裏面)に設けてもよいし、基体の輻射器を支持する表面における、前記輻射器が支持される領域と異なる領域に設けてもよい。基体自体に厚みがある場合には、当該基体の内部に接地電極を設けても構わない。
以下、本発明を実施例を挙げてより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
実施例1では、図5に記載マイクロ波用のアンテナの製造方法の流れにより、図10および図11に示される構成のアンテナを製造した。なお、図10は、本実施例で製造するマイクロ波用アンテナの模式断面図であり、図11は、図10における上方向から見た平面図である。本実施例で製造するマイクロ波用アンテナは、既述の第1の実施形態と、誘電体基板(基体)40の形状が異なることを除き、その構造は同一であるため、図10および図11において、図1および図2と同一の機能・構造・形状を有する構成部材に関しては、同一の符号を付している。
なお、本実施例の説明においては、図5の符号を用いる場合がある。
(A)供給工程
(A−1)架橋溶液の調製(付加工程)
(i)カルボキシル基の付加・・・カーボンナノチューブカルボン酸の合成
多層カーボンナノチューブ粉末(純度90%、平均直径30nm、平均長さ3μm;サイエンスラボラトリー製)30mgを濃硝酸(60質量%水溶液、関東化学製)20mlに加え、120℃の条件で還流を20時間行い、カーボンナノチューブカルボン酸を合成した。以上の反応スキームを図7に示す。なお、図7中カーボンナノチューブ(CNT)の部分は、2本の平行線で表している(反応スキームに関する他の図に関しても同様)。
溶液の温度を室温に戻したのち、5000rpmの条件で15分間の遠心分離を行い、上澄み液と沈殿物とを分離した。回収した沈殿物を純水10mlに分散させて、再び5000rpmの条件で15分間の遠心分離を行い、上澄み液と沈殿物とを分離した(以上で、洗浄操作1回)。この洗浄操作をさらに5回繰り返し、最後に沈殿物を回収した。
回収された沈殿物について、赤外吸収スペクトルを測定した。また、比較のため、用いた多層カーボンナノチューブ原料自体の赤外吸収スペクトルも測定した。両スペクトルを比較すると、多層カーボンナノチューブ原料自体においては観測されていない、カルボン酸に特徴的な1735cm-1の吸収が、前記沈殿物の方には観測された。このことから、硝酸との反応によって、カーボンナノチューブにカルボキシル基が導入されたことがわかった。すなわち、沈殿物がカーボンナノチューブカルボン酸であることが確認された。
また、回収された沈殿物を中性の純水に添加してみると、分散性が良好であることが確認された。この結果は、親水性のカルボキシル基がカーボンナノチューブに導入されたという、赤外吸収スペクトルの結果を支持する。
(ii)エステル化
上記工程で調製されたカーボンナノチューブカルボン酸30mgを、メタノール(和光純薬製)25mlに加えた後、濃硫酸(98質量%、和光純薬製)5mlを加えて、65℃の条件で還流を6時間行い、メチルエステル化した。以上の反応スキームを図8に示す。
溶液の温度を室温に戻したのち、ろ過して沈殿物を分離した。沈殿物は、水洗した後回収した。回収された沈殿物について、赤外吸収スペクトルを測定した。その結果、エステルに特徴的な1735cm-1および1000〜1300cm-1の領域における吸収が観測されたことから、カーボンナノチューブカルボン酸がエステル化されたことが確認された。
(混合工程)
上記工程で得られたメチルエステル化したカーボンナノチューブカルボン酸30mgを、グリセリン(関東化学製)4gに加え、超音波分散機を用いて混合した。さらに、これを粘度調整剤としてのメタノール4gに加え、架橋溶液(1)を調製した。
(A−2)基体の表面処理工程
基体112(誘電体基板40)としてのシリコンウエハー(アドバンテック製、76.2mmφ(直径3インチ)、厚さ380μm、表面酸化膜の厚さ1μm)を用意した。この上に塗布する架橋溶液(1)と、当該シリコンウエハーとの吸着性を上げるために、アミノプロピルトリエトキシシランにより、ガラス基板の表面処理を行った。
アミノプロピルトリエトキシシランによる表面処理は、密閉したシャーレ内で、上記基体112をアミノプロピルトリエトキシシラン(アルドリッチ社製)50μlの蒸気に3時間程度晒すことで行った。
(A−3)供給(塗布)工程
工程(A−1)で調製された架橋溶液(1μl)を、表面処理が施された基体112表面にスピンコーター(ミカサ社製、1H−DX2)を用い、100rpm,30秒の条件で塗布した。
(B)架橋工程
架橋溶液を塗布した後、当該架橋体膜が形成された基体112(誘電体基板40)を、200℃で2時間加熱し架橋体膜を硬化し、カーボンナノチューブ構造体114を形成した(図5(a))。なお、比較のため、表面処理を施さない比較のためのガラス基板についても、同様にして架橋体膜を硬化した。反応スキームを図9に示す。
得られたカーボンナノチューブ構造体114の状態を光学顕微鏡で確認したところ、極めて均一な硬化膜となっていた。
(C)パターニング工程
(C−1)レジスト層形成工程
カーボンナノチューブ構造体114が形成された基体112(表面処理を施したもの)の当該カーボンナノチューブ構造体114側の表面に、スピンコーター(ミカサ社製、1H−DX2)を用い、レジスト剤(長瀬産業製、NPR9710、粘度50mPa・s)を、2000rpm、20秒の条件で塗布し、ホットプレートにより2分間、100℃で加熱して製膜させて、レジスト層116を形成した(図5(b))。
なお、レジスト剤NPR9710の組成は、以下の通りである。
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:50〜80質量%
・ノボラック樹脂: 20〜50質量%
・感光剤: 10質量%未満
カーボンナノチューブ構造体114およびレジスト層116が形成された基体112の当該レジスト層116側の表面に、マスクアライナー(ミカサ製水銀灯、MA−20、波長436nm)を用いて、光量12.7mW/cm2、4秒の条件で、図11に示される輻射器層20の形状に露光した。
さらに、露光された基体112(誘電体基板40)をホットプレートにより1分間、110℃で加熱した後、放冷し、現像液として東京応化工業製NMD−3(テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド:2.38質量%)を用い、現像機(AD−1200、滝沢産業)により現像を行った(図5(c))。このとき、レジスト層116が輻射器の形状(図11における輻射器層20の形状=「所定のパターン」の形状)に形成されていることを、光学顕微鏡観察により確認した。
(C−2)除去工程
以上のようにしてレジスト層116が所定のパターンの形状に形成された基体112を、UVアッシャー(エキシマ真空紫外線ランプ、アトム技研製、EXM−2100BM、波長172nm)により、混合ガス(酸素10mL/min,窒素40mL/min)中200℃で加熱し、5時間紫外線(172nm)を照射することで酸素ラジカルを発生させカーボンナノチューブ構造体114におけるレジスト層116で保護されていない部分を除去した。その結果、レジスト層116で覆われた状態でカーボンナノチューブ構造体114が、図11に示されるような輻射器層20の形状に形成された(図5(d))。このとき、レジスト層116は、カーボンナノチューブ構造体114を介して基体112の表面に残存している。
(C−3)レジスト層除去工程
上記「所定のパターン」の形状に形成されたカーボンナノチューブ構造体114の上層として残存しているレジスト層116を、アセトンで洗い流すことにより洗浄して除去し(図5(e))、本実施例においてマイクロ波用アンテナの輻射器として機能する輻射器層20(正方形、25mm×25mm)を得た。
(D)その他の構成
誘電体基板40(基体112)表面に形成された、輻射器として機能するカーボンナノチューブ構造体からなる輻射器層20の一辺に接して上面から被さるように給電用の金属配線(給電電極)14を設けた。具体的には、図10および図11に示されるように、メタルマスクを用いて幅1mm長さ8mmの金配線を形成し金属配線14とした。
また、図10に示されるように、誘電体基板40の裏面側(輻射器層20等が設けられていない側)の全面に、金を蒸着することにより接地面となる金属電極(接地電極)12を形成した。
さらに、予め穿孔されたビア24を介して、同軸芯線16cを金属配線14にはんだ22によって、また、同軸シールド線16aを金属電極12にはんだ18によって、それどれ固定・接続する。このようにして、同軸配線16が外部と接続可能な状態となっている。
以上のようにして本実施例のマイクロ波用アンテナを製造した。
(評価試験)
得られた本実施例のマイクロ波用アンテナについて、ネットワークアナライザー37397C(アンリツ製)および付属のユニバーサルテストフィクスチャーを用いて、反射減衰率(S11)の評価を行った。結果を図12に示す。図12に示されるように、3.2GHz〜58GHzの広い周波数範囲で−10dB以下の反射減衰率が得られた。カーボンナノチューブ構造体の利用により広帯域の輻射器が実現し、小型でありながら高感度で利用可能な周波数帯域の広いマイクロ波用アンテナが得られたことが確認された。
[実施例2]
実施例2では、実施例1の「(A−1)架橋溶液の調製」で得られた架橋溶液を用いて、実施例1の手順に従い、図13に示される構成のマイクロ波用アンテナを製造した。なお、図13は、本実施例で製造するマイクロ波用アンテナの平面図である。本実施例で製造されるマイクロ波用アンテナは、実施例1のものと断面構造が近似するため、模式断面図は図11を代用することとする。
本実施例では、「(C)パターニング工程」でのパターニング形状が異なっている。すなわち、詳しくは「(C−1)レジスト層形成工程」において、マスクアライナー(ミカサ製水銀灯、MA−20、波長436nm)による露光を、図13に示される輻射器層30の形状(円形、直径4mm)とし、当該形状の輻射器層30を形成している。また、本実施例では、給電用の金属配線(給電電極)14'の形状を幅1mm、長さ4mmとした。
その他の構成は、実施例1と同様にして、本実施例のマイクロ波用アンテナを製造した。
(評価試験)
得られた本実施例のマイクロ波用アンテナについて、実施例1と同一のネットワークアナライザーを用いて、反射減衰率(S11)の評価を行った。結果を図14に示す。図14に示されるように、6.3GHz〜18.7GHzおよび22.5GHz〜58GHzの2つの周波数範囲で−10dB以下の反射減衰率が得られた。カーボンナノチューブ構造体の利用により広帯域の輻射器が実現し、実施例1と比すれば若干低周波数領域での感度が若干狭まっているものの、小型でありながら高感度で利用可能な周波数帯域の広いマイクロ波用アンテナが得られたことが確認された。
[実施例3]
実施例3では、実施例2の手順に従い、さらに第2の導電体としての金属パターンを形成して、図15および図16に示される構成のマイクロ波用アンテナを製造した。なお、図15は、本実施例で製造するマイクロ波用アンテナの模式断面図であり、図16は、図15における上方向から見た平面図である。
実施例2と同様にして、実施例1に言う「(C−3)レジスト層除去工程」までの操作を行い、本実施例においてマイクロ波用アンテナの輻射器として機能する輻射器層30(円形、直径4mm)が形成された誘電体基板40(基体112)を得た。
誘電体基板40(基体112)表面に形成された、輻射器として機能するカーボンナノチューブ構造体からなる輻射器層30の一部に接して上面から被さるように給電用の金属配線(給電電極)14を設けた。具体的には、図14に示されるように、メタルマスクを用いて幅1mm長さ10mmの金配線を形成し金属配線14とした。
また、輻射器層30を挟んで金属配線14と対向する位置に、メタルマスクを用いて幅1mm長さ10mmの金パターンを形成し、金属パターン(第2の導電体)26とした。このとき金属配線14と金属パターン26とは、同軸上に位置するように配置した。
さらに、実施例1ないし2と同様にして、金属電極(接地電極)12および同軸配線16を形成、配置して、本実施例のマイクロ波用アンテナを製造した。
(評価試験)
次に実施例1と同様にネットワークアナライザーを用いて、実施例1と同一のネットワークアナライザーを用いて、反射減衰率(S11)の評価を行った。結果を図17に示す。図17に示されるように、1.2GHz〜5.0GHzおよび6.0GHz〜58GHzの2つの周波数範囲で−10dB以下の反射減衰率が得られた。
さらに、1.6GHz〜4.1GHz、7.0GHz〜9.3GHz、11.8GHz〜14.5GHz、および16GHz〜58GHzの各周波数範囲で−15dB以下の反射減衰率を示している。このように、カーボンナノチューブ構造体からなる輻射器層30と、金属パターン(第2の導電体)26とを組み合わせることにより、周波数領域と放射効率のより一層の向上を図ることができる。
本発明の好ましい一例であるマイクロ波用アンテナの模式断面図である。 図1における上方向から見た平面図である。 本発明の好ましい他の一例であるマイクロ波用アンテナの模式断面図である。 図3における上方向から見た平面図である。 本発明のマイクロ波用アンテナの製造方法における、輻射器を基体表面に形成する方法の一例を説明するための基体の模式断面図であり、製造工程にそって(a)〜(e)の順に示したものである。 本発明のマイクロ波用アンテナの製造方法における、輻射器を基体表面に形成する方法の応用例を説明するための仮基板および基体の模式断面図であり、製造工程にそって(a)〜(d)の順に示したものである。 実施例1中の(付加工程)におけるカーボンナノチューブカルボン酸の合成の反応スキームである。 実施例1中の(付加工程)におけるエステル化の反応スキームである。 実施例1中の(架橋工程)におけるエステル交換反応による架橋の反応スキームである。 実施例1で製造したマイクロ波用アンテナの模式断面図である。 図10における上方向から見た平面図である。 実施例1で製造したマイクロ波用アンテナの反射減衰を示すグラフである。 実施例2で製造したマイクロ波用アンテナの平面図である。 実施例2で製造したマイクロ波用アンテナの反射減衰を示すグラフである。 実施例3で製造したマイクロ波用アンテナの模式断面図である。 図15における上方向から見た平面図である。 実施例3で製造したマイクロ波用アンテナの反射減衰を示すグラフである。
符号の説明
10,40,40':誘電体基板(基体)、 12:金属電極(接地電極)、 14:金属配線(給電電極)、 16:同軸配線、 20,30:輻射器層(輻射器)、 24:ビア、 26:金属パターン(第2の導電体)、 112,128:基体、 114,124:カーボンナノチューブ構造体、 116:レジスト層

Claims (52)

  1. 基体と、複数のカーボンナノチューブが相互に電気的に接続された網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体を含み、前記基体表面に支持された輻射器と、該輻射器に接続された給電電極と、を備えることを特徴とするマイクロ波用アンテナ。
  2. 前記基体が、板状であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波用アンテナ。
  3. 前記給電電極が、金属電極であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波用アンテナ。
  4. 前記基体における、少なくとも前記輻射器を支持する表面全面が、絶縁性であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波用アンテナ。
  5. さらに、前記基体のいずれかの箇所に、接地電極が設けられてなることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波用アンテナ。
  6. 前記接地電極が、金属電極であることを特徴とする請求項5に記載のマイクロ波用アンテナ。
  7. 前記基体の前記輻射器を支持する表面と異なる表面に、前記接地電極が設けられてなることを特徴とする請求項5に記載のマイクロ波用アンテナ。
  8. 前記基体の前記輻射器を支持する表面における、前記輻射器が支持される領域と異なる領域に、前記接地電極が設けられてなることを特徴とする請求項5に記載のマイクロ波用アンテナ。
  9. 前記基体の内部に、前記接地電極が設けられてなることを特徴とする請求項5に記載のマイクロ波用アンテナ。
  10. さらに、前記輻射器に電気的に接続された第2の導電体を備えることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ。
  11. 前記第2の導電体が、金属電極であることを特徴とする請求項10に記載のマイクロ波用アンテナ。
  12. 前記カーボンナノチューブ構造体が、複数のカーボンナノチューブと、少なくともその一端がそれぞれ異なる前記カーボンナノチューブに結合された複数の官能基同士の化学結合により形成された架橋部位と、からなることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波用アンテナ。
  13. 前記カーボンナノチューブ構造体が、官能基を有するカーボンナノチューブと、前記官能基と架橋反応を起こす架橋剤と、の硬化により、前記カーボンナノチューブが有する前記官能基と前記架橋剤とを架橋反応させて前記架橋部位が形成されてなることを特徴とする請求項12に記載のマイクロ波用アンテナ。
  14. 前記架橋部位が、−COO(CH22OCO−、−COOCH2CHOHCH2OCO−、−COOCH2CH(OCO−)CH2OHおよび−COOCH2CH(OCO−)CH2OCO−からなる群より選ばれるいずれかの化学構造であることを特徴とする請求項13に記載のマイクロ波用アンテナ。
  15. 前記架橋部位が、複数の前記官能基同士の化学結合により形成された構造からなることを特徴とする請求項12に記載のマイクロ波用アンテナ。
  16. 前記架橋部位が、−COOCO−、−O−、−NHCO−、−COO−、−NCH−、−NH−、−S−、−O−、−NHCOO−および−S−S−からなる群より選ばれる少なくともいずれか1つの化学構造であることを特徴とする請求項15に記載のマイクロ波用アンテナ。
  17. 基体と、複数のカーボンナノチューブが架橋部位で相互に電気的に接続された網目構造を構成するカーボンナノチューブ構造体を含み、前記基体表面に支持された輻射器と、該輻射器に接続された給電電極と、を備えるマイクロ波用アンテナを製造するための方法であって、前記輻射器を前記基体表面に形成する方法として、
    少なくとも、官能基を有する複数のカーボンナノチューブを前記基体表面に供給する供給工程と、
    前記官能基間を化学結合させることにより架橋部位を形成し、前記カーボンナノチューブ構造体を形成する架橋工程と、
    を含むことを特徴とするマイクロ波用アンテナの製造方法。
  18. 前記架橋工程に引き続いてさらに、形成されたカーボンナノチューブ構造体を、所望の形状にパターニングするパターニング工程を含むことを特徴とする請求項17に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  19. 前記パターニング工程が、前記基体表面における前記所望の形状に応じたパターン以外の領域のカーボンナノチューブ構造体に、ドライエッチングを行うことで、当該領域のカーボンナノチューブ構造体を除去し、前記カーボンナノチューブ構造体を前記輻射器に応じたパターンにパターニングする工程であることを特徴とする請求項18に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  20. 前記パターニング工程が、
    前記基体表面における前記所望の形状に応じたパターンの領域のカーボンナノチューブ構造体の上に、レジスト層を設けるレジスト層形成工程と、
    前記基体の前記カーボンナノチューブ構造体およびレジスト層が積層された面に、ドライエッチングを行うことで、前記領域以外の領域で表出しているカーボンナノチューブ構造体を除去する除去工程と、
    を含むことを特徴とする請求項18に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  21. 前記除去工程において、前記基体の前記カーボンナノチューブ構造体およびレジスト層が積層された面に、酸素分子のラジカルを照射することを特徴とする請求項20に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  22. 酸素分子に紫外線を照射することにより、酸素ラジカルを発生させ、これを前記基体の前記カーボンナノチューブ構造体およびレジスト層が積層された面に照射するラジカルとして用いることを特徴とする請求項21に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  23. 前記パターニング工程が、除去工程に引き続いてさらに、レジスト層形成工程で設けられた前記レジスト層を剥離するレジスト層剥離工程を含むことを特徴とする請求項20に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  24. 前記レジスト層が、樹脂層であることを特徴とする請求項20に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  25. 前記パターニング工程が、前記基体表面における前記所望の形状に応じたパターン以外の領域のカーボンナノチューブ構造体に、ガス分子のイオンをイオンビームにより選択的に照射することで、当該領域のカーボンナノチューブ構造体を除去し、前記カーボンナノチューブ構造体を前記輻射器に応じたパターンにパターニングする工程であることを特徴とする請求項18に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  26. 前記供給工程において、前記基体表面にさらに、前記官能基間を架橋する架橋剤を供給することを特徴とする請求項17に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  27. 前記架橋剤が、非自己重合性の架橋剤であることを特徴とする請求項26に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  28. 前記官能基が、−OH、−COOH、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)、−COX(Xはハロゲン原子)、−NH2および−NCOからなる群より選ばれる少なくともいずれか1つの基であり、前記架橋剤が、選択された前記官能基と架橋反応を起こし得る架橋剤であることを特徴とする請求項27に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  29. 前記架橋剤が、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸ハライド、ポリカルボジイミドおよびポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくともいずれか1つの架橋剤であり、前記官能基が、選択された前記架橋剤と架橋反応を起こし得る官能基であることを特徴とする請求項27に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  30. 前記官能基が、−OH、−COOH、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)、−COX(Xはハロゲン原子)、−NH2および−NCOからなる群より選ばれる少なくともいずれか1つの基であり、
    前記架橋剤が、ポリオール、ポリアミン、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸エステル、ポリカルボン酸ハライド、ポリカルボジイミドおよびポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくともいずれか1つの架橋剤であり、
    前記官能基と前記架橋剤とが、相互に架橋反応を起こし得る組み合わせとなるようにそれぞれ選択されたことを特徴とする請求項27に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  31. 前記官能基が、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)であることを特徴とする請求項26に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  32. 前記架橋剤が、ポリオールであることを特徴とする請求項31に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  33. 前記架橋剤が、グリセリン、エチレングリコール、ブテンジオール、ヘキシンジオール、ヒドロキノンおよびナフタレンジオールからなる群より選ばれる少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項32に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  34. 前記供給工程において、前記官能基を有する複数のカーボンナノチューブ、前記架橋剤および溶剤を含む溶液を前記基体表面に供給することを特徴とする請求項26に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  35. 前記架橋剤が、前記溶剤を兼ねることを特徴とする請求項26に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  36. 前記化学結合を生ずる反応が、複数の前記官能基同士を化学結合させる反応であることを特徴とする請求項17に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  37. 前記供給工程で、前記官能基同士の化学結合を生じさせる添加剤をさらに前記基体表面に供給することを特徴とする請求項36に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  38. 前記反応が脱水縮合であって、前記添加剤が縮合剤であることを特徴とする請求項37に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  39. 前記縮合剤が、硫酸、N−エチル−N'−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドおよびジシクロヘキシルカルボジイミドからなる群より選ばれる少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項38に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  40. 前記官能基が、−COOR(Rは、置換または未置換の炭化水素基)、−COOH、−COX(Xはハロゲン原子)、−OHおよび−CHO、−NH2からなる群より選ばれる少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項38に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  41. 前記官能基が−COOHであることを特徴とする請求項38に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  42. 前記反応が置換反応であって、前記添加剤が塩基であることを特徴とする請求項37に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  43. 前記塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ピリジンおよびナトリウムエトキシドからなる群より選ばれる少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項42記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  44. 前記官能基が、−NH2、−X(Xはハロゲン原子)、−SH、−OH、−OSO2CH3および−OSO2(C64)CH3からなる群より選ばれる少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項42に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  45. 前記反応が、付加反応であることを特徴とする請求項36に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  46. 前記官能基が、−OHおよび/または−NCOであることを特徴とする請求項45に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  47. 前記反応が、酸化反応であることを特徴とする請求項37に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  48. 前記官能基が、−SHであることを特徴とする請求項47に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  49. 前記添加剤が、酸化反応促進剤であることを特徴とする請求項47に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  50. 前記酸化反応促進剤が、ヨウ素であることを特徴とする請求項49に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  51. 前記供給工程において、前記官能基を有する複数のカーボンナノチューブおよび溶剤を含む溶液を前記基体表面に供給することを特徴とする請求項36に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
  52. 前記供給工程において、前記官能基を有する複数のカーボンナノチューブ、前記添加剤および溶剤を含む溶液を前記基体表面に供給することを特徴とする請求項37に記載のマイクロ波用アンテナの製造方法。
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