明 細 書
サーボ制御系の制御モー ド切換え方法
技 術 分 野
本発明は、 サ一ボモー タを制御するサーボ制御系に関 し、 特に、 サーボ制御系の制御モー ドを ト ルク制御モー ドから位置ノ速度制御モ一 ドへ切換え る際の切換え方法 に関する。
背 景 技 術
工作機械の送り軸やロ ボッ 卜のアーム等を駆動するサ —ボモー タ の制御を行な う場合、 位置や速度を制御する 位置 Z速度制御モー ドでサ一ボモー タを制御する場合と、 力を制御する ト ルク制御モ一 ドでサ一ボモ一 夕 を制御す る場合とがある。 ト ルク 制御モー ドは、 コ ン ト ロー ラの 指令通り の ト ルクをモー タ に出力させ、 サーボモー 夕で 駆動される対象物に指令通り の力を与える制御モー ドで あ り 、 例えば、 対象物に一定のテ ン シ ョ ンを与える動作、 対象物の押 し当て動作、 あ るいは形状の定ま らない対象 物のはめ込み動作等を行な う 場合に利用 さ れる。
位置 Z速度制御モー ドと ト ルク制御モー ドと は両者を 組み合わせて用いる場合が多い。 例えば、 サー ボモ一 夕 で駆動される対象物を一定の位置まで位置制御モー ドで 移動させ、 移動位置において トルク制御モー ドで ト ルク 制御を行ない、 再び位置制御モー ドで移動させる等であ こ の よ う な位置 Z速度制御モー ドと ト ルク制御モー ド
と組み合わせてサ一ボモータを制御する場合には、 両制 御モー ド間において制御モー ドの切換えが行なわれる。 こ の制御モー ドの切換えは、 サーボモ一 夕 によ って駆動 される機械の可動部が移動 している と き に行な う と必ず シ ョ ッ クが発生するので、 通常可動部が停止 している と き に行なわれるが、 上記従来の切換え方法では、 ト ルク 制御モー ドから位置 Z速度制御モ一 ドへ制御モー ドを切 換えを行な う と き に、 ト ルク指令値の不連続によ って制 御対象に シ ョ ッ ク が発生する こ とがあ る。
図 6 は、 制御モー ドの切換えによ り サーボモー タ を制 御する従来のサーボ制御系を示す。 図 6 において、 サー ボ制御系は、 C N Cからの ト ルク指令 T c m d 1又は位 置指令の何れかに基づいてサー ボモー タ を制御する。 C N Cからの ト ノレク指令 T c m d 1 に基づいてサーボモ 一 夕を制御する場合には、 ス ィ ッ チ 5 を ト ルク指令側に 切換えて ト ルク指令 T c m d 1 をサーボモー 夕への トル ク指令 T c m d とする。 位置指令に基づいてサーボモー 夕を制御する場合には、 位置指令を位置制御ループ 6 と 速度制御ループ 7で処理 して ト ルク指令 T c m d 2 を求 め、 スィ ッ チ 5 を位置指令側に切換えて ト ルク 指令 T c m d 2をサ一ボモー 夕への ト ルク指令 T c m d とする。
上記従来のサ一ボ制御では、 ト ルク制御モー ドか ら位 置 Z速度制御モー ドへ制御モ一 ドが切換え られる と き に、 サーボモー タ に加え られる ト ルク 指令 T c m d の値が切 換えの前後で異な るため、 ト ルク指令 T c m d の値の不
連続が発生 し、 これによ つて、 制御対象に シ ョ ッ ク が発 生する こ とがある。
従来は、 切換え時において発生する シ ョ ッ ク を許容す るか、 あるいは切換え時に ト ルク 制御モー ドにおける ト ルク指令をいつ たん 「 0 」 に した後、 位置 Z速度制御モ 一 ドでサーボ制御を行な う こ とによ って、 シ ョ ッ ク を減 少させる等の処理を行な っているが、 制御モー ド切換え 時の シ ョ ッ ク を十分に除去する こ とは出来なかっ た。
発 明 の 開 示
本発明の目的は、 サ一ボモ一夕 を用いたサ一ボ系の制 御において、 十 ルク制御モー ドか ら位置 z速度制御モー ドへの制御モー ドの切換え時にお け るモー タへの ト ルク 指令値の不連続を低減 して、 切換え時に発生する シ ョ ッ ク を十分に減少させる こ と にある。
本発明のサーボ制御系の制御モー ド切換え方法は、 サ ーボ制御系が ト ルク 制御モー ドで作動 している と き、 速 度ル一ブ中に設け られた積分器の値を ト ルク制御におけ る トルク指令に書換えるステ ッ プと、 ト ルク制御モー ド から位置ノ速度制御モー ドへの制御モー ドの切換え時に おいて、 書換え られた積分器の値を用いてサーボモー夕 に対する ト ルク指令値を求めるステ ッ プとを備える。
これによ つて、 制御モー ドの切換え時において連続し た トルク指令値をモー タ に与える こ とができ、 ト ルク指 令値の不連続によ る シ ョ ッ ク の発生を十分に抑える こ と ができ る。
図面の簡単な説明
図 1 は、 本発明の制御モー ド切換え方法によ る制御を 行な う サーボ制御系のプロ ッ ク図、
図 2 は、 本発明の制御モー ドの切換え方法を実施する ための制御装置の要部ブロ ッ ク図、
図 3 は、 図 2 に示 した制御装置のデジタルサ一ボ回路 が行な う制御モ一 ドの切換え処理のフ ロ ー チ ヤ一 ト、 図 4 a は、 本発明の制御モー ド切換え方法による制御 を行な っ た場合の積分器の値の変化を示すグラ フ、 図 4 b は ト ノレク指令 T c m d の変化を示すグラ フ、
図 5 a は、 従来の制御モ — ド切換え方法によ る制御を 行な っ た場合の積分器の値の変化を示すグラ フ、 図 5 b は ト ノレク指令 T c m d の変化を示すグラ フ、
図 6 は、 制御モー ド切換えによ り サーボモ一 夕を制御 する従来のサーボ制御系のブロ ッ ク 図であ る。
発明を実施するための最良の形態 図 1 に示すサーボ制御系は、 コ ン ピ ュ ー タ制御数値制 御装置 ( C N C ) か らの ト ルク指令 T c m d l 又は移動 指令 M c m d に基づいてサ一ボモ一 タ を制御する。 図 1 に於いて、 伝達関数 1 の k p は位置制御ループのポ ジ シ ヨ ンゲイ ン、 伝達関数 2及び 3 は速度制御ループの積分 項であ り 、 伝達関数 3 は積分器を表わす。 伝達関数 4 は 速度制御ループの比例項であ り 、 k 1 は積分ゲイ ン、 k 2 は比例ゲイ ンであ る。 スィ ッ チ 5 は トルク制御モー ド と位置 Z速度制御モー ドとを切換える。
C N Cからは、 所定の分配周期毎に トルク指令 T c m d 1又は移動指令 M c m dがサ一ボ制御系に送 られる。 C N Cから トルク指令 T c m d 1 が分配されて トルク制 御モー ドで制御を行な う 場合には、 ス ィ ッ チ 5を ト ルク 制御モー ド側に切換え、 トルク指令 T c m d 1 をサーボ モータ に対する トノレク指令 T c m d と し、 イ ン く'一タ (図示 しない) 等か ら成るサーボア ンプを介 してサーボ モータ を駆動する。
一方、 C N Cから移動指令 M c m d が分配される と、 こ の移動指令は位置及び速度制御ループ処理周期毎の位 置指令に分割される。 位置及び速度ループ処理周期毎に、 位置指令から位置フ ィ ー ドバッ ク量 p f bが減 じ られ、 位置偏差が求め られる。 伝達関数 1 によ り 、 位置偏差に ポ ジ シ ョ ンゲイ ン k pが乗 じ られ、 速度指令 V c m dが 求め られる。 求め られた速度指令 V c m d からサ一ボモ 一 夕の実速度であ る速度フ ィ 一 ドバッ ク量 V f bを減算 して速度偏差が求め られる。 そ して、 速度偏差に積分ゲ ィ ン k 1 を乗 じて得られた値を積分器 3で積分 した積分 値と、 速度偏差に比例ゲイ ン k 2 を乗 じた値とを加算し て、 位置 速度制御モー ドに於け る ト ルク指令 T c m d 2が求め られる。 そ して、 スィ ッ チ 5 が位置/速度制御 モー ド側に切換え られ、 ト ルク指令 T c m d 2がサーボ モータ に対する ト ルク指令 T c m d と して出力 され、 ィ ンバ一 夕 (図示せず) を含むサーボア ンプを介 してサー ボ乇一 夕が駆動される。
上記のサーボモー タ の制御は、 従来よ り周知の もので あ り 、 アナ ロ グ回路で構成 したサーボ回路で行な う こ と も出来、 ま た、 プロセ ッ サによる ソ フ ト ウ ェア処理で行 な う デジタ ル制御で行な う こ と も出来る。
本発明の切換え方法では、 サ一ボ制御系が ト ルク制御 モー ドで作動 している と き に、 積分器 3 に蓄え られた値 を トルク指令 T c m d l に書換え、 ト ルク制御モー ド中 において常に積分器の値を ト ルク 指令 T c m d 1 と一致 さ せる。
図 2 は、 本発明の切換え方法を実施するための制御装 置の要部ブロ ッ ク 図であ る。 サー ボモータ Mは工作機械 の可動部を駆動するサ一ボモータ、 或いは ロ ボ ッ ト の軸 を駆動するサ一ボモータであ る。 共有メ モ リ 1 1 は不揮 発性 R A Mで構成され、 C N C 1 0のプロセ ッ サとデジ タ ルサ一ボ回路 1 2 のプロセ ッ サ との間でデ一 夕の交換 を行な う ためにア ク セス し得る。 デジ タルサーボ回路 1 2 は、 C P U、 R O M、 R A M等で構成され、 位置 Z速 度制御モー ドに於け る位置及び速度制御と、 ト ルク制御 モー ドに於ける ト ルク制御とを行な う 。 サーボア ンブ 1 3 は、 デジ タ ルサ一ボ回路 1 2か らの指令に基づいてサ —ボモー タ 1 4を駆動する。 パルス コ ーダ 1 5 は、 位置 フ ィ ー ドバッ ク p f b及び速度フ ィ ー ドバ ッ ク V f bを デジタルサ一ボ回路 1 2 にフ ィ ー ドバ ッ ク する。
C N C 1 0は、 I T P周期 (分配周期) 毎に移動指令 又は ト ルク指令を共有 R A Mに書込む。 デジタ ルサ一ボ
回路 1 2のプロセ ッ サは移動指令又は トルク指令を共有 R A Mから読み取り 、 I T P周期を等分 した位置及び速 度制御ループ処理周期毎に位置/速度制御ループ処理又 は ト ルク制御処理を実行する。
位置 Z速度制御モー ドでは、 デジタルサーボ回路 1 2 は、 位置及び速度ループ処理周期毎に位置及び速度ルー ブ処理の位置指令を求め、 こ の位置指令と位置フ ィ ー ド バッ ク p f b とから位置ループ処理を行な って速度指令 V c m dを求める。 次に、 速度指令 V c m d と速度フ ィ ― ドバ ッ ク V f b とから速度ループ処理を行な って トル ク指令 T c m d 2を求める。
ト ルク制御モー ドでは、 デジタルサ一ボ回路 1 2 は、 分配周期毎又は位置及び速度ループ処理毎に ト ルク指令 T c m d 1 を読み出すと と も に、 速度ループ中の積分器 3 に こ の ト ルク指令 T c m d l を格納する。
そ して、 各制御モー ドにおいて、 求め られた ト ルク指 令 T c m dを用いて電流ループ処理を行な って P WM指 令を作成し、 サ一ボア ンプ 1 3を介 してサ一ボモ一 夕 1 4を駆動する。
次に、 図 3のデジ タルサーボ回路が行な う処理のフ ロ 一チ ヤ一 ト を参照して本発明の制御モー ド切換え方法を 説明する。
デジタルサ—ボ回路 1 2は、 位置及び速度ループ処理 周期毎に、 エン コー ダ 1 5か ら速度フ ィ ー ドバ ッ ク V f b を読取る (ステ ッ プ S 1 ) 。 さ ら に、 デジタ ルサ一ボ
回路 1 2 は、 共有 R A M I 1 を介 して C N C 1 0からの データ に基づき、 ト ルク制御モ一 ドで制御すべきか位置 Z速度制御モー ドで制御すべきかを判定 し (ス テ ッ プ S 2 ) 、 ト ルク制御モー ドであ る場合にはステ ッ プ S 3及 び S 4の処理を行ない、 位置 速度制御モー ドであ る場 合にはステ ッ プ S 5及び S 6 の処理を行な う。
ステ ッ プ S 2 において ト ルク制御モ一 ドであ る と判定 された場合には、 デジタルサーボ回路 1 2 は ト ルク指令 T c m d 1 をサ一ボモ一 夕への ト ルク指令 T c m d と し て送って、 トルク制御を行ない (ステ ッ プ S 3 ) 、 速度 ループ中の積分器 3 に蓄え られた値∑ を ト ルク 指令 T c m d に書き換え る。 こ の積分器 3 の書換え処理は、 ト ル ク制御モー ド中において各位置及び速度ループ処理周期 毎に行な う。 従って、 ト ルク制御モー ド中においては、 積分器 3の値∑ は各位置及び速度ループ処理周期毎に更 新されて、 C N Cか らの ト ルク指令 T c m d l と一致す る (ステ ッ プ S 4 ) 。
ステ ッ プ S 2 に於いて位置/速度制御モー ドと判定さ れた場合には、 デジタルサーボ回路の C P Uは、 位置指 令と位置フ ィ 一 ドバッ ク p f b とを用いて位置ループ処 理を行な って速度指令 V c m dを求める。 次に、 速度指 令 V c m d と速度フ ィ ー ドバ ッ ク V f b との偏差に積分 ゲイ ン k l を乗 じ、 得られた値を積分器 3 に蓄え られた 値∑ と加算 し格納する (ステ ッ プ S 5 ) 。 従って、 トル ク制御モ一 ドか ら位置 速度制御モー ドへの切換え時に
おいては、 加算前の積分器 3 の値 ∑ は ト ルク制御モ一 ド で格納されていた値とな る。 トルク制御モー ドから位置 Z速度制御モー ドへの切換えは、 サーボモータ によ って 駆動される機械の可動部の停止時に行なわれる。 従って、 切換え直後の速度及び速度偏差の値は小さ いので比例項 4 からの出力の影響を考慮する必要はない。
次に、 速度指令 V c m d と位置フ ィ ー ドバッ ク P f b との偏差に比例ゲイ ン k 2 を乗 じ、 こ の値をステ ッ プ S 5 で求めた積分器 3 の値と加算し、 位置 速度制御モー ドにお け る ト ノレク指令 T c m d 2 と し、 こ の ト ルク指令 T c m d 2 をサ一ボモー タへの ト ノレク 指令 T c m d と し て位置及び速度制御を行な う (ステ ッ プ S 6 ) 。
デジタルサ一ボ回路 1 2 は、 ト ルク 制御モー ドで制御 を行な う場合にはス ィ ツ チ 5 を ト ルク制御モー ド側へ切 換え、 位置 速度制御モー ドで制御を行な う場合にはス ィ ツ チ 5 を位置 速度制御モ一 ド側へ切換える。
図 4 a 及び 4 b は、 本発明の制御モー ド切換え方法に 従ってサーボ制御を行な っ た場合の積分器の値と ト ルク 指令 T c m d の変化を示す。 切換え点を境に して ト ルク 制御モー ドから位置 Z速度制御モ一 ドに切り換つ た と き、 図 4 a の積分器の値及び図 4 b の ト ルク指令 T c m d に 変化は表れず、 制御モー ド切換え時におけ る ト ルク指令 値の不連続を低減さ せ、 こ れによ つて、 切換え時に発生 する シ ョ ッ ク を減少さ せる こ とができ る。
一方、 図 5 a 及び 5 b は、 従来の制御モー ド切換え方
法に従ってサーボ制御を行な っ た場合の積分器の値と ト ルク指令 T c m dの変化を示す。 図 5 aの積分器の値は、 ト ルク制御モー ド中は、 「 0」 であ り 、 位置 Z速度制御 モー ドに切り換る と過渡応答を経て所定の トルク指令 T c m d とな る。 こ の と き、 積分器の値は切換え時を境と して変化するため、 図 5 bの ト ルク指令 T c m d も変化 して不連続とな り 、 切換え時に シ ョ ッ ク が発生する こ と な る。
以上説明 したよ う に、 本発明によれば、 ト ルク制御モ 一 ドから位置/速度制御モー ドへの制御モー ドの切換え 時におけるモー 夕への ト ルク 指令値の不連続を低減 して、 切換え時に発生する シ ョ ッ ク を十分に減少させる こ とが で き る。