JP2019157283A - 不織布およびその製造方法 - Google Patents
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Description
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明の不織布は、繊維状炭素ナノ構造体とグラフェンとを含み、密度が0.30g/cm3以下であることを特徴としている。本発明の不織布は、従来に比べて密度が低く、グラフェンを平面方向へ配向することにより、平面方向の導電性が高い不織布である。この本発明の不織布は、後述する本発明の不織布の製造方法により製造することができる。
本発明の不織布における繊維状炭素ナノ構造体としては、特に限定されることなく、繊維状構造を有する炭素ナノ構造体を用いることができる。具体的には、繊維状炭素ナノ構造体としては、例えば、CNT等の円筒形状の炭素ナノ構造体や、炭素の六員環ネットワークが扁平筒状に形成されてなる炭素ナノ構造体等の非円筒形状の炭素ナノ構造体を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。上述した中でも、繊維状炭素ナノ構造体が、CNTを含むことがより好ましい。
上記繊維状炭素ナノ構造体の比表面積は、400m2/g以上であることが好ましく、600m2/g以上であることがより好ましく、800m2/gであることが更に好ましい。CNTを含む繊維状炭素ナノ構造体の比表面積が400m2/g以上であれば、不織布の耐粉落ち性を向上させることができる。また、繊維状炭素ナノ構造体の比表面積は、2500m2/g以下であることが好ましく、1200m2/g以下であることがより好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の比表面積が2500m2/g以下であれば、繊維状炭素ナノ構造体に欠損が生じて窒素が内吸着することによる平面方向の導電性の悪化を抑制することができる。なお、本発明において、「比表面積」とは、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
本発明の不織布におけるグラフェンとしては、後述する本発明の不織布の製造方法において説明するように、酸化グラフェンを還元して得られたグラフェンである。酸化グラフェンは、Brodie法、Staudenmaier法、Hummers法、改良Hummers法などの一般的な手法により調製することができる。例えば、天然または人工のグラファイトを、硝酸ナトリウム、濃硫酸、過マンガン酸カリウム、過酸化水素等の酸化剤を用いて濃硫酸中で酸化したのち、水溶液中で剥離することにより、1層〜10層程度の酸化グラフェンを得ることができる。また、酸化グラフェンは東京化成工業株式会社およびシグマアルドリッチジャパン合同会社等からも市販されている。
こうした繊維状炭素ナノ構造体とグラフェンとを含む本発明の不織布の密度は、0.30g/cm3以下とする。これにより、ウェアラブル製品などに利用可能な密度の低い軽量な不織布とすることができる。不織布の密度は、0.20g/cm3以下であることが好ましく、0.17g/cm3以下であることがより好ましい。また、不織布の密度は、0.05g/cm3以上であることが好ましく、0.10g/cm3以上であることがより好ましい。これにより、強度のあるシート形状を維持することができる。
また、本発明の不織布は、X線光電子分光法により測定された、Oに対する炭素原子(C)の比(C/O比)が20以下であることが好ましく、10以下であることが好ましく、8以下であることが更に好ましい。これにより、ガラスやアルマイト処理されたアルミニウム等の親水性基材との密着性を向上させることができる。また、本発明の不織布のC/O比は、3以上であることが好ましく、4以上であることが好ましい。これにより、平面方向の導電性を高めることができる。
また、本発明の不織布の厚みは、0.5mm以上であることが好ましく、0.6mm以上であることがより好ましく、1.0mm以上であることがさらに好ましい。これにより、十分な強度を有する不織布とすることができる。また、本発明の不織布は、2.0mm以下であることが好ましく、1.6mm以下であることがより好ましく、1.5mm以下であることが更に好ましい。これにより、クラックを発生させることなく、折り曲げに対する耐性を高めることができる。
本発明の不織布の形状は、特に限定されるものではないが、通常シート状、フィルム状、シートを積層した積層状である。
本発明の不織布において、グラフェンの含有量は、繊維状炭素ナノ構造体100質量部に対して、100質量部以上とすることが好ましく、500質量部以上とすることがより好ましく、1000質量部以上とすることが更に好ましい。また、グラフェンの含有量は、繊維状炭素ナノ構造体100質量部に対して5000質量部以下とすることが好ましく、1500質量部以下とすることがより好ましい。グラフェンの含有量をこれらの範囲内とすることにより、不織布の平面方向の導電性を向上させることができ、また不織布の耐粉落ち性を向上させることができる。
次に、本発明の不織布の製造方法について説明する。本発明の不織布の製造方法は、繊維状炭素ナノ構造体を分散媒に分散させて粗分散液を調製する粗分散液調製工程と、粗分散液と酸化グラフェンとを混合した混合液を調製する混合液調製工程と、混合液から分散媒を除去してプレ不織布とするプレ不織布形成工程と、プレ不織布を還元する還元工程とを含むことを特徴としている。
まず、繊維状炭素ナノ構造体を分散媒に分散させて粗分散液を調製する粗分散液調製工程を行う。
繊維状炭素ナノ構造体については、上述した本発明の不織布と同様に、CNT等の円筒形状の炭素ナノ構造体や、炭素の六員環ネットワークが扁平筒状に形成されてなる炭素ナノ構造体等の非円筒形状の炭素ナノ構造体を用いることができる。繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が400m2/g以上であることが好ましい。これにより、製造された不織布の耐粉落ち性を高めることができる。
分散媒としては、通常は水が好ましいが、水以外にも目的に応じて水に可溶するアルコール類(メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、エチレングリコール、グリセリン等)、エーテル類(エチレングリコールジメチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)やN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキサイド等を使用してもよい。また、これらの混合物も好適に使用できる。
−混合液の調製−
次に、上述のように調製した粗分散液と酸化グラフェンとを混合して、混合液を調製する。
酸化グラフェンについては、上述した本発明の不織布において説明したような一般的な酸化グラフェンを用いることができる。混合液を調製するにあたり、酸化グラフェンの形態は特に制限されない。固体の酸化グラフェンを粗分散液に添加してもよいし、水溶液の形態の酸化グラフェンを粗分散液と混合してもよい。なお、粗分散液との混練の容易性から、混合に先立ち、酸化グラフェンを水溶液や分散液の形態としておくことが好ましい。
混合液を調製する際に、混合液における酸化グラフェンの含有量は、繊維状炭素ナノ構造体100質量部に対して、100質量部以上とすることが好ましく、500質量部以上とすることがより好ましく、1000質量部以上とすることが更に好ましい。また、本発明の不織布において、酸化グラフェンの含有量は、繊維状炭素ナノ構造体100質量部に対して5000質量部以下とすることが好ましく、1500質量部以下とすることがより好ましい。混合液における酸化グラフェンの含有量をこれらの範囲内とすることにより、繊維状炭素ナノ構造体の分散性を高めて、製造される不織布の平面方向の導電性を向上させることができる。また、製造される不織布の耐粉落ち性を向上させることもできる。
なお、上述のように得られた混合液を分散処理する分散工程を行うことが好ましい。これにより、繊維状炭素ナノ構造体を混合液中においてより分散させて、製造される不織布の平面方向の導電性をより高めることができる。また、不織布の耐粉落ち性をより向上させることもできる。
次に、上述のように得られた混合液から分散媒を除去してプレ不織布とするプレ不織布形成工程を行う。これは、例えば、混合液をろ紙を用いて減圧ろ過することによって行うことができる。
続いて、上述のように得られたプレ不織布を還元する還元工程を行う。これは、プレ不織布に紫外線(UV)を照射したり、ヒドラジン浸漬等の化学還元などによって行うことができる。中でも、副生成物などの不純物等を少なく還元できることから、UV照射により行うことが好ましい。本発明者は、上記還元工程によって、不織布の平面方向の導電性を向上させることができるとともに、不織布の密度を低下できることを見出した。こうして、従来よりも密度が低く、平面方向の導電性が高い不織布を得ることができる。
粗分散液における繊維状炭素ナノ構造体の粒子径は、動的光散乱法を用いたナノ粒子解析装置(製品名「SZ−100」、堀場製作所製)を用いて測定し、モード径(平均粒子径)にて評価して平均粒子径を測定した。ただし、上記ナノ粒子解析装置では、測定対象の粒子径が大きすぎる場合(平均粒子径10μm以上)には測定できない。この場合、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製、LA−960)を用いて、実施例および比較例の粗分散液における繊維状炭素ナノ構造体の平均粒子径(メジアン径)を測定した。
不織布の厚みをデジタルマイクロメーター(ミツトヨ製「クーラントプルーフマイクロメーター」)にて測定した。
自動比重計(東洋精機社製、商品名「DENSIMETER−H」)を用いて測定した。
X線光電子分光測定(XPS)としてX線光電子分光器((株)島津製作所社製ESCA(AXIS-ULTRA))を用いた。試料をHolder試料台に両面テープで固定し、フィラメントmonoAlを励起X線光源(15kV,10mA)として、中和電子銃(Filament Current:1.55、Charge Balance:3.3、Filament Bias:1.5)を設定し、分析範囲700×300μm、光電子取出し角は0°(サンプル面に関して垂直)として測定を行った。取り込み領域としてnarrow scan(Pass Energy 40eV)にて、Cの1s(275〜300eV)、Oの1s(520〜550eV)のスペクトルを測定した。
作製した導電性不織布から寸法10mm×10mmの正方形の試験片を切り出し、測定サンプルとした。そして、低抵抗率計(三菱化学アナリテック社製、製品名「ロレスタ(登録商標)GPMCP−T610」)を用い、JIS K7194に準拠した方法で測定サンプルの平面方向の導電率を測定した。具体的には、測定サンプルを絶縁ボードの上に固定し、測定サンプルの中心位置(縦5mm、横5mmの位置)にLSPプローブを押し当て、10Vの電圧を印加して各測定サンプルの平面方向の導電率を測定した。
不織布の上に、重量M0の3×3cmに切ったウェットティッシュ(シルコットウェットティッシュ ピュアウォーター(ユニ・チャーム製))を乗せた。更に、ウェットティッシュの上に、均一に圧力が印加されるように、500gの重しを乗せた。30秒経過後に重しを外して、ウェットティッシュの不織布が転写されている部分を切り取り、切り取った部分と同面積のウェットティッシュの重量M1を別途測定し、付着した物質の粉落ち性をΔM=M1/M0×100(%)で算出し、以下の基準で評価した。
A:ΔMが50%未満
B:ΔMが50%以上80%以下
C:ΔMが80%超
<粗分散液調製工程>
繊維状炭素ナノ構造体であるSGCNT(BET比表面積:812m2/g)250mgを1Lの水に添加し、ホモジナイザーにより10000rpm、30分間撹拌して、0.025質量%の粗分散液を調製した。
上述のように調製した粗分散液に、1質量%の酸化グラフェン分散液(仁科マテリアル製)を125g投入した後、直径0.5mmの細管流路を備えた湿式ジェットミル(株式会社常光製、JN20)に100MPaの圧力で3サイクル通過させ、繊維状炭素ナノ構造体を水中に分散させた混合液を得た。
上述のように得られた混合液10gをキリヤマろ紙(No.5A、直径3cm)を用いて減圧ろ過し、ろ物を温度120℃の雰囲気下で60分間乾燥させて、シート状の導電性不織布(プレ不織布)を得た。得られたプレ不織布の密度は0.95g/cm3だった。
上述のように得られたプレ不織布を、UV照射コンベア装置(アイグラフィックス株式会社製:ECS-401XN2-1401)を用いて、高圧水銀ランプH04−L41、出力4kW、速度5m/分、2サイクルのUV照射を行った。その際、UV照射時の空気の風量は、総排風量6m3/分以下、炉体内排風5m3/分、炉体内送風6m3/分以下の条件下にて、上部ダクト吐出口Φ173、60.00r/分(Hz)として、風量約4.5m3/分に調整して還元を行った。こうして、プレ不織布に含まれる酸化グラフェンを還元し、実施例1に係る導電性不織布を得た。得られた不織布の密度は、0.16g/cm3であった。こうして得られた不織布の厚み、密度、C/O比、導電率、耐粉落ち性を表1に示す。なお、表1において、不織布の組成は質量部単位で示してある。
実施例1と同様に、実施例2に係る不織布を作製した。ただし、粗分散液に添加する酸化グラフェンの分散液の量を25gとした。その他の条件は実施例1と全て同じである。得られた不織布の厚み、密度、C/O比、導電率、耐粉落ち性を表1に示す。
実施例1と同様に、実施例3に係る不織布を作製した。ただし、粗分散液に添加する酸化グラフェンの分散液の量を1250gとした。その他の条件は実施例1と全て同じである。得られた不織布の厚み、密度、C/O比、導電率、耐粉落ち性を表1に示す。
実施例1と同様に、実施例4に係る不織布を作製した。ただし、粗分散液に酸化グラフェンの分散液を投入した後、湿式ジェットミルによる分散工程を行わなかった。その他の条件は実施例1と全て同じである。得られた不織布の厚み、密度、C/O比、導電率、耐粉落ち性を表1に示す。
実施例1と同様に、比較例1に係る不織布を作製した。ただし、プレ不織布に対して還元工程を行わなかった。その他の条件は実施例1と全て同じである。得られた不織布の厚み、密度、C/O比、導電率、耐粉落ち性を表1に示す。
実施例1と同様に、比較例2に係る不織布を作製した。ただし、酸化グラフェン分散液の代わりに粉末の未修飾グラフェン(製品名GNH-XZ、グラフェンプラットホーム http://grapheneplatform.com/jp/products/powder/)を1.25g添加した。その他の条件は実施例1と全て同じである。得られた不織布の厚み、密度、C/O比、導電率、耐粉落ち性を表1に示す。
比較例2と同様に、比較例3に係る不織布を作製した。ただし、プレ不織布に対して還元工程を行わなかった。その他の条件は比較例2と全て同じである。得られた不織布の厚み、密度、C/O比、導電率、耐粉落ち性を表1に示す。
実施例1と同様に、比較例4に係る不織布を作製した。ただし、実施例1における粗分散液をそのまま濾過して不織布とした。その他の条件は実施例1と全て同じである。得られた不織布の厚み、密度、C/O比、導電率、耐粉落ち性を表1に示す。
実施例1と同様に、比較例5に係る不織布を作製した。ただし、酸化グラフェンの代わりに膨張化黒鉛(EC−100 伊藤黒鉛製)1gを粗分散液に添加した。その他の条件は実施例1と全て同じである。得られた不織布の厚み、密度、C/O比、導電率、耐粉落ち性を表1に示す。
実施例1と同様に、比較例6に係る不織布を作製した。ただし、繊維状炭素ナノ構造体として、多層CNT(KUMHO PETROCHEMICAL社製、商品名「K−NANO」、平均繊維径:13nm、平均繊維長:30μm、BET比表面積:266m2/g)を用いた。その他の条件は実施例1と全て同じである。得られた不織布の厚み、密度、C/O比、導電率、耐粉落ち性を表1に示す。
実施例1と同様に、比較例7に係る不織布を作製した。ただし、酸化グラフェンの分散液の量を2500gとした。その他の条件は実施例1と全て同じである。得られた不織布の厚み、密度、C/O比、導電率、耐粉落ち性を表1に示す。
Claims (10)
- 繊維状炭素ナノ構造体とグラフェンとを含み、
密度が0.30g/cm3以下であることを特徴とする不織布。 - 前記繊維状炭素ナノ構造体の比表面積が400m2/g以上である、請求項1に記載の不織布。
- 前記グラフェンの一部が表面に酸化された部分を有する、請求項1または2に記載の不織布。
- X線光電子分光法で測定したC/Oの比が20以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の不織布。
- 厚みが0.5mm以上2.0mm以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の不織布。
- 前記グラフェンの含有量が、前記繊維状炭素ナノ構造体100質量部に対して、100質量部以上5000質量部以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の不織布。
- 繊維状炭素ナノ構造体を分散媒に分散させて粗分散液を調製する粗分散液調製工程と、
前記粗分散液と酸化グラフェンとを混合して混合液を調製する混合液調製工程と、
前記混合液から分散媒を除去してプレ不織布とするプレ不織布形成工程と、
前記プレ不織布を還元する還元工程と、
を含むことを特徴とする不織布の製造方法。 - 前記混合液調製工程と、前記プレ不織布形成工程との間に、前記混合液を分散処理する分散工程を更に備える、請求項7に記載の不織布の製造方法。
- 前記繊維状炭素ナノ構造体の比表面積が400m2/g以上である、請求項7または8に記載の不織布の製造方法。
- 前記粗分散液に含まれる前記繊維状炭素ナノ構造体の平均粒子径が25μm以下である、請求項7〜9のいずれか一項に記載の不織布の製造方法。
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