以下、実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。
本実施形態の説明の前に、予備的事項として、本願発明者が調査したカーボンナノチューブシートの製造方法の問題点について説明する。
カーボンナノチューブシートの第1の製造方法では、まず、基板上の全面に触媒金属を形成し、触媒金属を触媒として垂直配向のカーボンナノチューブ集合体を形成する。次いで、カーボンナノチューブ集合体に樹脂を含侵させた後に、カーボンナノチューブ集合体を基板から剥離して分離する。さらに、カーボンナノチューブ集合体をカッターなどで切断することにより、所要のサイズのカーボンナノチューブシートを得る。
第1の製造方法のデメリットとしては、カーボンナノチューブ集合体を機械的に切断するこので、カーボンナノチューブ集合体の切断部が撓んで端部の厚みが薄くなったり、切断部の配向が乱れてしまう。このため、カーボンナノチューブシートの端部での放熱性能が低下する問題がある。
この問題を回避するため、第2の製造方法では、基板の上に画定された複数のカーボンナノチューブ形成領域に、リフトオフ法によって予め触媒金属をパターン化して形成する。リフトオフ法では、基板の上にフォトリソグラフィでレジスト膜をパターニングし、基板上の全面に触媒金属を形成した後に、薬液でレジスト膜を剥離することにより、カーボンナノチューブ形成領域に触媒金属が選択的に残される。
さらに、複数のカーボンナノチューブ形成領域の触媒金属の上にカーボンナノチューブ集合体を相互に分離した状態でそれぞれ形成する。
次いで、カーボンナノチューブ集合体に樹脂を含侵させ、カーボンナノチューブ集合体を基板から剥離した後に、樹脂を切断することにより個々のカーボンナノチューブシートを得る。
第2の製造方法では、カーボンナノチューブ集合体を機械的に切断しないので、第1の製造方法の問題点は解消される。しかし、リフトオフ法によって触媒金属がパターン化される際に、触媒金属が薬液で汚染される問題がある。
触媒金属が汚染されると、カーボンナノチューブを成長させる際の触媒金属の微粒子化に悪影響を与えるため、カーボンナノチューブの密度の低下、成長レートの低下及び長さのばらつきなどが発生しやすくなる。このように、触媒金属が汚染されると、カーボンナノチューブの成長に悪影響を与えるため、所要のカーボンナノチューブ集合体を歩留りよく形成することが困難になる。
以下に説明する本実施形態は、前述した不具合を解消することができる。
(実施形態)
図1〜図15は実施形態のカーボンナノチューブシートの製造方法を示す図、図16は本実施形態のカーボンナノチューブシートを示す図である。
実施形態のカーボンナノチューブシートの製造方法では、図1(a)に示すように、まず、シリコン基板10を用意する。シリコン基板10は、カーボンナノチューブを形成するための土台として使用される。
基板としてシリコン基板10を例示するが、ガリウムヒ素(GaAs)基板などの他の半導体基板、アルミナ基板、サファイア基板、酸化マグネシウム(MgO)基板、又はガラス基板などを使用してもよい。
また、これらの基板の上に薄膜が形成されていてもよい。シリコン基板10を使用する場合は、シリコン基板10の上に膜厚が10nm〜300nm程度のシリコン酸化膜が形成されていてもよい。シリコン酸化膜はシリコン基板10を熱酸化することにより形成される。シリコン基板10の厚みは200μm〜700μm程度である。
さらには、シリコン基板10に導電型不純物がドープされていてもよい。導電型不純物としては、ボロン(B)などのp型不純物、又は、リン(P)もしくはアンチモン(Sb)などのn型不純物がある。
次いで、図1(b)に示すように、シリコン基板10の上にポジ型のレジスト膜12を形成する。レジスト膜12は、シリコン基板10に溝部を形成するためのマスク材として形成され、その厚みは2μm〜30μmに設定される。
レジスト膜12の形成方法の一例しては、AZエレクトロニックマテリアルズ社製の「AZP4620」をスピンコータで回転数が2000rpmの条件下で塗布し、120℃でプレベークする。
さらに、図2(a)及び(b)に示すように、フォトリソグラフィで使用される第1のフォトマスク20を用意する。第1のフォトマスク20では、透明なガラス基板22の上に複数の四角状の遮光パターン24が形成されており、その周りに格子状に透光部Lが配置されている。
フォトマスク20の透光部Lがシリコン基板10に形成される溝部に対応し、遮光パターン24がシリコン基板10に画定されるカーボンナノチューブ形成領域に対応する。
第1のフォトマスク20はグレイマスクであり、透光部Lには光強度を変調する透過率変調層26が形成されており、透光部Lの全体が一定の光透過率になるように調整されている。
そして、図3(a)に示すように、フォトリソグラフィ技術に基づいて、第1のフォトマスク20の透光部Lを通してシリコン基板10上のレジスト膜12を厚みの途中まで露光する。第1のフォトマスク20は透光部Lに透過率変調層26を有するので、レジスト膜12へ露光量を調整することができる。
さらに、図3(b)に示すように、レジスト膜12を現像することにより、露光された部分のレジスト膜12が上面から厚みの途中まで除去されて凹部12aが形成される。
次いで、図4(a)に示すように、第2のフォトマスク20aを用意する。第2のフォトマスク20aは、第1のフォトマスク20と同様に、透明なガラス基板22の上に遮光パターン24と透光部Lとが設けられている。
第2のフォトマスク20aはグレイマスクであり、透光部Lに、幅方向の一端側から他端側になるにつれて光透過率が低くなるように調整された透過率変調層26aが設けられている。
グレイマスクの形成方法としては、まず、マスク用のガラス基板にイオン交換によって銀イオンをドーピングする。ガラス基板に含まれる銀イオンは電子線を照射すると還元されて銀イオンの濃度が変化する。
銀イオンの濃度は電子線の強度に依存するため、所要の銀イオンの濃度のパターンが得られるように電子線を描画すると、ガラス基板のパターン内で銀イオン濃度を調整することができる。銀イオンは、透過光を遮る機能を有するため、銀イオンの濃度に応じて光の透過率が変化し、パターン内で光透過率を調整することができる。
そして、同じく図4(a)に示すように、フォトリソグラフィ技術に基づいて、第2のフォトマスク20aの透光部Lを通してシリコン基板10上のレジスト膜12を凹部12aから厚み方向に露光する。第2のフォトマスク20aの透光部Lを透過した光は、透過率変調層26aの機能によってA部からB部にかけて光強度が徐々に減少する光となる。
このようにして、レジスト膜12は、第2のフォトマスク20aの透光部Lに対応するA部からB部にかけて徐々に減少する光強度で露光される。
そして、図4(b)に示すように、露光されたレジスト膜12を現像する。これにより、第2のフォトマスク20aの透光部Lに対応する部分のレジスト膜12に底面が傾斜面となった溝パターン12bが形成される。レジスト膜12の溝パターン12bは、第2のフォトマスク20aの透光部Lに対応して格子状に配置される。
次いで、図5(a)に示すように、レジスト膜12をマスクにして溝パターン12bを通して、異方性ドライエッチングによりシリコン基板10を厚み方向にエッチングする。
このとき、シリコン基板10は、底部に傾斜面を備えたレジスト膜12の溝パターン12bを通してエッチングされる。このため、溝パターン12b内でレジスト膜12が薄い部分から厚い部分にかけてシリコン基板10が順次厚み方向にエッチングされていく。
その結果、レジスト膜12の溝パターン12b内のシリコン基板10は、A部で最も深く、かつA部からB部側になるにつれて深さが徐々に浅くなるようにエッチングされ、底部が傾斜面ISとなる。その後に、レジスト膜12が除去される。
このようにして、図5(b)に示すように、対向する第1垂直側面V1及び第2垂直側面V2と、それらの間の底部に配置された傾斜底面ISとから形成される溝部Gがシリコン基板10に設けられる。溝部Gの幅wは2μm〜20μmに設定され、溝部Gの深さd1は10μm〜600μmに設定される。
図5(c)の平面図に示すように、シリコン基板10に形成される溝部Gは格子状に配置され、溝部Gによって複数の四角状のカーボンナノチューブ形成領域Rが画定される。図5(b)は図5(c)のI−Iに沿った拡大断面図に相当する。
シリコン基板10のドライエッチングは、好適には、DRIE(Deep Reactive Ion Etching)が採用される。
ドライエッチング装置としては、好適には、誘導結合型プラズマ(ICP(Inductive Coupled Plasma)エッチング装置が使用される。誘導結合型プラズマエッチング装置では、螺旋状に巻いたコイルに高周波電流を流してガスプラズマを発生させ、試料台にバイアス電圧としてRFパワーを印加する。
DRIEでは、C4F8ガスとSF6ガスとを交互に導入して側壁保護膜の形成とエッチングとを繰り返すことにより、高アスペクト比の溝やホールなどを高いエッチング速度で異方性エッチングにより形成することができる。
C4F8ガスを導入しながら側壁保護膜を形成する工程では、ドライエッチング装置のコイルパワーが600W、プロセスチャンバ内の圧力が14.5mTorrの状態下で、C4F8ガスを130sccmの流量で導入し、7秒間処理して側壁保護膜を形成する。
また、SF6ガスを導入しながらシリコン基板10をエッチングする工程では、まず、ドライエッチング装置のコイルパワーが600W、プロセスチャンバ内の圧力が14.5mTorr、基板へのRFパワーを周波数が13.56MHzで20Wとした状態下にする。その後に、SF6ガスを130sccmの流量で導入し、8秒間、エッチングを行う。
このようにして、C4F8ガスとSF6ガスとを交互に導入するサイクルを所定回数繰り返すことにより、溝部の側面が側壁保護膜で保護された状態で、溝部の底面側がSF6プラズマによってエッチングされて異方性エッチングが達成される。
また、別の条件としては、C4F8ガスを導入しながら側壁保護膜を形成する工程で、上記した条件と同一条件下で、処理時間を6.3秒に変更する。この場合は、SF6ガスを導入しながらシリコン基板10をエッチングする工程で、上記した条件からRFパワーを周波数が380kHzで23Wに変更し、処理時間を7.5秒に変更する。
SF6でのエッチング時間が長すぎると、側壁保護膜が過度に除去されて溝部の側面が樽型になる。また逆に、SF6でのエッチング時間が短すぎると、側壁保護膜による保護が過度になって溝部の底部が先細りするテーパー形状になる。
このように、エッチング時間と側壁保護膜の厚みとのバランスを調整することにより、側面が垂直側面となる溝部を形成することができる。上記したエッチング条件では、SF6でのエッチング時間を0.5秒程度増減させることにより、溝部の形状を微量に調整することができる。
また、上記した条件では、1サイクルのSF6でのシリコン基板10のエッチング深さが0.3μm程度であり、溝部Gの深さdを120μmとする場合は、エッチングのステップと側壁保護膜の形成のステップとを1サイクルとして400サイクルを遂行する。
表1には、シリコン基板10に形成される溝部Gの好適な例が示されており、図5(b)において、第1垂直側面V1の深さd1及び第2垂直側面V2の深さd2と、傾斜底面ISの傾斜角度θとの関係を示している。溝部Gの幅wは10μmで固定している。傾斜角度θは、図5(b)に示すように、シリコン基板10の表面に対して垂直な第1垂直側面V1から傾斜する角度である。
表1に示すように、第1垂直側面V1の深さd1を20μm〜500μmの範囲とし、第2垂直側面V2の深さd2を1.4μm〜195.1μmの範囲とする場合、傾斜底面ISの傾斜角度θは、45°〜1.1°となる。
表1に示すように、好適には、溝部Gの深さ、すなわち第1垂直側面V1の深さd1は、溝部Gの幅より深く設定される。
なお、第1垂直側面V1及び第2垂直側面V2は、シリコン基板10の表面に対して垂直方向に配置されることが好ましいが、垂直方向から多少傾いて形成されるようにしてもよい。
表1に示されたスペックの溝部Gをシリコン基板10に形成することにより、シリコン基板10上の複数のカーボンナノチューブ形成領域Rにカーボンナノチューブ集合体をより確実に相互に分離して形成することができる。
以下に表1のデータの求め方を説明する。本実施形態では、溝部Gと平坦なカーボンナノチューブ形成領域Rとを備えたシリコン基板10を用いる。これにより、カーボンナノチューブ形成領域Rの平坦面に対して垂直方向に配向するカーボンナノチューブと、溝部G内に閉じ込められたカーボンナノチューブとの両方が成長する。
このようにして、カーボンナノチューブの成長方向を分けることによって、シリコン基板10の上に垂直配向するカーボンナノチューブをパターニングした状態で成長させることができる。この際、溝部G内でカーボンナノチューブがランダムな方向に成長するように、溝部Gが設計される。
図6(a)に示す溝部Gが設けられたシリコン基板10にスパッタ法などにより触媒金属膜を成膜し、カーボンナノチューブを成長させると、図6(b)の塗りつぶし部で示すように、カーボンナノチューブCNTが成長する。カーボンナノチューブCNTは、触媒金属膜の成膜面に対して垂直方向に配向するので、溝部G内からカーボンナノチューブCNTがはみ出さないようにするためには、傾斜底面ISの方向が重要になる。
図6(b)に示すように、傾斜底面IS上に成長するカーボンナノチューブCNTは、点Oから点Pの範囲内で傾斜底面ISに垂直な方向に成長する。このとき、傾斜底面ISに垂直で点Pから伸びた線が線OQ(d1)内に当たらないと、傾斜底面ISから成長したカーボンナノチューブCNTは、面U1に垂直配向で成長したカーボンナノチューブに接触してしまう。
この条件を考慮する場合、少なくとも傾斜底面ISに垂直で点Pから伸びた線が点Qに当たれば、溝部Gに成長したカーボンナノチューブCNTは溝部Gを出ないことになる。この条件により、図6(c)を参照して以下の数式が算出される。
sin2θ=2W/d1・・・(式1)
式(1)は以下のように導出できる。
d1sinθ=線PQ・・・(式2)
また、角度RQP=角度POQ=θであり、角度PQO=(π/2)−θ、角度OPQ=π/2である。
線PQcosθ=W・・・(式3)
(式2)を(式3)に代入すると、式(4)が得られる。
d1sinθcosθ=W・・・(式4)
sinθcosθ=(1/2)sin2θであるから、(式4)からsin2θ=2W/d1(式1)が得られる。
従って、構造的条件は、sin2θ=(2W/d1)<1から(式5)の条件となる。
W<d1/2・・・(式5)
図6(c)において、幅Wはプロセス上10nm程度が適当であるので、幅W10nmと設定すると、制約条件から深さd1=20μmと設定される。この時の角度θは45°である。
制約条件を満たしていれば、深さd1は深くできる。表1に示すように、幅Wを10nmとしたまま、深さd1を深くしていくと、角度は徐々に小さくなっていく。制約条件を満たしておけば、カーボンナノチューブシートは溝部Gから出てこない。しかし、溝部Gが深ければ深いほど、溝部Gのカーボンナノチューブシートは溝部G内に残りやすいので、溝部Gは深い方が好ましい。
次いで、図7(a)及び(b)に示すように、溝部Gが形成されたシリコン基板10上の全面に、スパッタ法などにより膜厚が2.5nmの鉄(Fe)膜を形成して触媒金属膜30とする。触媒金属膜30は、CVD法によってカーボンナノチューブを形成するための触媒として形成される。
このとき、触媒金属膜30はシリコン基板10の上面と溝部Gの傾斜底面ISに形成される。図7(b)の断面図に示すように、スパッタ法による触媒金属膜30の成膜はステップカバレジがよくないため、シリコン基板10の溝部Gの第1、第2垂直側面V1,V2には触媒金属膜30がほとんど形成されない。
触媒金属膜30としては、鉄以外に、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、金(Au)、銀(Ag)、及び白金(Pt)から選択される一つの金属、又はこれらから選択される少なくとも一つの金属を含む合金から形成される金属膜を使用してもよい。
また、触媒金属膜の下地層として、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、窒化タンタル(TaN)、チタンシリサイド(TiSiX)、アルミニウム(Al)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化チタン(TiOX)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、及びチタンナイトライド(TiN)から選択される一つの金属、又はこれらから選択される少なくとも一つの金属を含む合金から形成される金属膜を使用してもよい。
例えば、下地層として厚みが10nmのAl膜を形成し、その上に触媒金属として厚みが2.5nmのFe膜を形成して積層構造とする。あるいは、下地層として厚みが5nmのTiN膜を形成し、その上に触媒金属として厚みが2.6nmのCo膜を形成して積層構造としてもよい。
また、触媒金属として金属膜を形成する代わりに、微分型静分級器(differential mobility analyzer : DMA)などを使用して、予めサイズを制御して作成した金属微粒子を形成してもよい。触媒金属として金属微粒子を使用する場合も、上記した各種の触媒金属膜と同一の金属材料を使用することができる。
触媒金属として金属微粒子を使用して積層構造とする場合は、厚みが5nmのTiN膜の上に平均直径が3.8nmのCo粒子を形成して積層構造としてもよい。
次いで、図8(a)及び(b)に示すように、触媒金属として触媒金属膜30を使用する場合は、シリコン基板10を650℃の温度で5分〜10分間、加熱処理する.これにより、触媒金属膜30が微粒子化されて触媒金属微粒子32が得られる。前述したように、下地層の上に触媒金属膜30を形成する場合は、合金化された触媒金属微粒子32が得られる。
続いて、図9(a)及び(b)に示すように、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法により触媒金属微粒子32を触媒としてカーボンナノチューブ40aを成長させることによりカーボンナノチューブ集合体40を得る。図9(a)及び(b)では、触媒金属微粒子32にカーボンナノチューブ40aが成長した様子が模式的に描かれている。
熱CVD法によるカーボンナノチューブ40aの成長条件としては、原料ガスとして分圧比が1:9のアセチレン・アルゴンガスの混合ガスが使用され、成膜チャンバの総ガス圧が1kPa、温度が650℃、成長時間が30分に設定される。
このとき、図9(b)の断面図に示すように、シリコン基板10上のカーボンナノチューブ形成領域Rに配置された触媒金属微粒子32に成長するカーボンナノチューブ40aは、シリコン基板10の表面に対して垂直方向に配向して形成される。
カーボンナノチューブ40aは、その成長初期時には、触媒金属微粒子32の露出面から全ての方向に成長する。水平面に形成された触媒金属微粒子32では、隣接する触媒金属微粒子30の横方向ではカーボンナノチューブ40同士が絡んで成長が止まり、カーボンナノチューブ40はオープンスペースとなる垂直方向に成長が進んで垂直配向となって形成される。
このとき、シリコン基板10の溝部Gに配置された触媒金属微粒子32に成長するカーボンナノチューブは、成長過程で、対向する第1垂直側面V1にぶつかって配向が乱れ、絡まった状態で形成される。このようにして、シリコン基板10の溝部Gには、ランダム配向で成長したカーボンナノチューブ42が形成される。
また、溝部Gの第2垂直側面V2には、触媒金属微粒子32が形成されていないので、第2垂直側面V2の前方空間Cにはカーボンナノチューブ42が形成されない。しかも、溝部G内にカーボンナノチューブ42が絡み合って形成されると、溝部Gがカーボンナノチューブ42で蓋をされた状態となる。このため、カーボンナノチューブの成長原料が触媒金属微粒子32に到達しなくなり、溝部G内での成長が抑制される。
これにより、溝部G内に形成されたカーボンナノチューブ42が、カーボンナノチューブ形成領域Rに形成されたカーボンナノチューブ集合体40に接触したり絡んだりするおそれはなく、両者は分離された状態で形成される。
このようにして、シリコン基板10上の複数のカーボンナノチューブ形成領域Rに、カーボンナノチューブ集合体40が溝部Gによって相互に分離された状態でそれぞれ形成される。
ここで、図10(a)及び(b)を加えて参照すると、図9(b)の1本のカーボンナノチューブ40aは、複数の円筒状のシートSxが横方向に積層された多層構造を有する。図10(b)は図10(a)のII−IIに沿った断面図に相当する。
上記した成長条件を採用することにより、触媒金属微粒子32に、層数が3層〜6層、平均で4層程度、直径dが4nm〜8nm、平均で6nm程度、長さLxが80μmの多層構造のカーボンナノチューブ40aを成長させることができる。上記の成長条件で、カーボンナノチューブ40aの成長レートは4μm/分程度である。
カーボンナノチューブの成長は、熱CVD法の他に、フィラメントCVD法、又はリモートプラズマCVD法などの他の成膜方法を使用してもよい。
また、触媒金属微粒子32の大きさを変えることによって、多層構造のカーボンナノチューブ40aの他に、単層のカーボンナノチューブを成長させてもよい。例えば、触媒金属微粒子32の大きさが数nmの場合は、単層のカーボンナノチューブが成長し、触媒金属微粒子32の大きさが数十nmの場合は、多層構造のカーボンナノチューブが成長する。
また、原材料として、アセチレンの他、メタン、エチレンなどの炭化水素類、又はエタノール、メタノールなどのアルコール類などを用いてもよい。
前述した成長条件で形成したカーボンナノチューブ集合体40の面密度は、1×1011本/cm2程度である。カーボンナノチューブ集合体40の面密度は、十分な放熱性及び電気伝導性を得るという観点から、1×1010本/cm2以上であることが望ましい。
また、カーボンナノチューブ40aの長さLxは放熱用途などによって適宜調整されるが、例えば5μm〜500μm程度、好適には10μm〜300μmに設定される。
本実施形態では、触媒金属膜30が薬液で汚染されないので、触媒金属膜30から正常な触媒金属微粒子32が得られる。これにより、カーボンナノチューブ40aの密度の低下、成長レートの低下及び高さのばらつきなどの不具合が解消され、所要のカーボンナノチューブ集合体を歩留りよく形成することができる。
また、前述した実施形態では、シリコン基板10に形成される溝部Gは、対向する第1垂直側面V1及び第2垂直側面V2と、それらの下部に繋がって配置されて全体にわたって同一面となった傾斜底面ISとを備えて形成される。
この形状の他に、図11に示すように、第1垂直側面V1と第2垂直側面V2とが対向し、それらの下部に繋がって配置された第1傾斜底面IS1と第2傾斜底面IS2とが最下部で接する構造の溝部Gxをシリコン基板10に形成してもよい。
この場合も同様に、シリコン基板10の溝部Gxの第1、第2傾斜底面IS1,IS2に形成された触媒金属微粒子32に成長するカーボンナノチューブ42はランダム配向で絡まって成長する。これにより、シリコン基板10の各カーボンナノチューブ形成領域Rに形成されるカーボンナノチューブ集合体40は、溝部Gxによって相互に分離された状態で形成される。
このようにして、図12(a)の平面図に示すように、溝部G内にランダム配向で成長したカーボンナノチューブ42が配置され、溝部Gで囲まれたカーボンナノチューブ形成領域Rに垂直配向で成長したカーボンナノチューブ集合体40が配置される。
また、図12(b)の断面図に示すように、カーボンナノチューブ集合体40はシリコン基板10の複数のカーボンナノチューブ形成領域Rに溝部Gで相互に分離されて状態で形成される。
なお、好適な例として、垂直側面と傾斜底面を備えた溝部Gを形成したが、溝部Gによって各カーボンナノチューブ集合体40が相互に分離されて形成されるようにすればよく、溝部Gの形状は各種のものを採用できる。
このようにして、実施形態のカーボンナノチューブ形成基板3が得られる。カーボンナノチューブ形成基板3は、溝部Gを形成したシリコン基板10と、シリコン基板10の上に付着させた触媒金属微粒子32と、触媒金属微粒子32を触媒にしてシリコン基板10の上に形成されたカーボンナノチューブ集合体40とを備える。
続いて、図13に示すように、シリコン基板10の大きさに対応する熱可塑性の樹脂フィルム50を用意し、その樹脂フィルム50をカーボンナノチューブ集合体40の上に配置する。例えば、樹脂フィルム50の厚みは、カーボンナノチューブ集合体40の厚みの10%程度に設定される。樹脂フィルム50は、カーボンナノチューブ集合体40に接着されるシート部材の一例である。
さらに、樹脂フィルム50をその軟化点の温度又はそれより高い温度で加熱処理することにより、樹脂フィルム50を軟化させることでカーボンナノチューブ集合体40の上部に含侵させる。熱可塑性の樹脂フィルム50は温度を室温に下げることで硬化した状態となり、樹脂フィルム50がカーボンナノチューブ集合体40の上部に接着した状態となる。
さらに、図14(b)の断面図に示すように、カーボンナノチューブ集合体40に接着させた樹脂フィルム50を上側に引き上げることにより、カーボンナノチューブ集合体40をシリコン基板10から分離する。
これにより、シリコン基板10上の複数のカーボンナノチューブ形成領域Rに形成された各カーボンナノチューブ集合体40が樹脂フィルム50に接着した状態でシリコン基板10から一括して分離される。
このとき、図14(a)の平面図を加えて参照すると、溝部G内にランダム配向で形成されたカーボンナノチューブ42は、樹脂フィルム50に接着されないと共に、カーボンナノチューブ集合体40と完全に分離されているため、シリコン基板10に残される。
このようにして、樹脂フィルム50が接着した複数のカーボンナノチューブ集合体40からシリコン基板10を剥離する。これにより、複数のカーボンナノチューブ集合体40が相互に分離された状態で樹脂フィルム50の下に接着された構造体が得られる。
次いで、図15(a)に示すように、複数のカーボンナノチューブ集合体40の間の樹脂フィルム50をカッターなどで切断する。これにより、図15(b)に示すように、個々のカーボンナノチューブ集合体40が樹脂フィルム50に接着した状態で得られる。
このとき、複数のカーボンナノチューブ集合体40は樹脂フィルム50を切断する前の時点で、既に相互に分離されている。このため、カーボンナノチューブ集合体40を機械的に切断する必要がないので、カーボンナノチューブ集合体40の端部が撓んでその厚みが薄くなったり、端部で配向が乱れるおそれはない。従って、全体にわたって垂直配向を有して厚みの均一性が高いカーボンナノチューブ集合体40が得られる。
その後に、図16に示すように、樹脂フィルム50をその軟化点の温度又はそれより高い温度で加熱処理する。これにより、カーボンナノチューブ集合体40の上部に接着された樹脂フィルム50をカーボンナノチューブ集合体40の厚み方向の中央部に流し込んで含侵させる。
以上により、本実施形態のカーボンナノチューブシート1が得られる。
前述した形態では、樹脂フィルム50を切断した後に、樹脂フィルム50をカーボンナノチューブ集合体40の厚み方向の中央部に流し込んで含侵させている。
この方法の他に、樹脂フィルム50の下に複数のカーボンナノチューブ集合体40が接着した状態で、加熱処理することにより樹脂フィルム50を各カーボンナノチューブ集合体40の厚み方向の中央部に流し込んで含侵させてもよい。その後に、樹脂フィルム50が切断されて個々のカーボンナノチューブシート1が得られるようにしてもよい。
また、前述した形態では、シリコン基板10上のカーボンナノチューブ集合体40に樹脂フィルム50を接着し、シリコン基板10を剥離している。
その他の方法としては、図17に示すように、まず、シリコン基板10に対応する大きさの銅などから形成されるヒートスプレッダ52の上にスクリーン印刷により導電性ペースト54を形成する。
導電性ペースト54は各カーボンナノチューブ集合体40に対応するように分離されて配置される。導電性ペースト54が形成されたヒートスプレッダ52が、カーボンナノチューブ集合体40に接着されるシート部材の別の一例である。
次いで、図18に示すように、ヒートスプレッダ52上の導電性ペースト54をシリコン基板10上の各カーボンナノチューブ集合体40の上部に押し当て、加熱処理して導電性ペースト54を接着する。さらに、シリコン基板10を各カーボンナノチューブ集合体40から剥離する。
続いて、図19(a)に示すように、各カーボンナノチューブ集合体40の間のヒートスプレッダ52を切断する。これにより、図19(b)に示すように、上部が導電性ペースト54を介してヒートスプレッダ52に固定された個々のカーボンナノチューブシート1aが得られる。
次いで、図20に示すように、半導体チップ56を用意し、その上に導電性ペースト54aをスクリーン印刷により形成する。半導体チップ56としては、例えば、発熱量が大きなCPU(Central Processing Unit)チップが使用される。
その後に、図21に示すように、図19(b)に示したヒートスプレッダ52に固定されたカーボンナノチューブシート1aの下部に半導体チップ56上の導電性ペースト54aを配置し、加圧しながら180℃の温度で加熱処理して接着する。
これにより、半導体チップ56が導電性ペースト54aを介してカーボンナノチューブシート1aに固定される。
以上により、実施形態の半導体装置2が得られる。半導体装置2では、半導体チップ56から発する熱は、導電性ペースト54a,54a及びカーボンナノチューブシート1aを介してヒートスプレッダ52に伝導して外部に放出される。
以上説明したように、個々のカーボンナノチューブ集合体40を樹脂フィルム50に固定してカーボンナノチューブシート1としてもよい。あるいは、個々のカーボンナノチューブ集合体40を導電性ペースト54で固定してヒートスプレッダ52に接続されるカーボンナノチューブシート1aを得てもよい。
このとき、前述した形態では、樹脂フィルム50及びヒートスプレッダ52はシリコン基板10に対応する大きさで、複数のカーボンナノチューブ集合体40を固定している。シリコン基板10内のカーボンナノチューブ形成領域Rの数が少ない場合は、各カーボンナノチューブ集合体40の大きさに切断された樹脂フィルム50及びヒートスプレッダ52をカーボンナノチューブ集合体40に固定し、シリコン基板10から分離してもよい。
また、前述した形態では、複数のカーボンナノチューブ集合体40に樹脂フィルム50又はヒートスプレッダ52を接着し、それらを引き上げることによりカーボンナノチューブ集合体40からシリコン基板10を剥離している。
この方法以外に、カーボンナノチューブに対して選択的にエッチングできる材料の基板を使用し、基板をエッチンングして除去することにより、カーボンナノチューブ集合体から基板を剥離してもよい。
以上説明したように、本実施形態のカーボンナノチューブシートの製造方法では、まず、シリコン基板10に、複数のカーボンナノチューブ形成領域Rを画定する溝部Gを形成する。次いで、シリコン基板10上及び溝部G内に形成された触媒金属微粒子32を触媒にしてカーボンナノチューブ40aを形成する。
このとき、シリコン基板10上の水平面のカーボンナノチューブ形成領域Rには垂直配向の正常なカーボンナノチューブ40aが成長してカーボンナノチューブ集合体40が得られる。一方、シリコン基板10の溝部G内にはカーボンナノチューブ42がランダム配向で絡まって成長し、カーボンナノチューブ集合体40と分離された状態で形成される。
このようにすることにより、シリコン基板10上の複数のカーボンナノチューブ形成領域Rにそれぞれ形成されたカーボンナノチューブ集合体40は、相互に分離された状態で形成される。
さらに、各カーボンナノチューブ集合体40に樹脂フィルム50を接着し、樹脂フィルム50を引き上げることにより、各カーボンナノチューブ集合体40からシリコン基板10を剥離して分離する。
その後に、各カーボンナノチューブ集合体40の間の樹脂フィルム50が切断されて個々のカーボンナノチューブシート1が得られる。そして、所要のタイミングで、カーボンナノチューブ集合体40に樹脂フィルム50の樹脂を含侵させる。
このように、シリコン基板10に溝部Gを形成してカーボンナノチューブ形成領域Rを画定することにより、各カーボンナノチューブ形成領域Rに相互に溝部Gで分離された状態でカーボンナノチューブ集合体40を形成することができる。
このため、カーボンナノチューブ集合体40を切断することなく、樹脂フィルム50を切断することで、個々のカーボンナノチューブシート1を得ることができる。
従って、カーボンナノチューブシート1が、端部で厚みが薄くなったり配向が乱れたりするおそれがないため、十分な放熱性を有する信頼性の高いカーボンナノチューブシート1を製造することができる。
しかも、触媒金属膜30が薬液で汚染されるおそれもないため、触媒金属膜30の微粒子化が正常に行われ、所要のカーボンナノチューブ集合体を歩留りよく形成することができる。
また、CVD法でカーボンナノチューブを形成するため、インジウムを熱伝導性シートとして使用する場合よりも低コスト化を図ることができる。
次に、前述した図16のカーボンナノチューブシート1を半導体装置の熱伝導シートとして使用する例について説明する。
図22に示すように、プリント配線基板60の上にはんだバンプ62を介してインターポーザ70が配置されている。インターポーザ70は表裏側を導通させるビルドアップ配線(不図示)を備えている。
インターポーザ70の上には、はんだバンプ72によって半導体チップ80がフリップチップ接続されている。半導体チップ80としては、例えば、発熱量が大きなCPUチップが使用される。半導体チップ80は半導体デバイスの一例であり、半導体チップ80がパッケージに実装された半導体パッケージを使用してもよい。
さらに、半導体チップ80の背面に前述したカーボンナノチューブシート1が配置されおり、その上に熱伝導性の高い銅などから形成されたヒートスプレッダ90が配置されている。ヒートスプレッダ90の下面側にはキャビティ92が設けられて、周縁部に下側に突出する枠部94が設けられている。
ヒートスプレッダ90の枠部94がインターポーザ70に固定されており、ヒートスプレッダ90のキャビティ92内に半導体チップ80とカーボンナノチューブシート1が収納されている。
このようにして、プリント配線基板60上にインターポーザ70を介して、半導体チップ80、カーボンナノチューブシート1及びヒートスプレッダ90を備えた半導体装置2aが配置されている。
そして、半導体チップ80は、カーボンナノチューブシート1を介してヒートスプレッダ90に接続されている。これにより、半導体チップ80から発する熱は、カーボンナノチューブシート1を介してヒートスプレッダ90に伝導されて外部に放熱される。
前述したように、本実施形態のカーボンナノチューブ1は、端部が機械的に切断されていないため、カーボンナノチューブ集合体の端部の厚みが薄くなったり、端部の配向が乱れたりするおそれはなく、全体にわたって均一な厚みで信頼性よく製造される。
このため、本実施形態のカーボンナノチューブ1は十分な放熱性が得られるため、発熱量の大きな半導体装置の熱伝導シートとして有効に使用することができる。
また、本実施形態のカーボンナノチューブ1はCVD法によって形成されるため、高価なインジウムシートを使用する場合よりも低コストで半導体装置を製造することができる。
前述した形態では、カーボンナノチューブ1を熱伝導性シートとして使用しているが、上下側を導通させる導電性シートとして使用してもよい。
(その他の実施形態)
前述した形態では、傾斜底面ISを備えた溝部Gをシリコン基板10に形成している。他の溝部Gの形状として、水平な底面を備えた形状を採用してもよい。
つまり、図23(a)に示すように、シリコン基板10の表面に水平底面HSを備えた溝部Gyを形成する。水平底面HSはシリコン基板10の表面と平行になって形成される。水平底面HSを備えた溝部Gyは、シリコン基板10の上に溝部Gyに対応する部分に開口部が設けられたレジスト膜(不図示)を形成し、その開口部を通してシリコン基板10をドライエッチングすることにより、形成することができる。
次いで、図23(b)に示すように、前述した図7(a)及び(b)の工程と同様な方法により、シリコン基板10上及び溝部Gyの水平底面HSに触媒金属膜30を形成する。このとき、触媒金属膜30はスパッタ法で形成されるため、溝部Gyの側壁にはほとんど形成されない。
その後に、前述した図8(a)及び(b)の工程と同様な方法で触媒金属膜30を加熱処理して触媒金属微粒子(不図示)を得る。さらに、図23(c)に示すように、前述した図9(a)及び(b)の工程と同様な方法により、触媒金属微粒子を触媒としてカーボンナノチューブ形成領域にカーボンナノチューブ集合体40を形成する。
このとき同時に、シリコン基板10の溝部Gyの水平底面HSにもカーボンナノチューブ42が形成される。このとき、溝部Gy内のカーボンナノチューブ42がシリコン基板10の上面まで到達しない程度に成膜時間を調整してカーボンナノチューブ42を成長させる。つまり、溝部Gy内のカーボンナノチューブ42は、溝部Gyの深さより低い高さになるように形成される。
これにより、溝部Gy内に形成されたカーボンナノチューブ42とカーボンナノチューブ形成領域に形成されたカーボンナノチューブ集合体40は分離された状態で形成される。このようにして、実施形態のカーボンナノチューブ形成基板3aが得られる。
次いで、図24(a)に示すように、前述した図13の工程と同様な方法により、カーボンナノチューブ集合体40の上部に樹脂フィルム50を含侵させる。
その後に、図24(b)に示すように、前述した図14(b)の工程と同様な方法により、カーボンナノチューブ集合体40に接着させた樹脂フィルム50を上側に引き上げることにより、カーボンナノチューブ集合体40をシリコン基板10から分離する。
さらに、図24(b)及び(c)に示すように、前述した図15(a)及び(b)の工程と同様に、カーボンナノチューブ集合体40の間の樹脂フィルム50を切断する。その後に、図24(d)に示すように、前述した図16の工程と同様に、樹脂フィルム50をカーボンナノチューブ集合体40の厚み方向の中央部に流し込んで含侵させる。
以上により、前述した図16のカーボンナノチューブシート1と同様なカーボンナノチューブシート1bが得られる。
このように、シリコン基板10に、水平底面HSを備えた溝部Gyを形成する場合も、傾斜底面ISを備えた溝部Gを形成する場合と同様に、端部が機械的に切断されていない信頼性の高いカーボンナノチューブシートを得ることができる。
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)基板に溝部を形成する工程と、
前記基板の上に金属を付着させる工程と、
前記金属を触媒として、前記基板にカーボンナノチューブを形成する工程と、
前記カーボンナノチューブと前記基板とを分離する工程と
を有することを特徴とするカーボンナノチューブシートの製造方法。
(付記2)前記溝部は、傾斜底面を備えていることを特徴とする付記1に記載のカーボンナノチューブシートの製造方法。
(付記3)前記前記カーボンナノチューブと前記基板とを分離する工程において、前記カーボンナノチューブの上にシート部材を接着した状態で前記基板を剥離し、
前記前記カーボンナノチューブと前記基板とを分離する工程の後に、前記カーボンナノチューブの間の前記シート部材を切断する工程を有することを特徴とする付記1又は2に記載のカーボンナノチューブシートの製造方法。
(付記4)前記シート部材は樹脂フィルムから形成され、前記樹脂フィルムを加熱処理して、前記カーボンナノチューブに前記樹脂フィルムの樹脂を含侵させる工程を有することを特徴とする付記3に記載のカーボンナノチューブシートの製造方法。
(付記5)前記傾斜底面を備えた溝部を前記基板に形成する工程は、
前記基板の上に傾斜底面を備えた溝パターンが設けられたレジスト膜を形成する工程と、
前記レジスト膜の溝パターンを通して、前記基板をドライエッチングすることにより、前記基板に前記溝部を形成する工程と、
前記レジスト膜を剥離する工程とを含むことを特徴とする付記2に記載のカーボンナノチューブシートの製造方法。
(付記6)前記傾斜底面を備えた溝パターンが設けられたレジスト膜を形成する工程は、
前記溝パターンに対応する領域に透光部が設けられ、前記透光部はその幅方向の一端側から他端側にかけて光透過率が変化するフォトマスクを使用し、前記フォトマスクの前記透光部を通して前記レジスト膜を露光し、現像することを含むことを特徴とする付記5に記載のカーボンナノチューブシートの製造方法。
(付記7)前記溝部は、前記カーボンナノチューブの複数の形成領域の各々を取り囲んで格子状に配置されることを特徴とする付記1乃至6のいずれかに記載のカーボンナノチューブシートの製造方法。
(付記8)前記溝部の傾斜底面は、前記基板の表面に対して垂直な方向から1.1°〜45°で傾斜していることを特徴とする付記2に記載のカーボンナノチューブシートの製造方法。
(付記9)前記溝部の深さは、前記溝部の平面視したときの幅より深く設定されることを特徴とする付記1乃至8のいずれかに記載のカーボンナノチューブシートの製造方法。
(付記10)前記基板はシリコン基板であり、
前記基板に溝部を形成する工程において、ドライエッチング装置を使用し、
C4F8ガスを使用する側壁保護膜を形成するステップと、SF6ガスを使用するエッチングステップとを1サイクルとし、前記サイクルを所定回数繰り返すことを特徴とする付記1乃至9のいずれかに記載のカーボンナノチューブシートの製造方法。
(付記11)前記カーボンナノチューブは、CVD法によって形成されることを特徴とする付記1乃至10のいずれかに記載のカーボンナノチューブシートの製造方法。
(付記12)前記シート部材は、導電性ペーストが形成されたヒートスプレッダであり、カーボンナノチューブが導電性ペーストによってヒートスプレッダに固定されることを特徴とする付記3に記載のカーボンナノチューブシートの製造方法。
(付記13)基板に溝部を形成する工程と、
前記基板の上に金属を付着させる工程と、
前記金属を触媒として、前記基板にカーボンナノチューブを形成する工程と、
前記カーボンナノチューブと前記基板とを分離する工程と、
半導体デバイスに前記カーボンナノチューブを介してヒートスプレッダを接続する工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記14)前記カーボンナノチューブと前記基板とを分離する工程において、前記カーボンナノチューブの上にシート部材を接着した状態で前記基板を剥離し、
前記カーボンナノチューブと前記基板とを分離する工程の後に、前記カーボンナノチューブの間の前記シート部材を切断する工程を有することを特徴とする付記13に記載の半導体装置の製造方法。
(付記15)前記シート部材は樹脂フィルムから形成され、前記樹脂フィルムを加熱処理して、前記カーボンナノチューブに前記樹脂フィルムの樹脂を含侵させる工程を有することを特徴とする付記14に記載の半導体装置の製造方法。
(付記16)溝部を形成した基板と、
前記基板上に形成した金属と、
前記金属を触媒として、前記基板上に形成されたカーボンナノチューブと
を備えることを特徴とするカーボンナノチューブ形成基板。
(付記17)前記溝部は、傾斜底面を備えていることを特徴とする付記16に記載のカーボンナノチューブ形成基板。
(付記18)前記基板上には、前記基板の表面に対して垂直方向に配向した前記カーボンナノチューブが形成され、前記基板の溝部には、ランダム配向のカーボンナノチューブが形成されていることを特徴とする付記16又は17に記載のカーボンナノチューブ形成基板。
(付記19)前記溝部の傾斜底面は、前記基板の表面に対して垂直な方向から1.1°〜45°で傾斜していることを特徴とする付記17に記載のカーボンナノチューブ形成基板。
(付記20)前記溝部の深さは、前記溝部の平面視したときの幅より深く設定されることを特徴とする付記16乃至19のいずれかに記載のカーボンナノチューブ形成基板。